くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「誘拐魔」「影を追う男」「悪魔の往く町」

「誘拐魔」

少々途中から横道に逸れていく感があるのですが、余計なことはさておいての単純なサスペンスを楽しむことができます。これがフィルムノワールの面白さですね。監督はダグラス・サーク

 

バスに乗る一人の女性が待ち合わせの手紙を読んでいるシーンに始まり、ある男と待ち合わせていずこかへいく。影を使った夜のショットからのオープニングが素晴らしい。最近、女性の行方不明事件が多発しているという記事。そして必ず犯人から詩に書かれた犯行予告がくることがわかる。

 

場面が変わりとダンサーとして仕事をしている主人公サンドラは、同僚のスーザンがいい仕事があったのでやめるという話をしている。間も無くして彼女が行方不明となり、サンドラは警察に行き、テンプル警部から、協力して犯人を逮捕しようと提案され、臨時で警視庁の身分証明書を渡される。

 

物語の前半は、サンドラがそれらしい求人の広告に合わせて何人かの男と会う場面が続く。その中で、彼女に一目惚れしたのがフレミングという男で、以前、サンドラがオーディションを受けようとしていたところの男だった。

 

やがて二人は親しくなり、いよいよ結婚ということになる。ところが時を同じくして犯人から、次の犯行を匂わせる詩が警視庁に届く。また、フレミングの家の弁護士ワイルドがサンドラの持ち物から警視庁の身分証を見つける。

 

そんな時、サンドラはフレミングの書斎で行方不明の同僚の写真と彼女が持っていたブレスレットを発見してしまう。さらに、駆けつけたテンプル警部からサンドラが警視庁に協力していることを知り、フレミングはそのまま逮捕されてしまう。

 

ところがフレミングには身に覚えがない。実はワイルドが真犯人だった。テンプル警部は一か八かフレミングが自白したことをワイルドに告げる。ワイルドは高飛びするべく列車の切符を取る。そこへサンドラが現れる。ワイルドはサンドラに惚れていた。しかし、ワイルドはサンドラを亡き者にして永遠に自分のものにしようと襲いかかる。駆けつけたテンプルたちがワイルドを逮捕し、フレミングは釈放されサンドラとハッピーエンドでエンディング。

 

夜のシーンを多用し、石畳の明暗と街灯の影と光が見事な映像で、物語の組み立ては少々まとまりがないとはいえ、この空気感は癖になる一本でした。

 

「影を追う男」

本筋がいつの間にか脇に行って、サスペンスフルな展開がどんどん全面に出てくるし、話の絡みが複雑に二転三転するので、ちょっと込み入りすぎかと思いますが、面白かった。監督はエドワード・ドミトリク

 

ロンドン、主人公ローレンスが退役してくるところから映画は始まる。フランスへ行きたいが許可に時間がかかると言われ、単身ボートで海を渡る。彼の妻が殺され、その犯人は戦犯でもあるマルセル・ジャルナックとわかり、彼の所在を探す。手がかりの書類を持つという男が殺され家に火をつけられ、そこへ行ったローレンスはマルセルに関する書類の燃え残りを発見。さらに、マルセルの妻がいるというヒントでその妻に会うためにブエノスアイレスへ向かう。

 

空港で一人の男インザが近づいてきて、ローレンスをカロルゴ夫人のパーティへ強引に連れていくが、そこでジャルナック夫人であるマドレーヌと出会う。ローレンスは執拗なまでにマドレーヌを付け回すが、やがて、彼女の周りにある闇が見えてくる。

 

実はマドレーヌは、マルセルの妻ではなく、ロラン夫人と言って、フランスで生き延びるためにジャルナック夫人を語っていたのだという。ローレンスは、次第にマルセルに近づいていくが、インザも実はマルセルの手下であることなどもわかり、どんどん展開は複雑に入り組んでくる。

 

インザが狙うのはローレンスが手にしたというマルセルの秘密書類だったが、実は燃え残りだった。その罠にはまったインザはその書類を手にマルセルのところへ行く。そこにはローレンスがいた。そして、マルセルに迫るが仲間たちに反撃される。すんでのところで警察が駆けつけ、前後してローレンスはマルセルを引きずり出し殴る。そこへ、サンタナらが現れ、ローレンスを引き離すが、すでにマルセルは死んでいた。警察が踏み込むが、潔く出頭したローレンスにサンタナが弁護に入るといい映画は大団円。

 

込み入りすぎた展開がやりすぎの感もある作品で、フィルムノワールはもうちょっとシンプルな作品が多かった気がしますが、これはこれで面白かったです。

 

「悪魔の往く町」

シンプルなストーリーで、一本の線の上を辿っていく物語が実にわかりやすくて面白い。少々終盤がしつこいですが、なかなか楽しめました。監督はエドマンド・グールディング。

 

あるサーカス小屋、スタンは下働きをしながら持ち前の話術で一座でいい地位にあった。透視術で人気のピートとジーンだったが、かつては大人気のスターだった。ピートがアル中になりここでドサ回りをしていた。二人の秘密は、門外不出の暗号だったが、スタンはそれが知りたかった。

 

ある夜、酒を求めているピートにたまたま手に入れていた酒をスタンは与えるが、隠していた箱から出すときに間違えたものを渡してしまい、翌朝ピーチは死んでしまう。スタンはジーンに暗号を教えてもらいやがて二人は人気の透視術のスターになるが、スタンは若いモリーといい関係にあり、モリーはスタンが暗号を覚える手伝いをしていたので、暗号も覚えていた。

 

たまたま警察の手入れもあり、それをきっかけにスタンはモリーとこの一座を離れ独立、みるみるスターになっていく。しかし、欲望の尽きないスタンはたまたま知り合った精神科医と組んで降霊術へと突き進んでいく。

 

最初はうまく行き、富豪の顧客もついたが、どんどんエスカレートし、とうとう大金を得るためにモリーに顧客の死んだ娘役をさせて見せるところまでしてしまう。しかし、良心の呵責からモリーは顧客の前で正体をばらし、スタンたちは逃げることになる。

 

スタンは預けていた金をもらいに精神科医のところへ行くが、受け取った封筒は15万ドルあるはずが1ドル札にすり替えられていた。精神科医のところに引き返したスタンだが逆に精神科医から、患者の妄想だと丸め込まれて、這々の体で逃げることになる。

 

そして間も無く酒に溺れ、ホームレスになり、行き場もなくなり、たまたま見つけたサーカス団に、使ってくれと懇願。非人間として採用されたが、その夜、酒が切れて暴れているところに、そこで働いていたモリーが見つける。こうして二人は再会し大団円となる。

 

冒頭の様々なエピソードをラストでくり返すことで、人生の不思議を盛り込んだ脚本が面白い。スパイスにタロットカードを盛り込み、一級品の一歩手前の仕上がりながらも、なかなかの作品に仕上がっていました。