くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「黒帯三国志」「嵐の中の男」

黒帯三国志

「黒帯三国志
今や、ほとんど扱われなくなった柔道家を扱った痛快アクション映画。ボクシングとの対決や空手家との対決、恋い物語、たこ部屋での重労働、やくざとの戦いなどなどこれでもかというほどの見せ場の連続で、最後まで全く飽きさせないおもしろさに終始した映画作りを堪能できます。

汽車の中で酔っぱらって絡んでいる武術家を懲らしめる主人公小関のファーストシーンに始まり、北九州のとある町の柔道道場から物語が始まる。喧嘩のために破門された小関が東京へ行き、海外への留学のために勉学に励む。ところがだまされて北海道のたこ部屋へ送られたりの末に試験に合格。その報告に九州に戻るが恩師は空手家に目をやられて失明している。

人買いを追いつめる刑事の登場も絡んで、雨の中、神社でのクライマックスの格闘シーンへと物語はなだれ込んでいく。黒澤明の「姿三四郎」とはまたひと味違った痛快娯楽映画である。

北九州の町並みのシーンが実に美しく、村木与四朗の美術のこだわりも作品の格を高める。全体にたわいのない娯楽映画ではあるけれども、手抜きをしない楽しませる映画を徹底して描く谷口千吉の演出が光る一本でした。

「嵐の中の男」
「黒帯三国志」同様の展開の柔道映画ですが、さすがにこちらは舞台となる下田と東京をいったりきたりで、その上同じパターンの格闘シーンの繰り返し、終盤に至ってはすっかり飽きてしまっていたというのが正直なところでした。

日露戦争直後が舞台のために小村寿太郎の世話になる場面や日比谷焼き討ち事件などが登場したりと、時代色をだそうという試みもわざとらしく見え隠れし、それも娯楽映画の醍醐味というところでしょうか。

下田へ帰る船の中の主人公渡三郎のシーンに映画が始まり、そこで出会う娘秋子との恋物語の予感を漂わせる。
下田について、秋子の道場を助ける下りから例によって妬まれた主人公は同業の辻堂とその愛人の兄で空手家の運平を敵とし、物語の中心に絡んでくる。

下田から東京へ移った渡を追って辻堂たちがやってきて格闘。さらに下田に戻ってクライマックスの死闘へとなだれこんでいく。ストーリー展開は単純だし、見せ場は柔道の格闘シーンということで、さすがに古さを感じさせる。ただ、この手の古い日本映画を見る楽しみは当時の世相、風俗の姿がリアルに見られることである。走る汽車、町並み、人通りのシーンなど、へたなドキュメントフィルムよりもよっぽどおもしろい。

たわいのない娯楽映画ですが、まさに退屈しのぎの一本という風情が漂う気楽な映画でした。