ルイ・マル監督が描くシュールで幻想的な「不思議の国のアリス」の物語。全編に才気あふれるルイ・マル監督の鋭い感性が見え隠れするショットがふんだんに登場し、非現実的なあるようでない物語が展開していきます。解説にもあるように実験的な試みで作られた作品らしく、どこにも一貫したテーマは見えてこないですが、独特のムードを醸し出してくるシーンの数々を楽しむおもしろさがあります。
解説によると近未来の物語で男と女が戦争をしているという設定。そんな世界で逃げてきた一人の主人公の少女が紛れ込んだお屋敷で出会う不思議な物語という内容らしいですが、画面の中にそんな説明はどこにも見られない。
映画が始まると地面の餌を食べている穴熊を低い位置からカメラがとらえます。じっととらえたカメラが引いてくると、その穴熊は道路の真ん中でうろついている。彼方から猛スピードで車が近づいてくる。そして穴熊をひき殺して止まる。運転しているのはまだ帽子をかぶった少女のような若い女性。
一瞬ためらうも再び走り出す。角を曲がるところで一つの死体を見つけ、さらに進むと大勢の戦士が数人の捕虜らしい人間を射殺する現場へ。あわてて車で逃げる彼女。くる、あを降りて少し行くとガスマスクをした戦士に出会うが、再び逃げる。
逃げきったところでぐったりと眠ると、虫、蛇、などが忍び寄るシーンが映される。次第次第に不気味な様相になってくる。
彼方に一見のお屋敷を見つけ、入っていくと老婆が寝ている。老婆は無線機でなにやら話をしている。外では双子のような男女がいる。素っ裸で山羊たちを追っている少年少女、一角獣がうろついている。ベッドの脇に大きなネズミがいる。なんとも不思議な光景が展開していく。
少女の脇で老婆が死んでしまう。あわてて双子の男女を呼びにいくと、女の方が老婆にお乳をやる。すると老婆がまた生き返る。
少女の下着が数理と足下に落ちてみたり、それを笑う老婆の姿。どこの国かわからない言葉が横行するショットなど、めくるめく迷宮世界が次々と物語を引っ張っていくのだが、どこへ向かっているのかまったくわからない。
一角獣と話をし、双子の男女のうちの男が鷹を切り殺す。
ラスト、一角獣がベッドの脇に座っている。おもむろに胸をはだけてお乳をやろうとする少女のストップシーンで映画が終わる。
気を抜くと眠くなるようなまさにめくるめく幻想世界である。これ以上のコメントがしづらい映画でした。ある意味「世にも怪奇な物語」のルイ・マル作品に共通するシュールな映像と呼べるかもしれません。