くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリよ、永遠に」

kurawan2015-03-10

パリよ、永遠に
名作戯曲を映画化したフォルカー・シュレンドルフ監督作品。第二次大戦が終盤を迎え、連合国軍がニルマンディ上陸した直後、フランスパリの爆破命令がヒトラーから下された。物語は、その命令の元、すべての建造物に爆薬が仕掛けられ、後は最終命令を待つだけになった日から始まる。

パリ防衛司令部のコルティッツはホテル・ル・ムーリスで最後の確認をしている。建築家が招かれ、爆薬のチェックを行い、すべて準備万端したところへ現れたのが、スウェーデン総領事ノルドリンク。このホテルのスイートルームには様々な隠し階段や仕掛けがあり、どこからでも入ってこれるのだと話を始めた彼は、コルティッツが下そうとする命令を阻止するべく説得を始める。

前半部分は、この説得シーンとなる。舞台劇なら二人の俳優の演技合戦になる見せ場である。映画はこの二人の迫真の演技の心理戦をしっかりととらえながら、時に、迫ってくる連合軍との戦いに対する緊張感を描き出し、息苦しいほどの緊迫感を生み出していく。

そして、コルティッツが危惧する、母国に残した家族の逃亡の段取りまで説明したノルドリンクを信じ、とうとう最後の命令を下す。それは「爆破中止」であった。

重苦しい緊迫感を生むドキュメンタリー映像を挿入し、連合軍の侵攻で逮捕されたコルティッツの背後で、なにもかも計算されていたノルドリンクのシーンがかぶってエンディング。

さすがにクライマックスの開放感を生み出す構成バランスのうまさは、オリジナルがしっかりしているためだろうが、終盤までの二人の演技も見事である。ただ、さすがに室内で息詰まる会話合戦は、食後すぐだと眠くなってしまった。

作品としてはなかなかの出来映えだが、心理戦を徹底する本編は、得手不得手がある一本だったかと思います。でも、いい映画です。