くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アクアマン 失われた王国」「風林火山」「平手造酒(改題縮尺版利根の血しぶき)」

「アクアマン 失われた王国」

勧善懲悪のヒーロー映画の王道を徹底したキレのある演出が今回も際立って、派手なCGもプラスアルファになってめちゃくちゃ面白かった。しかも、人間ドラマもさりげなく丁寧に挿入した演出もさすがというほかありません。前作同様十分楽しめるエンタメ映画でした。監督はジェームズ・ワン

 

アトランティスの王となったアーサーは、王としての仕事よりも、生まれたばかりの息子の世話で人間界での生活も増え充実していた。しかし、アトランティス転覆を企てるブラックマンタのディビッド・ケインは、右腕のシン博士と南極の底にあるアトランティスの道具を手にれようと氷山の底へ向かう。

 

ところが、調査に出たシン博士らは突然氷のクレバスに落ちてしまう。そして、謎の生物に襲われたシン博士はケインに助けを呼ぶ。駆けつけたケインらは、氷山の奥底にある巨大洞窟とその周辺の都市を発見する。ケインはそこで、埋もれている古代兵器ブラック・トライデントを手にする。すると、目の前に古代帝国での兄弟の権力争いの末敗れて封印された邪悪な王ネレウスと接してしまい、凶悪な意識が増幅されてしまう。

 

かつて、アトランティスが沈む直前に忽然と姿を消したネレウス古代帝国があった。そこでは、オリハルコムと呼ばれる鉱石によって繁栄するかに思われたが、それは疫病と邪悪な意識を蔓延させ、ネレウス王は兄によって倒され、封印されてしまう。そしてオリハルコムは、アトランティス帝国によって厳重に保管されることになった。

 

ケインは古代帝国を復活させ邪悪な王を甦らせるには南極の氷を溶かす必要があった。そこでアトランティスに保管されているオリハルコムを奪取し、全ての氷を溶解させるとともに、アーサーの直属の血を手にれることでネレウス王を復活させようとする。それを阻止するため、魚人王国の砂漠の地下牢に幽閉しているアーサーの弟オームに情報を得ようとする。オームは地球の危機のため一時的に兄への確執を封印し、ケインのアジトを見つけるためにキングフィッシュのところに連れて行く。

 

キングフィッシュの情報で、ケインのアジトは南太平洋のジャングルの中にあると突き止め、アーサーとオームは海の種族の助けを得てアジトへ向かう。一方、ケインはアーサーの血を得るよりアーサーの息子を略奪することを計画し、シン博士とともに赤ん坊を手にして古代帝国へ向かう。

 

邪悪な王を甦らせるわけにいかないアーサーたちは果敢にケイン=ブラックマンタに戦いを挑む。ところが赤ん坊を取り戻したが、邪悪な王の魔力がオームを支配してしまう。さらに、アーサーの怪我の血でネレウス王が復活してしまう。アーサーの必死の願いが通じ、オームは正常に戻り、邪悪な魔王ネレウスを打ち破り大団円。アーサーはオームが戦死したことにして放免してやり、アトランティスは地上民の前に現れて、それぞれ温暖化抑止に協力することになって映画は終わる。

 

アーサーとオームの兄弟愛、父となったアーサーの姿、兄弟の行く末を案じる母の思い、さらに人間味を失わないシン博士などキャラクターの描写がさりげなく多彩に描かれ、そこに、ピンチが訪れたら援軍が駆けつけるというヒーローものの王道の展開が無駄なく構成されている作りが実にうまい。ブラックマンタの潜水艦のコックピットの造形がとってもかっこいいのも良い。背後の楽曲センスも抜群で映画がアップテンポに踊り出すし、とっても楽しい娯楽映画だった。難を言うと、コミカルなタコの諜報員をもっと面白く使ったらさらにエンタメ感が倍増したかもしれない。でも楽しい作品でした。

 

風林火山

四十年ぶりくらいの再見でしたが、こんなに素晴らしい映画だったのかと胸が熱くなってしまいました。超大作らしい合戦スペクタクルも凄いのですが、散りばめられた人間ドラマに終始涙が止まりません。それでいて娯楽映画としての面白さも抜きん出て素晴らしいので、三時間近くあるのに画面に引き込まれたまま一瞬も離れることができず食い入ってしまいました。戦略立ての面白さ、敵わない恋の切ないドラマ、主人と家来という主従関係の中に見える男のドラマ、原作の素晴らしさを見事に映像に昇華させた脚本とそれを最大限に生かした演出、そして圧倒的な役者それぞれの演技に圧倒される傑作だった。これこそ全盛期の日本映画、素晴らしかった。監督は稲垣浩

 

一人の浪人が一軒の廬にやってくる。中には何やら浪人らしき人物がいて、やってきた浪人は、これから武田に志願するのだという。中の浪人も、一緒に仕官できるように策があるという。やってきた浪人が武田の重臣板垣信方に襲い掛かり、それを中の浪人が助ける形で二人とも受け入れてもらおうというが、いざ浪人が襲い掛かるが、助けに来たびっこを引いた浪人は襲いかかった浪人を斬り殺す。そして板垣信方に認められる。男の名は山本勘助と名乗る。

 

甲斐国を見下ろす武平の農家にびっこを引いた浪人山本勘助がやってくる。武平と一言二言話した後、勘助は板垣信方と会い、士官が叶う。やがて、主人である武田晴信に推挙された山本勘助は、晴信の諏訪侵攻に的確な意見を述べ、次第に晴信に気に入られる。そして、諏訪に使者として行った勘助は諏訪の姫由布姫と出会う。

 

後日、親戚関係になった諏訪頼茂は何度も晴信を訪ねてくるが、それは、逆に晴信を諏訪に招いた際に殺すための策だと勘助が見抜き、頼茂が訪ねてきた際、彼を斬り殺す。そして、間を開けたのち、晴信は諏訪に攻め入る。城に踏み込んだ勘助は自刃を嫌がる由布姫を見つけ、由布姫が気を失った際に姫を抱いて甲斐に戻ってくる。まもなくして、晴信は由布姫を側女にする。勘助は反対するが、それは、気が付かないが勘助もまた由布姫を慕っていたのだろう。そして、由布姫は晴信の子供を産む。のちの勝頼である。

 

信方は諏訪の地をおさめるが、甲斐での晴信の本妻三条方と由布姫のことを憂い、由布姫と勝頼を諏訪に転居させるように勘助に指示する。勘助は嫌がる由布姫を道中説得するが、由布姫は途中で逃げ出してしまう。勘助はなんとか由布姫を保護して諏訪に連れて行く。その後も戦は続くが、城攻めの中、信方は討死してしまう。信方の息子信里は寡黙ながら父の意思を注ぎ勘助を慕うようになる。その頃から、由布姫は病に伏せるようになる。

 

晴信は由布姫と離れた後、別の女に心を許してしまい、勘助は一計を案じて出家するように勧める。そして三年かけて説き伏せ、晴信は出家して信玄となり、勘助も出家して道鬼となる。勘助は、海を囲んだ甲斐国にすること、勝頼を元服させることなどなど夢を叶えるべく、次の戦の準備をするが、越後の長尾景虎も出家して上杉謙信となり甲斐を伺うようになってきた。お互いが接する川中島で何度か睨み合いをするが、その中で由布姫は息を引き取る。

 

勝頼の元服を待っていた勘助だが、上杉謙信との戦いは待ってくれず、接する国境に城が完成して、謙信との最後の戦いへ進んでいく。元服間近の勝頼に見送られた勘助は戦に赴くが、勘助の作の裏を描いた謙信の猛攻撃に会い、信玄の本陣は危機に陥る。勘助は自ら、信里の援軍を待つまで決死の覚悟で上杉謙信の本陣を目指す。上杉謙信は自ら武田信玄の本陣へ切り込んでくるが、信玄はなんとかいなす。

 

戦いの中、勘助は信里の援軍を認めたが、すでに力付き、敵の矢が左目を抉り、さらに槍が勘助を貫いて勘助は命を落とす。戦は信玄方の勝利に終わったとはいえ、犠牲が大きすぎたと憂いる信玄の姿で映画は終わる。

 

とにかく、娯楽映画としても一級品で面白い上に、主役級の役者が所狭しと登場するし、ドラマ 性もしっかり描かれているバランスの良さが素晴らしい作品で、全盛期の日本映画の力量を見せつけてくれる作品でした。

 

「平手造酒」

縮尺版なので場面のつながりがおかしいところも多々あるのですが、クライマックスの竹林での平手造酒のチャンバラシーンは圧巻の仕上がりになっています。肺病で鬼気迫る姿で刀を振り回す山村聰は必見という映画だった。監督は並木鏡太郎。

 

江戸の千葉周作道場では、新入りの平手造酒が年を追うごとに出世して行く様が描かれる。平手造酒は、千葉周作の娘に惚れていたが、彼女は別の縁談で名家に嫁に行ってしまう。落ち込んだ平手造酒は酒に溺れ始めるが、そんな中、娘に瓜二つの料理屋の女増次に惚れてしまう。酒を飲んで乱暴ばかりする平手造酒は、千葉周作の勧めもあり江戸を一旦離れることになる。

 

途中、あるヤクザ者の富五郎に請われて、富五郎の親分笹川一家の用心棒兼道場主になった平手造酒は、酒を絶ってヤクザ者に稽古をつけるようになる。ところが、笹川組に敵対する飯岡一家から嫌がらせを受け始める。たまたま同様にヤクザの用心棒になっていた浪人の言葉から、再び自暴自棄になり始めた平手造酒は酒を飲み始め、体はどんどん悪くなって行く。

 

江戸の千葉周作からは、気持ちの整理がついたら戻ってこいと再三手紙をもらい、平手造酒は、高熱でうなされる中、増治に江戸に戻りたいとこぼす。ところが時を同じくして、飯岡一家が笹川組に殴り込みをかけてくる。親しくしていた男たちがやられるのを見た平手造酒は、ふらふらのまま争いの中へ飛び込んでいく。そして、ついに命が果てる。死体を運ぶ組の男たちの姿で映画は終わる。

 

ドラマ部分がふっ飛んだような作品になってしまっているものの、チャンバラシーンは見応え十分で、ところどころにいい画面も見られる作品で、面白い一本でした。