くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダンサーインParis」「名探偵ポワロ ベネチアの亡霊」

「ダンサーインParis」

期待以上にとっても素敵な映画でした。空間の使い方が抜群に上手いし、登場するそれぞれが本物のプロに装いを帯びていて、しかも映像を操るセンスの良さか、画面が透き通っている。ありきたりの物語ではなく、ありきたりの悪人が出てくることもなく、ちゃんとした大人の成長の物語というのも心地よくて、オープニングのタイトルバックからエンドクレジットまで手抜きのない映像も素晴らしい。良い映画を見ました。監督はセドリック・クラピッシュ

 

クラシックバレエの舞台シーンから、タイトルに主人公エリーズの手が被って、美しい舞踏シーンとオープニングタイトルの流れにまず引き込まれます。これから開場する舞台、エリーズは恋人のジュリアンとキスをして袖に下がるが、出番を待っているエリーゼは舞台の反対側の袖中でジュリアンが別の女性と抱き合っている現場を見てしまう。

 

恋人に裏切られたショックのまま本番の舞台が始まり、エリーズは踊り始めるが、演目中盤から後半、ふとした気の緩みか転倒して怪我をしてしまう。医師の診断は捻挫と剥離骨折で、二年くらいはダンスは難しいと言われる。幼い頃から母に連れられてレッスンを受け、パリ・オペラ座のバレエ団でエトワールを演じる寸前の出来事にエリーズはショックを受ける。療法士のヤンが彼女を慰めるが、実はジュリアンの相手はヤンの恋人でもあったのでショックを受ける。

 

バレエ友達で今はホフェッシュが主催するコンテンポラリーダンスのカンパニーに所属するアデルに誘われ、路上でダンスバトルをする場面に遭遇、メフィディと出会う。親友のサブリナに誘われ、料理のアシスタントの仕事でブルターニュのジョジアーヌの店を訪れる。そこで足を引き摺りながらバイトを始めるが、そこに、ホフェッシュのダンスカンパニーの面々がやって来て、エリーズは、メフディと再会する。

 

 

ダンスカンパニーの練習を見ているうちに、エリーズの踊る気持ちが湧き上がって来て、やがて、一緒に練習をするようになって足の具合はみるみる良くなっていった。その中でエリーズとメフディは急接近しやがて恋人同士になる。一方、エリーズに惹かれ始めたヤンは、エリーズのバイト先へやってくるが、告白しようとしてメフディの存在を聞かされ失恋してしまう。最初の時もエリーズの前で号泣したヤンが、今回も、エリーズに前から離れて号泣する場面がコミカルで楽しい。

 

医師の診断でエリーズの足はほとんど回復していると言われる。間も無くホフェッシュダンスカンパニーはパリへ戻ることになるが、エリーズはパリで一緒に踊ろうと誘われる。まもなくしてパリに戻ったエリーズはメフディと再会し抱き合う。父ヘンリとも会い、コンテンポラリーダンスの初舞台を見にきて欲しいとエリーズは頼む。そして、初舞台、自由に踊るエリーズの姿をヘンリ、ヤン、ジョジアーヌも見ていた。

 

ステージが終わり夜の街に出たエリーズの前に新しい恋人を連れたヤンが現れる。エリーズの目には会場の傍に並んで踊るチュチュを着たバレエダンサーの姿があったが、今は新しい人生へ向かった自分を再確認する。こうして映画は終わっていく。エンドクレジットに被りチュチュを着てバレエを踊るエリーズだが、後半曲が変化してチュチュのままコンテンポラリーダンスを踊り映画は終わっていく。

 

道路を挟んでベランダ同士で友達と話したり、階段の上から俯瞰で捉えたり、幻想的な舞台シーンを路上に映し出したり、映像を駆使した作りが素晴らしいし、オープニングのクラシックバレエのステージからラストのコンテンポラリーダンスのステージで締めくくる圧巻の舞台シーンも見事。ヤンの失恋や、サブリナと恋人のキッチンカーの中でのセックスシーンをコミカルに描写したり、とにかく微に入り細に入りとっても素敵なシーンが繰り返される。とっても心地よい良い映画でした。

 

名探偵ポワロ ベネチアの亡霊」

独特のカメラアングルとワーキングでホラー映画のように演出していくサスペンスなのですが、ホラーテイストが前に出過ぎて、ミステリーのおもしろさが半減した仕上がりになった。映像に凝りすぎたのと画面の暗さから全体のストーリーを追いづらかった。ポワロの全ての種明かしでミステリーの様相を保った感じでした。でもホラーテイストの面白さは満喫しました。監督はケネス・プラナー

 

1947年ベネチア、引退を決意したポワロは元警察官のボディガードのヴィターレをつけて毎日を送っていたが、女流作家のオルガがやって来て、ドレイク夫人の屋敷で、先日亡くなった娘アリシアの霊の降霊会をするという儀式に呼ばれる。時はハロウインの夜、子供達が大騒ぎするベニスの街で、ポワロとオルガは、ドレイク夫人の屋敷にやってくる。霊媒師として現れたのはレイノルズ夫人だった。

 

やがて降霊会が始まるが、すぐにポワロはそれがイカサマであると見抜き、レイノルズ夫人の仲間としてニコラスとデズデモーナを指摘する。しかし、この頃からポワロは幻覚を見るようになる。アリシアの幽霊が出て来たり、不可思議な物音がしたり、超常現象のような出来事が起こったりし始める。そんなおり、レイノルズ夫人が階上から落下して絶命してしまう。ポワロは早速推理を始めるが、相変わらず幻覚に悩まされる。

 

やがて第二の殺人が起こり、その経緯からポワロは全てのトリックを見破ることになる。犯人はアリシアの母ドレイク夫人だった。彼女は庭に植えた植物の蜜から幻覚を呼び起こす毒を抽出し、アリシアに飲ませていた。アリシアは、マキシムと恋仲になり、それを知った母のドレイク夫人は、娘を手放したくないために、毒蜜を飲ませ続けた。ところが、たまたまドレイク夫人と交代して別の女性がアリシアを看病していた際に、発作を起こしたアリシアに過剰な毒蜜を飲ませてしまい絶命させてしまった。それを知ったドレイク夫人は、亡霊に殺されたかに見せるためにベランダから運河に突き落としたのだ。そしてその殺人を隠蔽するために今回に降霊会を開催、ポワロにも毒蜜を飲ませ亡霊の存在を信じさせ、さらに真相を知って脅して来た人物がいて、それがレイモンド夫人だと思って、レイモンド夫人も突き落として殺した。

 

全ての真相が明らかになったドレイク夫人は狂ったようにベランダに逃げるが、ポワロに追い詰められ、運河に落下してしまう。その瞬間、ポワロの目にはアリシアの亡霊が見えた。事件が終わり、自宅に戻ったポワロのところにフェリエ医師がやって来てお茶を始めて映画は終わる。

 

ミステリーの面白さというより、ホラーテイストの映像演出を楽しむ作品になっていて、ある意味面白いのですが、クリスティ作品を楽しむという映画ではなかった。