「地上より永遠に」
言うまでもなく、フレッド・ジンネマン監督の代表作で、渚でにバート・ランカスターとデボラ・カーのラブシーンが有名な作品。なんと。何十年ぶりかで見直すことになった。
物語は、日本軍の真珠湾攻撃をクライマックスに、ハワイオアフ島での、アメリカ陸軍の中で繰り広げられる人間ドラマである。ほとんど話をおぼえていなかったものの、やはり見直すと、大体の筋を思い出すから不思議である。
丁寧に展開する二組の男と女の物語に、軍隊内での上官による執拗ないじめが絡み合い、しっかりとしたドラマとして完成されている。
主演のバート・ランカスター、モンゴメリー・クリフト、デボラ・カー、アーネスト・ボーグナインなど、古き良き映画黄金期の俳優たちがスクリーンの中で見られる楽しさが一番ですね。
人間ドラマとして、しっかりとしたストーリー展開が、ラストの零戦空襲で、一気に大団円に持っていく手際よさは、さすがにフレッド・ジンネマンの力量でしょうか。そして、甘いラブストーリーが、戦争の幕開けで、全てが無になる虚しさも見事。
いい映画は、何度見ても良いですね。
「誰よりも狙われた男」
彼が死んだ時、映画ファンの誰もが残念がった、希代の名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作品である。監督はアントン・コービン。
正統派のスパイサスペンスで、緊張感あふれる物語が全編に展開する。その緻密さゆえに、気を緩めると、ついていけないほどにハードである。作品自体の完成度は普通よりやや上程度の出来栄えだが、フィリップ・シーモア・ホフマンの強烈な存在感と、脇役に配置されたレイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォーらの演技合戦が、映画をビシッと引き締めてくれます。
映画は、一人の男イッサが岸壁から這い上がって、ドイツハンブルグの街にやってくるところから始まります。彼は父が残した莫大な資金を受け取るために、銀行家のブルーに近づこうとする。そして、その手助けをするのが人権団体の弁護士アナベルである。
その状況を把握したテロ対策チームのバッハマンらは、イッサをわざと泳がせ、アブドゥラ博士を通じてテロ組織への資金の流れがあるのを突き止め、さらに大物を捕まえるべく計画を開始する。そして、テロ組織の資金源となる団体への送金を確認し、次の段階へ進める結果となった矢先、CIAや諜報機関によって、目の前のイッサやアブドゥラ博士は捕まえられてしまう。
バッハマンらが緻密に組み立てていく計画とその流れが、とにかく緊迫感溢れる展開で、クライマックスのアブドゥラ博士が送金先の確認の署名をするシーンは圧巻。
しかし、最後の最後で目の前の犯人だけを逮捕に動いたCIAや諜報機関により、バッハマンらの計画がおじゃんになり、悔しい絶叫をするバッハマンのショットでエンディングとなる。
本当に、フィリップ・シーモア・ホフマンの存在感は素晴らしく、彼が登場するだけで映画がビシッと締まってしまう迫力のある俳優でしたが、本当に残念です。