くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」「孤島の

ブライズメイズ

ブライズメイズ 史上最悪のウエディングプラン」
アカデミー賞脚本賞にもノミネートされているし、全米大ヒットのコメディということでかなり期待していったが、し過ぎた期待を完全に裏切られた感じの映画だった。

確かに、下品なギャグの連続とせりふの応酬、グロいシーンをてんこ盛りにするという笑いのとらえ方はあれはあれでいいと思うのですが、それぞれのシーンは笑えるのに、全体にまとまってこない。

前半部分、ウエディング衣装を着る場面までの目を背けるほどの下品な演出はやり過ぎかもしれないけどこれがこの作品の色だと思えば許せる。ところが、このあとはまっとうなギャグしか登場しない。それがこの作品の勢いを止めてしまうのです。アニーのヒステリックな言動だけで笑いをとろうとしていく。

個性的なブライドメイドたちの紹介シーンはおもしろいのに、物語が本編に入ってからはせっかくの個性が笑いを呼ばない。唯一メーガンを演じたメリッサ・マッカーシーが群を抜いて引き立っているのですが、主人公アニーと二分してストーリーを運ぶはずのヘレンが今一つおもしろさに欠ける。

しかも、なにをやっても悪いほうへしか展開しない運の悪い主人公アニーがひたすらヒステリーを起こすだけで後ろ向きな場面ばかりときているから、だんだんこの主人公から心が離れていってしまう。彼女に絡んできて後半部分でストーリーを引き立てるはずのローガン巡査が今一つ花のない俳優さんなのも物足りない。

ファーストシーン、不倫の相手と一夜を過ごすアニーのばかげたほどのSEXシーンはちょっと気分が悪いものの出だしとしてはいいかなと思う。その後の門をでるシーンで引き込んでタイトル。ここまでは実に楽しいのですが、後は前述の通りになっていく。

笑いを巻き起こす登場人物の言動のおもしろさが主人公アニーの運の悪い人生を引き立てきれずに、中途半端なのでしょうか。ただ、やはりアカデミー助演女優賞ノミネートされたのが納得のメリッサ・マッカーシーが光る。

結局、ヘレンの段取りでド派手なパーティになり、アニーとリリアンも仲直りをし、ヘレンとアニーも仲良しになり、そしてアニーにはローズ巡査との春がやってきてハッピーエンド。思い切り突っ走った後の感動のラストとつなぐべきなのでしょうが、脚本の出来映えをポール・フェイグの演出のリズム感の悪さで打ち消してしまったような映画でした。ちょっと、残念な一本。

「孤島の王」
ノルウェーの寒々とした景色を叙情的な背景に配置し、過酷な少年矯正施設の中の緊迫した世界を丁寧な演出で描いていく。正直、物語の三分の二あたりまではとにかく地味な画面が展開するので、しんどいといえなくもないが、この地味な画面が独特の緊迫感を生み出していることも確かです。

ほとんど感情を表に出さない少年たちの表情、淡々と日々の作業を繰り返す姿、一方で執拗に強行的な命令を下す寮長たちの姿がかえって冷酷なイメージを生み出していく。

1900年から1970年まで現実にノルウェーに存在した少年矯正施設バストイ島を舞台に、実際に1915年に起こった少年たちの反乱をクライマックスに物語が展開する。

雪景色とどんよりとした空、その中で走る船のシーンから映画が始まる。鯨が大海原をみをうねらせて泳いでいる。主人公エーリングが語る鯨の物語のナレーション。

物語は少年矯正施設にエーリングという少年以下数名がつれてこられるところから始まる。一緒についた少年はC5と名付けられ、エーリングはC19と呼ばれる。ここにはまもなく出院予定の優等生でC1と呼ばれるオーラヴがいた。

何かにつけ反抗的な態度をとり、脱走を試みるエーリング。一方優等生のオーラヴは一見、かみあわないようであるがオーラヴの内に秘めた狂気を認めたエーリングは次第にオーラヴに近づいていく。

日々、過酷な労働と虐待が繰り返されるが、たんたんと描かれるエピソードの数々にアメリカ映画のような派手さが見受けられない。なにがあっても表情を変えない少年たちの行動に、まるで精神的に洗脳された無気力な姿が見えるけれども、そんな彼らの視線の中にしだいに激情が沸沸と沸き上がっている様子が伝わってくる。

ある日、寮長に性的虐待を受けていたC5が自殺をする事件が起こる。C棟のリーダーだったオーラヴは次第に我慢の限界を越えてきたが、出院間近故に必死で耐えている。そして出院の日、とうとうオーラヴは寮長に襲いかかり、一緒にエーリングも行動を共にしたために檻に入れられてしまう。このあたりからじわじわと他の少年たちの怒りが爆発寸前になる様子が伝わってきます。

そして、とうとう爆発。今まで静かな映像を徹底していたのですが、一気に少年たちが武器を持って立ち上がり、小屋を焼き払い、院長も追い出してしまう。しかし、政府は軍隊を出動させ鎮圧に当たる。霧の中、ゆっくりと浮かび上がる巨大な戦闘鑑のシーンは迫力満点である。

すでに海は氷り、陸まで歩いて逃げきれると判断したオーラヴとエーリングは海を渡り始めるが途中で、氷の薄いところでエーリングが落ちてしまう。オーラヴが助けようとするもかなわず、エーリングは海の底へ。一人陸地を目指すオーラヴ。時がたち、成人したオーラヴが船でヴァストイ島に向かうシーンで映画が終わる。鯨のショット。かつてエーリングが語っていた鯨の物語の締めくくりがナレーションにかぶる。

終盤に至るまで、静の映像が徹底され、終盤に一気に彷彿し動の映像に転換する。この対比が実に見応えのある組立であるが、全体に地味なために、日頃派手な映画ばかり見ているとやはりしんどい。北欧の映画の独特のムードが漂う秀作ではあるけれども、決して娯楽映画とは呼べない。でもみて損はない一本でした。