くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「踊る摩天楼」「家族會議」「上陸第一歩」

kurawan2016-05-23

「千万長者の恋人より 踊る摩天楼」
とにかく、ひねくり回したストーリー展開で、イライラしてくるのだが、独特のカラーがあるからその不思議な魔力に引き込まれてしまうから不思議だ。監督は野村芳太郎。しかもアメリカ映画の翻案のようなコメディである。

物語は、とあるテレビ局で繰り広げられるラブコメで、次々とダンスや踊りがまるでレビューのごとく繰り返される。田舎からやってきた堅物の爺が登場し、話をグチャグチャと練り回しながら、一昔前の封建社会からモダン社会に変わりつつある日本の姿を映し出し、世相の変化を歌と踊りを交えて描く物語は夢の如し。

とは言ってもああでもないこうでもないという決断力のない男どもに、ちゃきちゃきとした女性陣が振り回す展開は、まさに今に共通すると言えるかもしれませんね。

お宝映像のような芸人たちが画面の隅々にちょこっと出る歴史的な価値まで見抜ければこの映画の値打ちはぐっと上がるでしょう。その意味で、少々のダラダラ感は吹っ飛んでもよかったかもしれません。


「家族會議」
今や歴史的な映画資産の一本。監督は島津保次郎、助監督に吉村公三郎の名前なども上がっている。

戦前の日本の株屋を主人公に、彼に近づく二人の女性との物語が丁々発止のごとく描かれていく。安定した画面の構図と、やや古さを感じるがしっかりとしたストーリーテリングは、製作年度を考えればなかなかの一級品である。

何と言っても及川道子扮するヒロインを見るだけでも値打ちのある一本で、わずか26歳で亡くなる彼女の遺作となる。

ハイレベルな資産家たちのお話で、とても庶民が登場する隙間もない映画ですが、映画が娯楽の王様で量産されていた時代を考えると相当なクオリティと呼べる映画でした。


「上陸第一歩」
同じく島津保次郎監督の代表作の一本。アメリカ映画の焼き直しであるが、しっかりとした絵作りはさすがに安定感がある。物語はシンプルでたわいのない物語ですが、わかりやすいという感じですね。

港のインサートカットが繰り返され、一人の船乗りが弟分と港にいると、飛び込もうとした女を見つけ、飛び込んだ直後に助ける。

そして、女と船乗りはねんごろになるが、女のパトロンのような男が絡んできて、船乗りといざこざになり、最後はバトルになって、誤ってパトロン男を殺してしまった船乗りが警察に連れて行かれ、泣き崩れる女のシーンでエンディング。

繰り返されるインサートカットがうまいし、終盤の喧嘩シーンが突然サイレント映画のごとくコマ落としになるあたりも、トーキー一作目という島津保次郎監督の遊びも見られ楽しい。映画財産のような映画ですが見る価値のある一本でした。