くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アル中女の肖像」「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」

「アル中女の肖像」

特に物語があるわけではないけれど、一人の裕福で美しい、しかもアル中の女の目眩く物語が美しい映像とカメラワーク、色彩演出で描かれる様が楽しい映画でした。監督はウルリケ・オッティンガー。

 

一人の女性がベルリン行きの航空チケットを購入する場面から映画は幕を開ける。真っ赤なドレスを着てベルリンについた彼女は、黒いドレスに着替えてカジノへ向かう。空港では小人の男が近づいて来たり、会社員風の男がトランクを開いてしまったりする。彼女と同時にいかにも正統派風の3人の女も降りて来て女と行動を共にする。

 

女はカフェで好き放題に振る舞い、カートを押しているホームレスの女を引き入れて、酒をウィンドウにふりかけて従業員に追い出される。その出来事は新聞に載ったりする。女はホームレスの女にドレスをプレゼントして一緒に行動するようになる。劇場では酔っ払って演技をし、スタントマンもどきの事をして車のボンネットに乗り火潜りをして死んでしまった風なこともする。いつも酒ばかり飲んでいる彼女を会社は首にする。物語が前後するが、会社を首になってベルリンに来たのではないかと推測される。とにかくやたらグラスなどガラス物が破壊されるシーンや、物が散乱するシーンが繰り返される。

 

クラブでは同じ酔っ払いの男と絡み、最後はベルリンのオブジェにホームレスの女と進んでいく。3人の女は次の目的地は旅立っていく。全面鏡張りの部屋を、床の鏡を破りながら進む女の姿で映画は終わる。

 

カメラ、色彩、ドレス、構図などなど画面作りそれぞれが見事に美しく、しかも演じたタベア・ブルーメンシャインが透き通るほどに美しいので映画がキラキラして来ます。物語は掴みづらかったけれど、面白い作品でした。

 

「私の嫌いな弟へ ブラザー&シスター」

くどくどと繰り返される姉と弟の確執、さらに意味を把握しづらい脇役の登場と登場人物それぞれの生活感の不明さにどうしようもなくストレスがかかる映画でした。監督はアルノー・デプレシャン

 

アリスの弟ルイの子供が亡くなり、家族が駆けつけてくる場面から映画は幕を開けるが、なぜかルイはアリスを極端に嫌い、部屋に入れようともしないし、アリスも入ることができない。そして5年が経つ。アリスは舞台女優としてこの日初日を迎えることになっていた。彼女の両親が車でその会場に向かっていると、向こうからフラフラと一台の車が近づき、森に突っ込んで事故を起こす。心配した父のアビルが近づく。心配そうに見守る母のマリエ。そこへ大きなトラックが同じくフラフラ向かって来て二人は事故に巻き込まれる。

 

アビルは重症だが、マリエは意識不明だった。弟ルイの所に友人のズウィが知らせにくるが、ルイはアリスに会いたくないので二の足を踏む。妻のフォニアも自分達を除け者にした義父母に会いたくないと行くのを拒む。それでもズウィはルイを連れ帰る。病室についたルイはアリスと会わないように気を遣いながら、ベッドで眠る両親の元にきた。一方アリスは、ルイとたまたま病院で会ってしまい気を失ってしまう。さらに精神的に不安定になり薬を飲む。舞台は滞りなく演じていくがまもなくしてマリエは死んでしまう。葬儀の段取りをする弟のフィデルやズウィだが、アリスも複雑な思いが続く。

ルイは小説家で成功したのだが、その本にアリスのことを書いて、アリスに告訴された過去があるようだ。それだけであそこまで仲違いするのかどうにも理解しづらいが、一方、アリスはアビルに愛されていた。アビルとマリエは愛のない結婚をしたが、アビルはアリスをこよなく愛した。マリエが亡くなってすぐ、アビルも自らに挿入された医療器具を外して自殺してしまう。

 

二人の葬儀の場で、ルイはとうとうそばまで行けなかった。しかし、これが最後だと思ったアリスは、いつものカフェで会おうと手紙を渡す。そしてカフェでアリスはルイに謝り、なぜか二人の溝は埋まってしまう。エピローグ、舞台の仕事を辞めたアリスは、途上国で暮らしていた。ルイはまた教師を始めていた。こうして映画は終わる。

 

とまあ、脚本悪いのかと思うのだがそうでもないように見えるから不思議である。にも関わらず、アリスのファンだという貧しい少女の登場の意味もわからないし、なぜ急に仲直りしたのか、それよりなぜそれほどまで仲違いしているのか、アリスの精神的な病気はあっさり治ったのか、エピローグの意味はなんなのか、どれもがバラバラに見えてしまう。これがフランスの国民の考え方なのだろうし宗教的な信念なのだろうと思うのですが、その辺りは全く理解できなかった。。