くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ファニー・ページ」「七つの弾丸」

「ファニー・ページ」

A24特集の一本ですが、ストーリーがいつまで経っても展開していかない作りで、なぜか突然エンディングという珍品映画だった。登場人物それぞれが個性的だが叫んでいるばかりで中身が見えない上に、話の根幹が全然まとまっていないので、思いつきで撮ったプライベート映画みたいだった。監督はオーウェン・クライン。

 

低俗なコミックカートゥーンを呼んでいる主人公ロバートが、師と仰ぐ先生に話を聞いている場面から映画は始まる。先生がモデルになってやるからと全裸になってロバートに漫画を描かせていると、アラームが鳴ってロバートは帰る時間が来たと部屋を後にする。先生が車で追いかけて来てくれたがロバートと話をしていて別の車に追突され死んでしまう。ロバートは高校をやめて漫画の勉強をすると両親に告げ、身寄りのない先生の遺品をもらおうと友人のマイルスと先生の居宅に侵入するが警察に捕まってしまう。

 

ロバートについた弁護士のシャルルがなんとか無実にしてくれたので本格的に両親の家を出て一人暮らしを始める。奇妙な下宿に住み始めるが、大家は、住んでいることを隠せというし、ルームメイトも怪しい。シャルルのところで筆記の仕事を始めるが、そこに、薬局でトラブルを起こしたウォレスという男がやってくる。この男が大手漫画会社の助手で仕事をしていた過去があることを知ったロバートは、授業料を払うので教えて欲しいと懇願する。ウォレスに言われてロバートは、ウォレスがトラブルを起こした薬局の店員が暴力的だと証明してくれと頼まれるが、結局ロバートは薬局で暴れただけで飛び出してくる。

 

ロバートの自宅にウォレスを呼び、教えてもらおうとするが、訳のわからない言動をするウォレスは、やって来たマイルスの頭にペンを突き刺してしまい、慌てて飛び出して逃げる。それを追ってロバートは行くが、ウォレスに罵声を浴びせられ、ロバートは訳もわからずバイト先のミニコミ誌の店に行ってカウンターで放心状態になって映画は終わる。

 

登場人物それぞれがなんのことかわからないままなんの描写もされていないし、物語もいつまで経っても進んでいかない展開に、呆気に取られながら終わってしまう奇妙な映画だった。

 

「七つの弾丸」

橋本忍特集の一本。登場人物を徹底的に地獄の底に叩き落として希望も何もないクライマックスに呆気に取られる作品で、ここまで徹底する作品にお目にかかったことがないし、おそらくこれからも絶対に出てこない映画だろうと思います。心がどんよりと落ち込んでしまう映画だった。監督は村山新治

 

一人の男矢崎は明和銀行に強盗に入る計画をしていてその一人台詞から映画は始まる。緻密な計画を立て、拳銃も準備した彼は、銀行近くの交番や車の流れなどを綿密に調べている。明和銀行の出納係の安野のところに電話がかかってくる。弟が交通事故で亡くなったという。母一人子一人になった安野の母さとは悲嘆に暮れるが、安野にはフィアンセの君子がいて彼女との結婚を急ぎ始める。しかし、派手な式をしたいというさとの思惑と違って派手な式をしないという息子に母息子の確執が生まれていた。

 

免許証を三枚も持って適当なタクシー業を営む竹岡は、愛人と同居しているが田舎には三人の子供と妻がいた。妻の満江は東京まで主人を探しに来るが偽名で転々としている主人がなかなか見つからないでいた。明和銀行そばの派出所の若い警官江藤は昇進試験を前に猛勉強をしていた。矢崎には医師をしている愛人三千代がいたが、医院を開設するという夢を叶えるために矢崎は銀行強盗を計画していたのだ。こうして登場人物の描写が終わり、矢崎のこれまでが語られる。

 

函館生まれの矢崎は学歴もなくコネもない中、東京へでてくるがろくに仕事につけなかった。なんとか見つけた新聞社の臨時雇になるものの正社員になるために大学の卒業証明書が必要と言われ仕事を追われる。這々の体で神戸の知人を頼り放浪する彼はとうとう日射病で倒れてしまい交番に担ぎ込まれる。そこでたまたま目の前に拳銃を見つけ、交番の巡査を撃ち殺して拳銃を奪って逃げ、強盗を繰り返して今の生活に至っていた。

 

タクシー運転手の竹岡は事故を起こし、その損害賠償金を愛人に頼むも冷たくあしらわれ、田舎の妻のもとに行く。そこで妻からなけなしの貯金を提供され、さらに四人目もお腹にあると言われて改心し、一生懸命働き始める。安野のフィアンセ君子は、結婚後も共働きをしようとしていたが、結婚するなら仕事を辞めて欲しいと会社に言われて、結婚を悩んでいた。江藤は昇進試験も順調に済まし意気揚々ようとしていた。

 

矢崎は決行の日を決め、逃走に使う車を奪おうとするが運転手に逃げられ、銃で殺してしまう。しかも、この日交番では交代要員の急病でいつもより一人多かったので決行を取りやめる。後日、矢崎は銀行強盗をするべくまず交番制圧のため一人で勤務する江藤を襲うが抵抗され殺してしまう。

 

自暴自棄のまま銀行へ押し入り、出納係に金を出させるが揉み合いの際、安野を殺してしまう。金を持って逃走した矢崎は通りかかった竹岡の運転するタクシーに乗り込む。しかし竹岡が小細工をしたために怒った矢崎は竹岡を撃ち殺す。矢崎は警官に追い詰められついに逮捕され、一年十一ヶ月後死刑になる。

 

君子は別の男性と見合いをしてこの日新婚旅行へ向かっている。安野の母さとは相次いで二人の息子を亡くし精神に異常をきたしてしまう。竹岡の妻はデパートで万引きをして子供達の前で警備員に取り押さえられる。矢崎は死刑になって罪償いは終わったが、彼に殺された被害者それぞれには悲惨な未来が残され映画は終わる。

 

なんとも言えない悲惨な映画で、ここまで描かなくても良いだろうと思えるほどに徹底した作劇に圧倒されます。二度と作られることもないほどの一種のカルト映画に近い一本でした。