くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「Flowers」

フラワーズ

資生堂のキャンペーン映画程度にしか思っていなかったこの映画、ただ大好きな田中麗奈がでているからという理由だけで見に行ったのですが、泣いてしまいました。三世代にわたる女性の物語なのですが、そこに家族、結婚、出産、別れなど生活の中でありきたりに起こる出来事が丁寧に描かれていたこと、さらに自分の現代と微妙に重なる部分があったためかもしれません。

物語はモノクロで始まります。とある雪深い田舎の村、時は昭和11年。いままさに嫁がんとする凛(蒼井優)の家のシーンです。どこか踏ん切れない凛はとうとう父親とけんかして、角隠しをしたまま家を飛び出してしまう。
そして物語は高度経済成長期の時代へ飛び、薫(竹内結子)翠(田中麗奈)慧(仲間由紀恵)の物語、そしてさらに現代の花奏(鈴木京香)佳(広末涼子)の物語へと交錯しながら進んでいきます。

それぞれの女性の生き方、その時々の結婚や出産、家族、などについての悩みか丁寧な演出でつづられていきます。この展開が本当にまじめでいつの間にか引き込まれてしまいました。もちろん女性の視点なので、男性である私にはその本当の気持ちは理解していないかもしれませんが、それぞれの時代をある程度映し出しながら、女性たちを取り囲む男性たちの描写もさりげなく織り込んで、あくまで女性の物語に終始したのは成功だと思います。

そして、それぞれの人生の区切りを描ききったあとでもう一度凛の姿に戻し、神社で母と話し、父が決めた縁談であるにせよ、家族を作ることのすばらしさを実感し、最後父(塩見三省)の前で手をつくシーンに胸が熱くなってしまいました。

また撮影が見事で、昭和初期のモノクローム映像、高度経済成長期の映像は光の工夫でテクニカラー調に、平成はブルートーンのモダンな映像にとこのあたりの演出も丁寧でした。それにそれぞれの時代のカメラもフィックスから移動、など時代ごとにあわせた演出法を丁寧に施した小泉監督の努力は認めるべきだと思います

可もなく不可もない作品かもしれませんが、思い起こすことがたくさんあり、みてよかったと思います。