くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大いなる幻影」「青島要塞爆撃命令」「明治天皇と日露大戦

大いなる幻影

大いなる幻影
まったく、何十年ぶりかのスクリーンでの再見であでる。今更いうまでもない、ジャン・ルノワール監督の名作にした、映画史上の屈指の傑作と呼べる作品。

初めてみたときも、そうだったが、この作品の芸術性、クオリティの高さは、今回も具体的に理解できなかった。ただ、作品全体を貫く、隙のない完成度は、確かにすばらしいと思う。もちろん、才能がなせる、構図の美しさ、無駄のないストーリー展開で、進む物語、戦争映画だが、どこか醒めたような反戦思想を盛り込んだせりふの数々、そしてそこそこの娯楽性。これが屈指の傑作たるゆえんであるといわれれば、そうなのかもしれない。

物語は、単純、フランス軍の将校二人が、ドイツ上空で、撃墜され、不時着する。そしてフランス軍の捕虜となるが、主人公、マルシャルと捕虜収容所で知り合ったローゼンタールがスイスに脱走するまでを描く。

一つ一つのエピソードが、次々と無駄なく続くストーリーの組立のうまさ。二人が脱走して逃げるシーンの、屋外のまるで絵画のような構図、騎士道を重んじた中盤の物語の核など、その完成度はさすがにすばらしいと思う。とはいえ、私には高尚すぎるのだろうか。

ラスト近くのマルシャルとローゼンタールの「戦争がなくなるのは、おおいなる幻影にすぎないよ」という名せりふで締めくくるエンディングと、彼方に去っていく二人を見下ろす遠景のラストシーンは、まさに名シーンあろう。


「青島要塞爆撃命令」
第一次大戦を背景に描く戦争スペクタクルである。

見所は、なんといっても特技監督円谷英二の特撮。まぁ、私らの年代には見慣れたミニチュアワークであるが、やっぱり楽しい。

クライマックスのビスマルク要塞破壊シーンの、派手な爆薬効果と、船舶の砲撃戦、飛行シーンなど、CG全盛の今となってはちゃちなおもちゃのような映像ながら、これが本当の特撮であると楽しめる。

たわいない話を、たわいなく楽しむことができる映画が映画だった時代の一本でした。


明治天皇と日露大戦争
映画の本を読んでいて、日本映画の大作を語る中では必ず登場する一本がこの作品である。

日露戦争勃発直前から始まって、日本海海戦の大勝利で幕を閉じる物語で、常に明治天皇に物語の中心を残し、人間ドラマとしての様相を徹底しようとして描かれる。

スクリーンに天皇を具体的に写した最初の作品とされる一本。

もちろん、戦闘シーンは、見せ場とならざるを得ないし、特に引き立つような映像もあるわけではない。しかし、超大作としての貫禄のある一本で、映画が映画だった時代を見事に映し出している意味で必見の一本でした。