くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ARGYLLEアーガイル」「コットンテール」

「ARGYLLEアーガイル」

二転三転四転五転、遊びきったストーリー展開と、モダンでスタイリッシュなバトルアクションシーンのオリジナリティで、映画って本当に面白いものだなと拍手させるほど楽しい映画だった。この監督の感性は本当に面白い。一体頭の中にどれだけアイデアが詰まっているのだろうと思ってしまう。単純なスパイアクションをここまで空想活劇に作り上げた才能があっぱれない映画だった。監督はマシュー・ボーン

 

とあるダンスホール、一流のスパイアーガイルが、金色のドレスを着た美女ラグランジェとダンスを始めるが、間も無くして気がつくと周りの黒服が銃を持ってアーガイルを囲んでいる。あわやピンチかと思われた瞬間、外の車にいた相棒のキーラがパソコンを操作すると、ホール内にスモークが溢れ、アーガイルはその場を脱出、ラグランジェはバイクに乗って逃走するが、キーラはアーガイルと一緒に敵と銃撃戦をした際に死んでしまう。

 

アーガイルは後を組織に任せ、ラグランジェの後を追う。しかし、取り逃したところで、もう一人の相棒ワイアットがカフェでくつろいでいて、通りかかったラグランジェを怪力で奪取する。アーガイルらがラグランジェを問い詰めると実はお互いのボスはファウラーだとわかりラグランジェは毒薬を飲んで死んでしまう。アーガイルは、すべてのスパイの情報が入ったマスターファイルを香港へとりに行くことになる。こうして四巻が終わりましたと、スパイ小説「アーガイル」の発表会に座る作家エリーの姿になって映画は始まる。

 

早速五巻に進むのだがすでに完成してしまい、それをエリーの母ルースに送ったところ物足りないと言われてしまう。エリーは詳しく相談するために愛猫アルフィーを連れて列車でシカゴの母の元へ向かう。列車の中で向かいに座った胡散臭い男に話しかけられて、つい職業を聞いたらスパイだという。

 

直後、乗客がエリーのファンを装って近づいてきた男がアイスピックで襲ってくる。それを向かいの男が鮮やかに撃退するが、次々と悪漢がエリーに襲いかかる。わけもわからず胡散臭い男の言いなりに動き回り、最後は自分にしがみつけと胡散臭い男に言われるままにしがみつくとそのまま列車に外へ飛び出し、パラグライダーで逃亡に成功する。

 

ディヴィジョンの作戦室ではリーダーのリッターがエリー達を追跡していた。エリー達は落ち着いた山小屋で男は髭を剃って、自分はエイデンという名でエリーが書いている小説は、デヴィジョンという悪の組織が追い求めるマスターファイルのありかを見つけるための預言書のようになっているから狙っているのだと言われる。さらに小説の中のワイアットはエイデンのことで、キーラは実在していて亡くなったと言われる。

 

マスターファイルを作ったハッカーバクーニンと会うために二人はロンドンへ飛び、エリーに小説の続きを書くようにエイデンは勧める。エリーは言われるままに小説を書き始めると、何かのひらめきでバクーニンのアパートが分かりそこへ向かう。そこで床下に隠されたバクーニンのログブックを手にれた二人は、デヴィジョンの追っ手から逃れ屋上からボートに飛び乗って脱出、エイデンの自宅に避難する。

 

一時は信用したエリーだが、エイデンが浴室で何やら電話をしているのを聞き、それが自分を殺そうとしていると勘違いしてエイデンこそが敵だと思い、その場を逃げ出し、母のルースに連絡をする。ルースはロンドンでかつてハネムーンで行ったホテルに部屋を取ったからとそこでエリーと落ち合う。そしてやってきたエリーの父はリッターだった。

 

リッターはエリーの持っていたログブックを撮影したが、そこへ、エイデンが駆け込んでくる。エイデンは、リッター達はエリーの両親ではないと話すとルースはエリーに銃を突きつける。エイデンはルースを撃ち、リッターを気絶させて脱出する。

 

エイデンはエリーを車に乗せフランスの片田舎の葡萄園に連れていく。そこにいたのは元CIA長官のアルフレッド・ソロモンだった。彼もまたマスターファイルを手に入れてデヴィジョンの一身を一網打尽にしようとしていた。そして、エリーこそはもとCIAエージェントレイチェルだと明かされる。

 

エイデンが殴りかかるといとも簡単に反撃するエリーは、自分がエージェントだという記憶が蘇り始める。レイチェルはバクーニンの所へ行きマスターファイルを手に入れる前にバクーニンを撃ち殺したが、バクーニンが仕掛けた装置で部屋が大爆発し、川に投げ出されたのだった。川に投げ出されたレイチェルをリッター達が捕獲して、作家としての記憶に洗脳して、マスターファイルのありかを思い出させようとしていた。

 

エリー達はハッカーのログブックから、アラビアにある秘密の番人サバのところにマスターファイルがあることがわかり、サバのところへ二人はいく。金色のドレスを纏ったスパイレイチェルはサバからマスターファイルを手に入れ、パソコンでチェックするが、デヴィジョンの構成員の中に自分の姿を見つける。どうやらレイチェルはデヴィジョンの構成員だった。

 

そこへリッター達もやってきてエイデンを拉致する。そしてアルフレッドの居場所を聞き出そうとするも聞き出せず。レイチェルはエイデンを撃ち殺し、エイデンの持っていたマスターファイルをリッターに渡す。そして、レイチェルは連れて行かれたフランスの葡萄園のありかを記憶と抜群の推理から弾き出す。しかし、実はエイデンは死んでいなかった。レイチェルは心臓の隙間を狙って撃ったのだった。

 

エイデンとレイチェルは発煙筒のカラフルな煙の中でデヴィジョンの追っ手を次々と葬り、地下へ逃げる。そこで銃撃戦をすると黒い液体が床に広がる。それは石油だった。なんと二人が連れて行かれたのはタンカーの中だった。レイチェルはかつての記憶からスケートの名手だというのを思い出し、ナイフを靴に埋め込んでスケーターよろしく石油の上を滑りまわって敵を次々と倒していく。このシーンが抜群に楽しい。

 

そして、マスターファイルをアルフレッドに送信しようとするが、そこへルースがスケートのオルゴールを持って何やら暗号めいた言葉を発するとレイチェルはエイデンに襲いかかる。どうやら洗脳時に催眠術がかけられているらしかった。しかし、すんでのところで、作業員らしい人物がルースを殴り倒しオルゴールが壊れ、レイチェルは正気に戻る。そしてファイルはアルフレッドに届く。その作業員こそ、心臓の脇を銃弾が貫通し奇跡的に死ななかったキーラだった。三人はボートに乗り脱出、タンカーは大爆発、小説「アーガイル」はエンディングを迎えたと発表会のエリーの姿でエンディング。エンドクレジットの後、20年前、若きアーガイルがキングスマン機関で働いている場面が映って映画は終わる。

 

とにかく楽しい映画で、少々ストーリーが込み入りすぎた気がしますが、クライマックスのスケーターシーンなども含め、全てが空想冒険活劇になっているのがとっても面白い映画だった。

 

「コットンテール」

クローズアップを多用した映像が少々暑苦しささえ覚える作品で、物語は単純ですが、心象風景が見えてこないのは演出の悪さか脚本の弱さか、今一つ心に訴えかけてくるものを感じられない映画でした。監督はパトリック・ディキンソン。

 

アパートの屋上でぼんやりしている主人公兼三郎の姿から映画は始まる。部屋に戻ると息子の慧がやってくる。そして兼三郎の身支度を整えさせる。どうやら兼三郎の妻明子の葬儀の日らしく、酒を飲みぼんやりしている父を息子が迎えにきたらしい。

 

葬儀場でも、空を見ているような兼三郎に辟易とする慧だったが、葬儀の後、住職が明子から預かっていた一通の手紙を兼三郎に渡す。そこには、自分の遺灰はイギリスのピーターラビットの故郷ウィンダミア湖に撒いて欲しいというものだった。兼三郎は、明子と出会った若き日、付き合い始めた日、明子が自身が認知症ではないかと不安な気持ちを伝えた日を回想しながら、明子の遺品の中からウィンダミア湖の写真らしきものを見つける。

 

兼三郎は一人で行くというが、慧とその妻さつき、孫のエミも一緒に行くことになる。ホテルに着くと、兼三郎は、慧が準備した列車ではなくすぐにでも出発する列車に乗りたいと駄々をこね慧らに嫌がられる。そして、結局一人でウィンダミア湖を目指すが、列車を乗り間違えたり、自転車で走ってとんでもない所へ行き、地元のジョンらの家族に助けられたりする。

 

連絡で駆けつけた慧らとウィンダミア湖へ行くが、写真に写っている湖と違うことがわかり、さらに近くの湖を探す。兼三郎は明子が入院して、痛みに苦しんでいた頃を思い出す。そして、兼三郎が手を下したのかどうか曖昧な場面の後、息を引き取った明子の場面に繋がる。

 

兼三郎らはようやく写真の湖を見つけ、慧と二人で散骨する。慧と兼三郎の心は通じ合えたのか、慧の家族とうまくまとまってきたのか、結局その辺りが見えないままに映画は終わっていく。

 

ピーターラビットの件が全く意味をなさなくなってしまうし、なぜウィンダミア湖なのかが最後まで明かされない。しかも、慧、さつき、エミ、兼三郎のそれぞれの心が交わる場面が一瞬も見えないのは意図したものなのか演出の力不足なのかわからない。かたくなな兼三郎の態度の原因もこちらに訴えかけるものが見えないし、どうにもこうにも仕上がっていない映画に見えました。