くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「硝子のジョニー 野獣のように見えて」「恐怖のまわり道」

kurawan2016-04-11

「硝子のジョニー 野獣のように見えて」
芦川いづみ特集の一本。蔵原惟繕監督のアクション映画の代表作である。単純なアクションというより、一人の女性を通じて二人の男が生身の女性に惚れていくというようなどこか魅了される秀作でした。

稚内の貧しい漁村、主人公の女みふねが秋本という人買いに連れて行かれるところから映画が始まる。みふねはその途中で、逃げ、飛び乗った電車で無賃乗車で捕まるところを、乗り合わせたジョーに助けられる。

みふねは、自分に歌を教えてくれた詩人が言っていたジョニーという男が、自分を助けに来ると、信じていて、ジョーのことをジョニーとして追いかけ回す。そして、とある競輪場までたどり着く。そこには一人の競輪選手を育てるために狂ったようになっている男がジョーがいた。

最初は、しつこく付きまとうみふねを疎ましくもていたジョーだが、次第に心が惹かれる。そんな時、贔屓にしていた競輪選手に金を要求され、その金を作るためにみふねを売ってしまう。

一方、みふねを追ってきた秋本は、行き場の無くなったみふねを捕まえ連れ戻そうとするが、列車に乗るところを、秋本を憎んでいる男に刺される。みふねは、もはや、拠り所の無くなったことで、秋本の看病を始める。しかし、秋本はあ、別れた女の素性をつかんだためみふねを捨てて去っていく。

次々と捨てられていくみふねは、母の待つ稚内へと一人線路を歩き始める。ところが着いてみると、母も出て行った後だった。絶望したみふねは海に向かって歩き始める。

一方、みふねのことが忘れられない秋本とジョー稚内へとみふねをおいかけてくるが、今一歩でみふねは海に消えていった。浜辺で叫ぶ二人のショットでエンディング。

芦川いづみのやや頭の足りないようなみふねのキャラクターが秀逸で、対する無骨な二人の男の存在と好対象に描かれるストーリーはなかなかのものである。木村威夫の美術を生かした構図も素晴らしい一本で、並のアクションと一線を画した秀作と呼べる一本でした。


「恐怖のまわり道」
監督はエドガー・G・ウルマーアメリカン・フィルムノワールB級映画の傑作とされる一本。非常にシンプルな話にサスペンスを詰め込んだ楽しめる一本でした。

一人の男が道をトボトボと歩いている。一軒のカフェに立ち寄り、これまでの数奇な経緯を語り始めて映画が始まる。

ピアニストだった彼はクラブでスーという女性と出会い恋に落ちる。スーがハリウッドにいるということで、ヒッチハイクをして会いに行こうとするのだが、たまたま乗せてもらったハスケルという男が、途中で突然死してしまって、運命が狂い始める。

男を放り出して車を盗み、そのまま走ろうとしたが、途中でハスケルの妻ベラを乗せてしまう。しかし、ベラは、このままうまく騙してハリウッドまで行こうという。しかも、ハスケルの父が死の床にあるという新聞記事を見て、息子になりすまして遺産を手に入れようと言い出すのだ。

モーテルでもみ合った末、男はベラを誤って殺してしまう。そこまで語った彼はゆっくりカフェを出る。目の前に泊まるパトカー、エンディング。

展開のスピーディさと、手際よいカメラワークと演出が見事な一本で、なるほど傑作と呼ぶにふさわしいサスペンス映画だったと思います。


「グレイト・フラマリオン」
アンソニー・マン監督初期の代表作。これも回想形式で描かれるサスペンスだが、面白かった。

映画はメキシコシティの芝居小屋に始まる。舞台が始まるが、突然銃声と悲鳴、自転車曲芸のコニーが殺され、夫のエディが疑われる。ところがここに一人の男フラマリオンが舞台の天井に登って身を潜めていた。人が引いて、舞台上に落下して一人の芸人に抱きかかえられながら、ことの顛末を語り始める。

ピストルで曲打ちをする芸を売りにしていたフラマリオンは助手のコニーと夫のアルとショーをしていた。しかしアルはいつも酒を飲んでいる。それを責めてコニーと話しているうちに、フラマリオンはコニーと恋仲になる。そして、コニーはフラマリオンに、ショーの途中でアルを殺すように計画を語る。そして二人になろうというのだ。ところが、ことが成就し、罪にも問われなかったフラマリオンが、シカゴでコニーを待ったが、待てど暮らせど来ない。

連絡をしてもコニーの居所がわからなくなる。ようやくメキシコシティで自転車乗りのエディと結婚したコニーを見つける。こうして、フラマリオンは、自分を裏切ったコニーに迫るが、コニーは逆にピストルでフラマリオンを撃つ。フラマリオンは最後の力でコニーを絞め殺し、冒頭のシーンへ。

男を手玉にする性悪女コニーに騙された人気芸人フラマリオンの人生の顛末を描く見事なサスペンス。これもまた秀作と呼べる一本でした。


「ミルドレッド・ピアース」
マイケル・カーティス監督が描くフィルムノワールの一本。光と影を多用した映像作りが面白い作品で、物語の展開が次々と視点が流れるために、妙に長く感じるものの、楽しめる作品でした。

映画は、いきなり一人の男、ベラゴンが撃たれるシーンに始まる。カットが変わると、主人公のミルドレッドが歩いている。橋から飛び降りようとするので止められ、ふらふら歩いていると、知人のウィルが呼び止める。そして一杯の酒を飲み、ミルドレッドはウィルを自宅に誘う。ところが、ミルドレッドが奥の部屋に消え、ウィルは閉じ込められる。そして、死体を発見する。

なんとか脱出したウィルはやってきた警官に連れられて警察署へ。そこでミルドレッドもいたが、なんと殺人犯人として名乗ってきたのはミルドレッドの元夫の バートだった。そこで、ミルドレッドは、自分が犯人だったと告白して、その経緯を回想していく。

バートと娘ヴィーダ、ケイトと暮らしていたが、夫婦仲は冷めていて夫も浮気をしているらしいことで、別居を決意。別れたものの、生活の為ウェイトレスをミルドレッドは始める。しかし、上流階級に執拗に憧れるヴィーダは母を見下し始める。

ところが、ウェイトレスの才能のあったミルドレッドは、みるみる成功し、レストランを開業する。その店の土地を提供したのが、名家のベラゴン、仲介したのがウィルだった。その過程で、ケイトは肺炎で亡くなったりと、エピソードも満載で、ウィルやベラゴンに言い寄られるミルドレッドの話、バートとの離婚の話など、詰め込みすぎと思えるほど、エピソードが散りばめられる。

階段や格子、人物の影を効果的に使ったサスペンスフルな映像がとにかく独創的で面白い。

そして、名家の名前だけのベラゴンは経済的に没落していき、ミルドレッドにたかるようになる一方、ヴィーダは異常なほどの浪費家で、しかも手段を選ばず金持ちの男たちに言い寄る。

結局、共同経営を条件にベラゴンと結婚したミルドレッドだが、ヴィーダが戻ってきたのもつかの間、店の経営が傾き、一方ベラゴンとヴィーダは男女の関係になる。

ヴィーダは勝手にベラゴンと結婚するつもりになり、それを拒まれたヴィーダはベラゴンを撃ち殺して冒頭のシーンになる。ヴィーダを溺愛するミルドレッドは、罪を被ろうとするも、警察は騙せず、ヴィーダは逮捕される。ミルドレッドに捨て台詞を残して収監されるヴィーダ。ミルドレッドはバートと警察署を出てエンディング。

長く感じるのは、その多すぎるエピソードと、中心がずれていくストーリー展開のせいだろう。確かに面白いのですが、今日見た3本の中では一番良くなかった。でも、はまるね、フィルムノワールは。