1944年フランスのとある田舎町を舞台に独りの青年ルシアンの行き場の尾内青春の物語をルイ・マルならではの繊細な完成で描いたラブストーリーである。
とはいえ、主人公が生きた時代はドイツによるフランス侵攻のまっただ中、かつユダヤ人迫害という苦難の時代でもある。そして数々の映画に描かれたフランスレジスタンスによる攻防の時代である。
そんな時代に、平凡に病院に勤めて暮らしていたルシアンは、ふつうのフランス人青年のごとくレジスタンスにあこがれる。ところが運命のいたずらか、レジスタンスを拒まれたルシアンはたまたま、ドイツ警察の前でスパイと疑われたことがきっかけでドイツ警察側に入ってしまう。
訳も分からず裏切り者と言われながらも人間的な勘定を捨てながら行動をするルシアン。ところがある日一人のユダヤ人少女フランスと出会う。権力側にたってしまった自分にどうしようもないもどかしさの中、ドイツ警察という権力をひけらかして彼女に近寄るルシアンの行動が何とももの悲しい。
しかし、一途な気持ちは彼女の父親も薄々承知し、二人はぎこちないながらも恋愛ゲームを進めていく。しかし、戦争は終局へ突き進みドイツ軍は執拗なユダヤ人迫害に拍車をかけていく。やがてこんな田舎にもそんな迫害の手が回り始める。
彼女の父が自らユダヤ人の誇りを持って、連れ去られ、残った娘にもドイツの手が迫る。ルシアンは彼女を連れだし車で走りサル。やがて空き家になった田舎の一軒家へ。
そこで慎ましやかに暮らし始めるところで、ルシアンが後にレジスタンスに捕まり処刑された胸のテロップがでて映画が終わる。
ルイ・マルらしい映像表現で描くラブストーリーで、冒頭の病院でのシーンを窓の外からとらえ、さらに自転車で走る主人公の姿をとらえるショットは秀逸である。
しかも、ルイ・マル監督は実にラブシーン、ベッドシーンが美しい。この作品でもフランスが背中を向けて全裸で横たわる脇にルシアンが座るショットなど初々しいほどに美しい。時折歯がゆそうに笑うルシアンのいたたまれないような心の葛藤が見事に画面で生きているあたりの演出もなかなかの物である。
ではあるけれども、どうもこういう不器用な男女の不器用なラブストーリーというのは個人的に苦手な分野なので、友人が絶賛していたが、今ひとつのめり込めずに終わった。