くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「河内ぞろ どけち虫」「漫画横丁 アトミックのおぼん 女親分対決の巻」

「河内ぞろ どけち虫」

全編河内弁で突っ走る機関車のような作品で、何がどうという中身もないのだが、ひたすら喧嘩と怒声が画面を覆って行く。痛快そのものであれよあれよと展開していき、ラストのほんのりした兄弟愛に、楽しい映画を見たという感慨に耽ってしまいました。これぞ娯楽映画ですね。監督は舛田利雄

 

河内の藪下、父の葬儀の葬列から映画は幕を開ける。この父親の息子、仁助、多度吉、永三は揃いも揃って喧嘩好きで、何かにつけ兄弟喧嘩をし始める地元でも有名な男たちだった。この日も例によって喧嘩を始め、物語は彼らの少年時代に遡る。

 

三人の父親文吾は、女の子を産んで欲しいと思っていたが生まれるのは皆男で、その度に悪態をついていた。しかし、とうとう諦めてしまう。やがて三人は少年になる。闘鶏の人混みに紛れ込む少年時代の仁助らは、大人にも一目置かれ、勝手に軍鶏を買ってきたものの文吾に怒られて、仁助の軍鶏は文吾に殺されて食われてしまう。そんな三人はやがて成人になり、地元の祭りでも喧嘩三昧。

 

二十歳になった仁助は、この地の慣わしで伊勢神宮へ徒歩で参拝に行き、その帰りに女郎買をすることになる。しかし、仁助は持ち前のドケチと才覚で、博打場で大儲けをしても仲間に酒を奢らせる。

 

そんな仁助は、居酒屋のお沢と良い仲になりやがて世帯を持つ。その地の相撲大会を罵倒したついでにその相撲大会に出た仁助は、地元の力士らを倒して名をあげ、やがてこの地放出の親分格になる。その頃永三は、船乗りになると家を飛び出し、一人残った多度吉が両親のもとで百姓をすることになる。しかし、多度吉は地元で次第に名を挙げやがて藪下の親分という地位になる。

 

文吾の葬儀の後、仁助は急病に倒れ、その隙をついて縄張りを狙っていた林蔵が仁助の賭場を仕切り始める。困った仁助の子分は多度吉に助けを求め、多度吉は林蔵の賭場に殴り込んで、まんまと金を巻き上げて林蔵を追い出す。やがて病が癒えた仁助はそのことを聞く。

 

間も無く文吾の四十九日の日、林蔵が単身でピストルで殴り込みにくるが、仁助、多度吉、永三らに逆に反撃され、方法の定で逃げ帰ってしまう。仁助と多度吉はまた喧嘩を始める、それを笑ってみる永三の場面で映画は終わる。

 

とにかく最初から最後まで痛快そのものでめちゃくちゃに楽しい。機関銃のような河内弁の応酬と喧嘩三昧に展開の中に、さりげなく物語が埋め込まれた脚本も上手い。娯楽映画を堪能した、そんな感想の一本でした。

 

「漫画横丁 アトミックのおぼん 女親分対決の巻」

アトミックのおぼんシリーズ第二弾。軽快に進むお気楽なスラップスティックコメディという感じの一本で、全編笑いに包まれながら、娯楽としての映画を楽しめる陽気な作品だった。次々とあんな俳優こんな俳優の若き日を楽しむのも、当時の街の風景を楽しむのも一興の幸せなひとときだった。監督は佐伯幸三。

 

駅の改札、一人のスリが獲物を物色している場面から映画は幕を開ける。財布をすったものの別の老婆風のスリにすり返され、さらに別のスリにすられて財布は元の持ち主へ。老婆風のスリは大阪から東京へ来たヌーベル婆さんというベテランのスリ、彼女をすり替えしたのはこの地のスリ親分アトミックのおぼんという女だった。ヌーベル婆さんはアトミックのおぼんを見返してやろうと画策を始める。

 

おぼんには結婚を約束した正木という青年がいたが、おぼんがスリをやめることが条件だった。おぼんは弟子のインスタントのおちからに堅気になってバーを経営してもらおうと、バーの出物を探していた。そんなおぼんの思いを逆手に取ってやろうと、地元ヤクザの大江山は子分の坂本を使って坂本の恋人のおちかを騙して、売り物のバーを手配させ、金を受け取って、権利証をスリ返す計画を立てる。そのスリ返すのにヌーベル婆さんを使うが、結局うまくいかなかった。

 

大江山は、正木の上司の社長のスキャンダルをネタに金を手にしようとするが、おぼんに邪魔されてしまう。しかし、大江山が権利証の交渉でやってきたおちかに乱暴をしようとして逆におぼんに反撃され、権利証も借金の領収書も奪い返す。ところがその帰り、ヌーベル婆さんに権利証をぬすまれる。

 

ヌーベル婆さんは、おぼんに、スリ合戦をして勝ったら権利証を返してやると提案して、駅でハンカチのスリ合戦を始めるが、正木はおぼんのそばに張り付いておぼんにスリをさせなくする。結局、ヌーベル婆さんが勝つのだが、落胆するおぼんのところに、ヌーベル婆さんは権利証を持ってきて、そのまま警察に自首する。大江山らも警察に捕まる。正木とおぼん、坂本とおちかも仲が戻ってハッピーエンドで映画は終わって行く。

 

コマ落としを多用したコミカルな映像と、心地よいストーリー展開はまさに娯楽映画の王道という仕上がりで、単純に楽しめる映画だった。