くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サウンド・オブ・フリーダム」「(本)噂のストリッパー」(マルの中に本が正確な表記)

サウンド・オブ・フリーダム」

アメリカの元政府職員ティム・バラードの実話を元にした作品ですが、めちゃくちゃに良かった。良かった理由、胸打たれた理由は二つの視点からあります。一つは映画としてのクオリティの高さ、映像的にも物語の構成も、そして娯楽性についても非常に完成度が高く、正直面白かった。もう一点が、こちらが大事なのですが、スクリーンから訴えかけてくる圧倒的なメッセージ性。人身売買、児童誘拐、性的虐待を撲滅すべしという訴えかけが半端ないレベルで見ている私たちに迫ってきます。この二点から、とにかくエンドクレジットが終わるまで涙が止まらなかった。こういう映画もあるもんだと打ちのめされたまま劇場を後にしました。監督はアレハンドロ・モンテベルデ。

 

コロンビア?メキシコ?とある街、一軒のアパートの一室の窓からカメラが中に入っていくと、そこで一人の少女ロシオが何やら民族音楽を奏でている。そこへ、ジゼルといういかにも美しい女性が訪ねてきて、ロシオの歌声には才能があるから、ぜひバックアップしたいと申し出てくる。父親もロシオ本人もパンフレットなどを見せられて有頂天になる。そこへ、弟のミゲルも帰ってきたのでジゼルはミゲルにも声をかける。

 

ジゼルに指定された一室へ父親はロシオとミゲルを届ける。中ではジゼルが写真を撮ったり、いかにも芸能デビューのための手ほどきをしている。夜七時に迎えにきて欲しいと言われた父親は一旦帰り、約束の時間に迎えにいくが、部屋の中は何もなくなっていた。アメリカカリフォルニア、小児愛好者のために、仕入れた子供らの写真をアップしようとしている男がいた。その男を監視しているアメリカ政府組織のティムらメンバーがいた。そして子供達の画像をアップし始めた容疑者の部屋に突入逮捕する。しかし、人身売買をする容疑者は逮捕できたものの、肝心の子供達を救出できていないと同僚に言われたティムは、一瞬我に返ってしまう。

 

ティムは他の職員が非番の時に、逮捕した男に個人的に接触し、自分は小児愛好者だから個人的に子供を紹介してくれと提案する。そして上司に提言して一週間の猶予で容疑者を泳がせることにする。容疑者の男はティムを信用し、一人の男の子の写真を提示、受渡場所を指示してくる。ティムは捜査員らと取引場所へ行き、少年ミゲルを確保し、相手の男を逮捕することに成功する。ところが、ミゲルと話をしていたティムはミゲルに姉がいることがわかる。ミゲルは姉と一緒に誘拐されてどこかへ連れて行かれたという。

 

ティムは、ミゲルが姉からもらったペンダントをミゲルにもらい、ミゲルらが誘拐されたメキシコ国境の街へ向かう。そしてアメリカ大使館職員のパブロと共に捜査し、ミゲルの姉ロシオらは、コロンビアの港にしばらくいたことを突き止める。ティムは現地へ飛び、コロンビア警察のホルへ警部と接触の上、闇で子供達を救出する活動をしているバンビロに引き合わせてもらう。

 

人身売買組織の大物ジゼルという女に接触するべく、ティム、バンビロ、ホルへらは作戦を開始、政府が買い入れた島に、アメリカ人の富豪が小児性愛者らが集えるリゾートを作るという嘘の計画を提示して人身売買を仲介する人物を誘き出し、五十人以上の子供たちを調達するように依頼する。

 

やがて、ジゼルら数人の仲介人たちは五十人以上の子供たちを連れて島にやってくる。待ち伏せていたホルへら警察が一斉に突入したが、ティムが探しているロシオは見つからなかった。逮捕した仲介人から、ロシオがコロンビアの南部地域に売り渡したことを突き止めたティムは、その地へ向かおうとするが、そこは反政府組織が支配する無法地帯でホルへも手を出せないと言う。ティムはバンビロのアイデアで国連の医療チームに扮してコロンビア奥地へ向かうことにする。

 

奥地へ向かう川までしか行けないと言うホルへは河岸で待機し、バンビロとティムがボートで奥地へ向かうが、途中で反政府組織に遭遇、ティムだけがさらに奥へ行くことを許される。決死の思いでコロンビア奥地へ潜入したティムは、ボスと呼ばれる男の愛玩物として扱われているロシオを発見する。

 

深夜、ティムはロシオのベッドに近づき救出しようとするが、折しもボスが戻ってきた。ロシオを抱こうとするボスをティムが殺し、ロシオを連れて村を脱出、バンビロと合流の上、ホルへの待つ河岸へだ取りつく。追っ手をなんとか振り切ったティムらは無事ロシオを救出、病院へ入院させる。

 

朗報を聞いたロシオの父がミゲルと一緒にロシオと再会。自宅に戻ったロシオは民族楽器でサウンドオブフリーダムを演奏し始めてカメラは冒頭のシーン同様にゆっくりカメラが引いていって映画は終わる。その後もティムはコロンビアに残り、大勢の子供達を救出したテロップが流れる。エンドクレジットで、ティムを演じたジム・カビーゼルが、子供達救出のための資金援助を切々と訴えて映画は終わっていく。このエンドクレジットも圧巻です。

 

児童誘拐、人身売買、性的虐待を訴えるメッセージ性の高い作品ですが、映画の作りも非常に完成度が高く、素直に面白い。映画という手段で訴えてくる見事な一種の娯楽作品であり教示作品でもある。これも映画の一つの形なのだと思いました。とにかく涙が止まらなかった。

 

「(本)噂のストリッパー」

森田芳光監督の日活ロマンポルノ時代の一本で、たわいない青春ドラマという一本。なんと主演があの宮脇康之。60分余りに凝縮させた作劇はこれはこれでお面白いし、昭和歌謡曲に乗せて次々と展開するステージシーンは楽しい。古き良きノスタルジーと甘酸っぱい思い出を感じさせてくれる一本だった。

 

浦安のストリップ劇場、支配人がテレビをステージに持ち込んでスイッチを入れるとテレビから裸のダンサーたちの笑いが映し出されて映画は幕を開ける。この小屋の常連洋一は、踊り子のグロリアに惚れて頻繁に足を運んでいた。小屋の照明係に花束と手紙を託したりするが、グロリアに届かなかった。やがてこの小屋での興行が終わり踊り子たちは別の場所へ移動してしまう。

 

配達のバイトをする洋一は、一軒の配達先でレコード針の交換を頼まれ、その家で一人暮らしの少女と体を合わせるようになる。そんな時、町でかつて浦安劇場の照明のバイトをしていた学生と出会い、グロリアがまた戻ってきていると聞く。洋一はアパートの彼女と別れ、浦安劇場へ行く。グロリアは先日からお金を稼ぐために本生の舞台をしていた。洋一は客たちとのジャンケンで勝って、グロリアとステージの上で抱き合う。かつて手紙を渡したこと、愛してるという言葉などを投げるもグロリアは反応せず、また別のお客とステージを演じ始める。それをじっと見つめ街に出ていく洋一。ステージでは次の演目で客に大声をかけるグロリアのショットで映画は終わる。

 

不思議なくらい切ない映画で、グロリアの先輩踊り子のドラマや支配人たちのすがた、淡々とステージをこなしグロリアの姿がさりげなく描かれ、のめり込んでいく洋一の対比がとってもピュアで美しい。第一級の一本とかいうレベルではなく、余計なものは削除し描きたいことだけをただ映像にするという映画の基本が詰まった一本だった。