くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「47RONIN」「利休にたずねよ」

47RONIN

「47 RONIN」
パラレルワールドの日本で展開する、「忠臣蔵」を題材にしたファンタジーアドベンチャーだと高をくくってみれば、結構楽しめるエンターテインメントでした。

キアヌ・リーヴス扮するカイと浅野家の姫との恋話も無理なく挿入され、菊地凛子扮する魔性の狐のエピソードも無理がない。結果として、普通のファンタジーとして、見せ場の連続を楽しめる作品に仕上がっていたと思います。

この映画に、「忠臣蔵」の世界を求めるのは無理であるし、間違っていると思う。当然、日本の描写も、別世界のお話とすれば、こだわる必要はない。個人的には楽しい映画でした。

結局、何者かわからないカイという鬼の子が、森の中で生き延び、浅野家の主に助けられ、忠誠を誓う。このエピソードを入れて、キアヌ・リーヴスの役をつくりだして、後は、改変した「忠臣蔵」の話に沿ってストーリーが展開。クライマックスは、吉良家でのチャンバラシーンに、魔性の狐の変化した姿とキアヌ・リーヴスが戦う見せ場を作り、ラストの切腹の場面でエンディング。

忠臣蔵」のわび、さび、美学はすべて排除したアメリカ的な娯楽映画でした。評判が悪いので、いかほどかと思いましたが、この程度なら成功しているのではないでしょうか。


利休にたずねよ
圧倒的な重厚さで迫ってくる物語は、さすがに二時間あまりある作品ながら、間延びしない。映像づくりも、丁寧かつ、しっかりとした画面づくりが、ストーリーの根幹を支えている。

とはいえ、美を追求した茶人の物語であるが、映画に美が感じられないのはさすがにおしい。明らかにデジタルによる弊害と呼ぶしかない。名カメラマンと呼ばれる人が皆無になり、映像づくりをする監督が少なくなったというほかないのだろうか。確かに、適当な画面演出をしているわけではないが、どうも普通なのである。

さらに、一流の歌舞伎役者としての市川海老蔵が、希代の茶人千利休との間にギャップが見え隠れするのが、これも欲を言い過ぎかもしれないが惜しい。微妙にせりふの間が、ずれるときが感じられるのは私だけだろうか。

物語は、利休が切腹する日の朝に始まる。そして時がさかのぼり、21年前、10年前、9年前、とさかのぼりながら、時の権力者をも翻弄する利休の姿を描くのが前半部分。そして、まだ茶人になる前の利休の姿を描き、大事に懐に持っている高麗の壷のいきさつが語られるのが後半。日本につれてこられた朝鮮の女に恋し、ともに死を覚悟するものの、自分は生き延びる。そのときの思い出を描く後半部分。

そして、切腹の後、高麗の壷を手にする妻宗恩。若き日に助けた女性への思いを断ち切れなかった夫への嫉妬で、思わず投げつけようとするが、それもためらい。物語は幕を閉じる。

利休が語った、様々な美への思いを丁寧に物語の中に描いていく筆致はなかなかのストーリーテリングであり、四季の景色をさりげなく取り入れた画面も美しい。まじめ一徹の作品であり、これはこれで十分評価に値する一本だったと思います。ただ、欲を言えば、日本映画はもっと美しかった気がする。