くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「デジャヴュ」「季節のはざまで」

「デジャヴュ」

目眩く17世紀と現代の物語の交錯がいつの間にかクセになって虚構の世界にのめり込んでいくファンタジー。ではどういうことだったのかというのがはてなで終わるエンディングが実に面白い作品だった。監督はダニエル・シュミット

 

トブラー博士が、17世紀にポンペイウスを殺したのち自らのその後、同じ斧で殺されたイェナチュの墓を発見したというニュース映像から映画は幕を開ける。見ているのは放送局に勤めるクリストフである。早速彼はトブラー博士のところへ赴く。

 

トブラー博士はイェナチュが殺された時の様子を目の前で見てきたかのように話す。そして、イェナチュは殺される寸前に相手の服の鈴を引きちぎったと話し、その鈴がこれだとクリストフに見せる。そして彼は、墓からイェナチュの頭蓋骨を盗んで家に保管していた。その帰り道、ケーブルカーで降るクリストフは、登りのケーブルカーに乗って入るトブラー博士とすれ違う。そしてクリストフのポケットには例の鈴が入っていた。

 

クリストフが自宅に戻ると妻のニナが化粧をしている。クリストフは彼女をそのままベッドへ連れていく。後日、クリストフは、イェナチュが謝肉祭の夜に食堂で殺された際の斧を持っているプランタと言う老嬢の元を訪ねる。城で召使の老婦人と暮らす彼女は、斧をクリストフに見せる。この頃からクリストフは、イェナチュの幻覚を見るようになる。幻覚なのか、17世紀に自分が紛れ込んでいるのか混乱するようになり、ニナは心配するようになる。

 

ある日、ポンペイウスが逃げてくる場面に出会し、追ってきたイェナチュに、ポンペイウスは暖炉にいると教える自分を体験する。しかも、その時の声は自身に録音機に記録されていた。クリストフは奇妙な罪悪感に囚われるようになっていく。ニナはクリストフが持っている鈴をあっさりと川に投げ捨ててしまう。17世紀のある夜、クリストフは若きプランタ嬢がイェナチュとSEXしているのを目撃してしまう。どうやら17世紀のクリストフはプランタ嬢に気があるらしい。

 

やがて謝肉祭が迫ってきて、クリストフはニナと一緒にプランタの城にやってくるが、プランタは謝肉祭の日は斧を飾らないからと、ニナは見ることができない。そのまま二人は謝肉祭の雑踏の中、食堂へ行く。この食堂の厨房のある場所が以前は食堂で、そこでイェナチュが殺されたのだった。賑やかな子供達の歌声を録音しようとニナが言うので、クリストフはホテルの部屋に戻り録音機を持ってこようとする。そして食堂へ戻ったらニナは大勢の人たちと雑踏の中へ消えてしまう。

 

ニナを追いかけてクリストフは厨房へやってくると、そこに17世紀のイェナチュがカードをしていた。クリストフは斧を持ってイェナチュを斬り殺す。その様子を見ているのは若き日のトブラー教授だった。ベッドで目が覚めたニナは傍に眠るクリストフを認め、映画は終わっていく。

 

17世紀と現代を交錯させ、前世の記憶をデジャヴュとして蘇らせながら描いていく幻想的な物語で、しんどくなる展開もないわけではないけれども、ある意味クセになる面白さのある映画でした。

 

「季節のはざまで」

淡々と過去の思い出を綴っていくだけの作品で、なんの大きなドラマのうねりもないままにラストシーンを迎えるという映画で、正直、退屈といえば退屈ですが、独特の感性の絵作りは美しい。品のいい一本というイメージの作品だった。監督はダニエル・シュミット

 

バスに乗るヴァランタンは、かつて住まいしていたホテルの売店の女性から会いたいと言ってきたので了解した旨の知らせを聞いたことを回想している。ヴァランタンはその女性の家を訪ねる。すでに高齢になっているその女性は鏡に向かって話しかけるほどに弱っていたが、ヴァランタンが幼い日、女性の売店で手に入れていたミッキーマウスの本について語り合う。

 

ヴァランタンは、山の中の海の見える部屋があるホテルで少年時代を両親やホテルの所有者だった祖父母と暮らしていた。ヴァランタンはそのホテルを訪ね、裏口のそばの置物の下に隠してある鍵で扉を開けて中に入る。すでに廃業してがらんとしたホテルだが、少年時代の記憶が蘇り、懐かしい日々が甦ってくる。

 

世界一の美女といわれた大女優が、食事の際に食器の位置を寸分違わず置くように給仕に頼む話や、マジシャンだった父の透視術や催眠術のエピソード、ロシアの女性が外交官を撃ち殺す事件、などなどが映像として描かれていく。そして、最後に海の見える部屋に辿り着いたヴァランタンは窓を開けて広がる海を眺めて映画は終わる。

 

なんの抑揚もなく淡々とエピソードが繰り返され、その合間合間に祖母の語る昔話や父の死、天国になぞらえたホテルのロビーなどが描かれていく。いつになれば終わるのかと思うような展開が延々と続いてラストシーンで締めくきるのですが、映画全体にリズムが生まれていないために妙に長く感じる。それでも絵作りは美しいしカメラワークも流麗なので、クオリティはそこそこあるから見ていられるという映画だった。