「空山霊雨」
なんとも間延びした映画で、同じエピソードをひたすら繰り返しながら、さらに寺や道中の描写が延々と続く演出には閉口してしまいました。クライマックスの森での戦いは監督らしさが出ているとはいえ、ストーリー展開の面白さはほとんど感じなかった。監督はキン・フー。
大地主のウェンが妾の女と使用人を連れて三宝寺へ向かう道中から映画は幕を開ける。三宝寺の僧正が高齢でその後継者選びに参加してほしいという依頼だった。三宝寺には三蔵法師直筆の経典「大乗起信論」があり、ウェンの真の目的はその経典を手に入れることだった。僧正はさらに高僧ウーワイ法師、軍人のワン将軍も招待していて、ワン将軍は腹心のチャンを連れて、これもまた経典を狙ってやってくる。
実はウェンの妾の女は白狐という盗賊で、ついた早々から経典が収められている蔵に忍び込もうとする。しかし、たびたび妨害が入り、さらに後継者争いも絡んできて、丁々発止の展開が延々と続く。そんな時、囚人だったがこの度出家することになったチャウミンがこの寺にやってくる。彼はかつてチャンに冤罪を着せられ、収監ののち軍隊に送られて今回この寺に来たのである。
物語は、経典を手に入れようとしては失敗する流れと、それぞれに取り入る後継者候補の僧侶たちとの絡み合いとなる。そして僧正は、最終チャウミンを後継者に選ぶ。当然、ワン将軍らやウェンらが強引に経典を手に入れようとし、お互いに争って、ウェンの使用人で白狐の部下は殺され、ちゃんの殺される。さらにウェンも崖から落ち絶命、白狐は出家することになる。チャウミンは、争いの元凶となった経典を燃やし、写経したものを作って一巻をワン将軍に与える。こうして映画は終わる。
クライマックスの森の中で、ウーワイ法師が連れていた女たちが実はくノ一で、巧みな戦術でチャンや白狐らを翻弄するくだりがアクションの見どころになるが、そこまでが実に長い。あくまで娯楽映画であって、解説にある独特の映像美等はわからなかった。