「SAINT LAURENT サンローラン」
モダンな色彩とシャープな映像で綴る、イヴ・サンローランの後半生の物語で、なかなかの長尺であるが、見ごたえのある秀作でした。
華やかなデザイナーの世界を描くというより、サンローランの人間ドラマという感じで、非常に奥が深い作りになっています。監督はベルトラン・ボネロです。
映画は1973年、ホテルにサンローランがやってきて、偽名で宿泊するシーンから始まります。ホテルの部屋で私のインタビューを許可するという電話をしているシーンから、時代が1967にさかのぼる。
すでに、デザイナーとして成功し、絶頂期を迎えたデザイナー、サンローラン。しかし、光り輝く彼の人生とは裏腹に、その忙しさゆえか、その裏に広がる影の人生。どの天才にもあり得るような、不安定な人生のひと時を、シャープで美しい映像とモダンな演出で見せていきます。
徹底的に美を追求する彼は、その信念ゆえにプレッシャーが彼を覆っていく。そして、孤独と苦悩の中で、ジャックとの恋を育むも、彼の傍に親しくいるのは一匹の犬だけ。
人間の物語なのに、まるで、画面全体が、美しい服飾の生地が舞うように展開し、赤と黒、ゴールド、などきらびやかな色彩演出が、かえって、冷たさをスクリーンに生み出していきます。
後半、長方形を並べたモダンな絵画に目を留めるサンローランの気持ちを表すように、終盤のファッションショーのシーンはスプリットイメージの画像になってくる。1987年、老年を迎えたサンローランの姿と、全盛期の彼の姿を交互に挿入しながらのクライマックスは圧巻。
やがて静かにベッドで息をひきとる彼のシーンに続き、ショーの楽屋でこちらをじっと見る若きサンローランのアップで暗転エンディング。
ため息が出るラストシーンに、この映画のクオリティのレベルをうかがわせる。見応え十分な秀作だった気がします。良かったです。
「007 スペクター」
素直に面白い。ダニエル・クレイグ版になってからの007は正統派スパイアクションとして大人の鑑賞に耐えられるから見事です。今回も、オープニングからエンディングまで全くだれない。それほど派手なシーンもないのに、どんどん引き込まれてしまう。監督はサム・メンデスである。
全世界の情報網を一つの組織で管理するという計画が発足し、あとは各組織の承認を得る段階になっている。その頂点に君臨する予定が、cとなり、そのまま00組織が解散するという流れに向かっている。
ところが、このCは悪の組織スペクターのボスとつながっていることを突き止めるジェームズ・ボンド。
こうして、世界の情報網を掌握しようとする陰謀を阻止するのが今回の物語。次々とピンチに見舞われながら、カーチェイス、ヘリコプターでのアクション、列車内での格闘など、見せ場が次々と用意され、ボンドガール、マドレーヌ役のレア・セドゥーがとってもキュートで可愛かったりと、見せてくれます。
もちろん、間一髪で敵の策略を食い止めてハッピーエンド。お決まりとはいえ、最後まで見せてくれました。