くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クラユカバ」「クラメルカガリ」「リンダはチキンが食べたい!」

「クラユカバ」

レトロでガラクタでシュールな世界観が面白いのですが、もうちょっと落ち着いてストーリーテリングして演出しても良かったんじゃないかというほど展開が早い。カットが細かい上に、次々と漢字の名称が羅列されてくると頭が追いついていかなかった。シンプルなお話なので、かろうじてそういうことかとわかるのですが、もっと尺を伸ばしても良かったのかなと思います。でも、ごちゃごちゃした世界観とメカデザインがなかなか見ものでした。監督は塚原重義

 

扇町で探偵業を営む荘太郎のところに情報屋のサキがやってきて、先日の依頼の情報料が欲しいという。ある日、稲荷坂から、近頃、この辺りでは集団失踪が相次いでいて、失踪したところには奇妙な轍が残っているのだという。先日の依頼人の爺さんも行方知らずらしいからと依頼される。そこで荘太郎はサキに地下領域クラガリへ行って調べて欲しいと頼む。サキは、手がかりを求めてクラガリへ向かうが、程なくしてサキも行方不明となる。

 

荘太郎はサキを探しにクラガリへ向かい、そこで黒がねの装甲列車とその指揮官タンネと出会う。どうやら、集団失踪の犯人は福面党ではないかと判断し、荘太郎はタンネと共にクラガリの奥へと進む。しかし福面党の首領の息子も失踪していた。そしてようやくたどり着いた先で、サキを発見、さらに奥へ進むと、そこに、何年かに一度やってくるサーカス団の存在が見えてくる。荘太郎は幼い日の記憶からサーカス団の謎を思い出し、間一髪で反撃してタンネらと地上へ戻ってくる。もちろん失踪者を全て取り戻す。探偵社に戻った荘太郎が新たな依頼を聞くところで映画は幕を閉じる。

 

大体お話はこんな感じだと思いますが、スクラップ工場で作ったかと思うような装甲車や列車、戦車の類までが背後のレトロ感満載の音楽、展開と相まって、不可思議な世界へ誘ってくれます。60分余りと短いので、走り抜けるように展開していくのと、シュールな世界なので、わかりづらいのが残念でした。もうちょっと丁寧に脚本を書いてほしかった。

 

「クラメルカガリ

青春ラブストーリーに絡ませた摩訶不思議な世界観という映画で、お話はシンプルなのですが、キャラクターの個性が描ききれていないのか、絵が平凡なのか、もう一歩のめり込みにくい映画でした。監督は塚原重義

 

かつて巨大な刑務所だった跡地に立った巨大企業泰平のビル。その足元で謎の陥没事故が相次ぎ、役人のシイナはその調査のために街にやってくる。縦横に張り巡らされた炭坑の地図の資料を求めて飴屋を通して、伊勢屋という古本業を営む情報屋を探す。一方、この炭鉱町で地下通路「箱庭」の地図を作っているカガリは、この日も陥没事故の現場を通って地図を追加して、伊勢屋のところに売りに行こうとする。カガリには同業のユウヤという青年がいたが、彼はこんな街を出ていきたいという希望を持っていた。

 

カガリは地下地図を作っていて、山猿組が地下で計画している泰平転覆計画を知る。彼らは泰平の要所施設を破壊して、いよいよ最後の計画へ進もうとしていた。泰平の前身組織は、かつて自浄兵器を作ったのだがそれが暴走して現在の姿になったらしい。カガリから地下での計画を知った伊勢屋は、これ以上関わるなとアドバイスする。

 

やがて、山猿組は最後の行動に出てくるが、迎え撃ったのは狛犬組、そして最後に出てきたのはクチナワ爺さんの自浄兵器だった。実はクチナワ爺さんは泰平の前身企業の研究者だったが、自分が作った自浄兵器を破壊されて、ショックのあまり自殺しようと考えた。しかし。混乱の中、一人の赤ん坊を見つけ、その赤ん坊のために身を隠した。山猿組の悪事を倒したクチナワ爺さんはまた自室に引き上げる。実は山猿組に地下地図を売ったのはユウヤだった。彼は山猿組から大金をもらい地上へ出ようと考えていたがすんでのとこで裏切られたのだ。山猿組により地下に落とされかけたユウヤをカガリが助け、二人は無事脱出、山猿組の計画は失敗して物語は終わる。

 

という、そんな話かと思うのですが、「クラユカバ」同様、舞台設定の描写やストーリーテリングが全くできていない脚本なので、60分余りなのに、よくわからない。もっと落ち着いて脚本を練って作れば面白くなりそうなのに勿体無い映画だった。

 

「リンダはチキンが食べたい!」

水彩風の美しい色彩と極力シンプルにした造形がとっても綺麗な絵のアニメーションで、どんどんお話がエスカレートして膨らんでいく展開に翻弄されるのですが、画面が優しいのでいつの間にか癒されて、小さな伏線を回収していくラストがとっても心温まる映画だった。監督はキアラ・マルタ、セバスチャン・ローデンバック

 

幼いリンダが母ポレットと父が作ったパプリカチキンを食べようとする夕食の場面から映画は幕を開ける。ところが突然父がその場で気分が悪くなりそのまま亡くなってしまう。そして時が経ち、リンダは小学生になっていた。この日、ママの指輪をはめたくて、ママに必死で頼むが断られる。それはママがパパから貰った大切な指輪だった。それでもリンダは一晩だけ借りることにする。

 

しかし、翌朝になっても指輪を返さず、そのまま学校へ行き友達に可愛いベレー帽を貸してもらって帰ってくるが、ママは自分の指輪と帽子を交換したのだろうとリンダを責める。そして、お仕置きだと同じ団地の姉のアストリッドのところへ連れていく。ところが家に帰ったポレットは、飼い猫が指輪を飲んでいて吐き出したことから、犯人がリンダではないとわかり、アストリッドのところへリンダを迎えにいく。そして、なんでもいうことを聞くからとリンダに謝るポレットにリンダは、パプリカチキンが食べたいという。

 

しかし、ポレットは料理が苦手だった。とりあえず本を読んで鶏を買いに行くが、なんと世の中はスト中でどの店も開いていない。たまたま鶏を飼っている家を見つけて、その家の息子に分けて欲しいというも断られ、ポレットは鶏を盗んで逃げる。しかし、家に帰ったもののポレットは鶏を絞め殺せない。そこでポレットはアストリッドに助けを求めようと運転しながら携帯電話を触る。しかしそれを警官に見つかり、車を停められる。ところがトランクを開けた途端鶏が逃げ出し、それをポレットとリンダは追いかけていくが、若い巡査もその後を追う。

 

鶏はスイカを運ぶトラックに逃げ込み、ポレットとリンダもそのトラックに乗り込む。その後を若い巡査が自転車で追いかけて、やっと捕まえたが、トラックの運転手は鶏アレルギーだった。運転手は、母なら鶏を絞め殺せるだろうと母の家に向かう。なんとポレットらと同じ団地だった。しかし運転手の母も、みんな父がしていたからできないという。巡査はポレットを捕まえ、手錠をかけ、鍵を飲み込んでしまう。鶏は運転手の母の家から外に飛び出し、木にとまってしまう。

 

ポレットからの電話に出られず、気になったアストリッドがポレットの家にやってくると、鶏が木にとまって大騒ぎで、アストリッドは車の屋根から、巡査に梯子してもらい枝に登ろうとするがうまくいかず、巡査が木に登って鶏を捕まえようとするが、リンダらが釣竿で鶏を捕まえようとして巡査の服を引っ掛けてしまい巡査は降りられなくなる。

 

団地の子供達が集まってきて、ジャージや靴を投げて鶏を落とそうとするがうまくいかず、その頃、リンダの友達の弟が、団地の犬に乗ってスイカのトラックに行き、スイカをサッカーボールのようにして外に投げる。それが子供達のところへ行って大騒ぎになる。リンダの友達は、先にパプリカを焼こうとレンジに入れっぱなしにしていて焦げ付いて煙を出し、団地の広場は煙に包まれ、巡査を追ってきた上司の警官も翻弄される。

 

鶏はなんとかリンダの所に行き、リンダは鶏に、父の得意料理だったからと涙で訴え、見事パプリカチキンは出来上がり、集まった子供達やアストリッドらに配られる。ポレットはトラック運転手と仲良くなり、若い巡査は、実は手品師になりたかったと、背中から鍵を取り出し、アストリッドと仲良く木の上で話す。鶏を盗まれた家の若者はポレットにお金をもらい、大騒ぎも楽しかったと答える。こうして何もかも心温まる流れになって映画は終わる。

 

本当に優しい作品で、どうなることかとハラハラドキドキが次第に癒される展開で締めくくるのがとっても良い。絵も美しいし、こういうアニメもありかと思える一本でした。