くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ニューヨーク 冬物語」「マンデラ 自由への長い道」

ニューヨーク冬物語

「ニューヨーク 冬物語
とってもファンタジックな奇跡の物語、不思議なムードが漂う、ラブストーリーのようなのですが、ラストシーンではそうではないことに気がつく。いや、でもやっぱりラブストーリーだったか?あまりにも美しすぎるストーリーは、かえって、少し引いてしまうほどに照れくさい作品だった。

映画は2014年、一人の男ピーターがグランドセントラル駅へ入っていく。そして、天井の星の絵を見つめる。屋根裏に行って、一つの箱を取り出し、そこに入っている布と、奇跡の町という名の入ったプレートを見つめて、物語は1815年へ。

ピーターの両親は、移民としてこの町にやってくるが、結核と診断された父は入国できない。それでも両親は息子ピーターをこの町に残すべく、模型で飾られていた舟に乗せて海に流す。その船のプレートが奇跡の町である。

そして、物語は1916年へ。一人の男、つまり成人になったピーターが、悪漢らしき男たちに追われている。その首領はパーリーと呼ばれる不気味な男。柵を乗り越えたピーターは、そこで真っ白な馬と出会う。この突然の白馬の登場は、この物語がファンタジーだと見せているのである。
その馬に乗ったピーターは3メートルもあろうかという柵を軽々と乗り越えて、逃げてしまう。

ピーターは泥棒家業で、そのボス、パーリーに追われている。ピーターは遠方へ逃げることを決め、何件かの家に泥棒にはいって、資金を集め、さあ、行くかと思うと、馬がもう一軒を指示する。そして、その最後に一軒の家に行くと、結核で余命幾ばくもない女性ベバリーと出会う。そして二人は逃避行する。後を追うパーリーだが、ピーターの乗った白馬は羽をまとい、雪原に降り立ち、彼方の北方へ。なぜか北方へはいけない掟があるパーリー。

パーリーは悪魔で、そのボスで大魔王=判事のところへいく。しかし、北方への許可は得られない。
一方、ベバリーには、妹のウエラがいて、彼女は、姉ベバリーのために、温室の中に奇跡のベッドを作っている。底に寝かせて、キスをすると蘇る御伽噺のような奇跡を信じているのである。

一方、ピーターとベバリーの恋は、ある夜、初めて二人で舞踏会にいき、初めてのベッドをともにした夜に、ベバリーは死んでしまうのだ。実は、パーリーの差し向けた男が、毒を盛っていたのだ。ピーターはベバリーを奇跡のベッドに寝かすもよみがえらない。

愛する女性を失ったピーターは、パーリーと橋の上で戦う。白馬をときはなち、一対一で戦うが、ピーターは橋の上からつき落とされる。そして時は2014年へ。

記憶をなくしたピーターは、駅の屋根裏で見つけた箱の中のもので、記憶を呼び戻そうとする。そして、その途中一人の少女アビーと出逢う。

記憶のないピーターは、なぜか無意識に墓に行き、そこで少女の絵を描いてしまう。その墓は、ベバリーの墓なのだが、気がつかないのだ。実はそこで書いた絵がアビーのことだと終盤にわかるのである。

一方、パーリーが死んだと思っていたピーターが、生きていることを知り、再び追ってくる。

アビーはガンで余命幾ばくもなく、ピーターは、彼女を救う奇跡を起こすために、生きながらえているのだと悟る。そしてパーリーとの最後の戦いの後、いったん息を引き取ったアビーを奇跡のベッドに運び、よみがえらせるのである。
そして、使命を終えたピーターは白馬に乗り、彼方の夜空で星になる。今や、老婆となったウエラが空をじっと見つめてエンディング。

パーリーという悪の存在がやや弱いために、全体のストーリーの展開が平坦になってしまい、物語の核となる、理由付けがあやふやになってしまった感じである。次々と起こるエピソードと、ちりばめられた伏線の数々の見事さは、さすがにアカデミー賞脚本家アキヴァ・ゴールズマンならではの上手さである。しかし、ちょっと抑揚感にかけるのが本当にもったいない一本。でも好きな物語です。


マンデラ 自由への長い道」
南アフリカ共和国の黒人大統領となったネルソン・マンデラの半生を自ら描いた原作に基づく人間ドラマであるが、記録映画のような作品だった。二時間あまりあるのだが、退屈はしないとはいえ、徹底した史実の描写はしんどいというほかない。しかし、作品としては良質の一本だったと思います。

映画は、アフリカの原住民族の村、幼いネルソン・マンデラらしき子供のショットから、叙情的な描写を経て、成人し、弁護士となった彼に物語は続く。

白人との極端な差別的な取り扱いに必死で戦うネルソンの姿、そして、やがて、解放運動のリーダーとなっていき、結婚、離婚、投獄へと物語が展開していく。

彼の人生のほとんどが獄中生活のため、どうしても、収容所でのシーンが多いが、そこへ、巧みに挿入する妻ウィニーの行動する姿、子供たちのシーンが映画であることを認識させる。

徐々に武力衝突が激しくなり、為すすべもなっていく南アフリカ政府の対応は、行き着くところネルソン・マンデラを釈放し、平等な選挙を行い、結果として彼が大統領になるというところへ行かざるを得なくなる。そしてエンディング。

一方的にネルソン・マンデラ側から描かれた作品なので、白人は悪く黒人は良いとなるところだが、そこは史実として、過激になっていく黒人の姿も描き、人間の暴力に対する弱さもしっかりと描写したのは良かったと思う。
未だに解決していない南アフリカの問題であるが、その過渡期の物語として、そして、昨年亡くなったネルソン・マンデラへの畏敬も含め、意味のある一本ではないかと思います。