くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「若者のすべて」「皆さま、ごきげんよう」

kurawan2017-01-19

若者のすべて」(デジタル完全復元版)
3時間ほどの大作なのに、全くだれないし引き込まれてしまう迫力はさすがにルキノ・ヴィスコンティ監督の力量である。しかもエピソードの配分が抜群に素晴らしい脚本の力でもあるかと思います。40年ぶりに見直した傑作の再見、デジタル完全復元版です。

大都市ミラノに住む長男を頼って南部の田舎からやってきたが四人の男兄弟と母親。父の死の喪中ながら、長男は結婚を決め、母達の元を去って行く。一方次男シモーネはボクサーになるが、彼の練習場に行った三男のロッコもボクサーを始める。シモーネには愛するナディアという女性ができ、そのためボクシングをおろそかにし落ちぶれる一方、そんな兄をいたわるうちにナディアと親しくなるロッコ。それがさらにシモーネを落ちぶらせて行く。

展開は五人の兄弟の一人一人のエピソードを綴りながら、それに絡んで、都会に来たために次第にぎくしゃくしていく男兄弟の姿の寂しさと、それに苦しむ母親の姿を描いて行く。

四男は自動車会社に勤め、何かにつけ正義感で物事を判断するが、ロッコは寛容に兄の不始末さえなんとかしようとする。やがて、ロッコが試合でチャンピオンになった時、シモーネはナディアを刺し殺してしまう。四男が警察に届け、程なくしてシモーネは逮捕される。
映画は、そんな家族の姿を一番幼い五男の少年の姿で締めくくる。

都会に出て来た家族が、何かの歯車の狂いでバラバラになって行く中で、やはり家族の絆がどこかに感じられる物語、不思議なほどの人間味が溢れた画面にどんどんのめり込んで行ってしまいました。さすがに名作ですね。


「皆さま、ごきげんよう
非常に個性的な作品で、なんと感想しようか困ってしまいました。次々と起こるエピソードや事件が唐突で、一貫したストーリーが見えるわけではないのですが、何気なく関連付けされている。 まるで即興で物語が起こって流れて行く感じで、不思議な感覚にとらわれてしまいました。監督はオタール・イオセリアーニです。

中世でしょうか、ギロチンの動作を確認している場面に映画が始まります。そして一人の老人が処刑される。落ちた首を少女がもらいカゴにしまう。画面が変わると、戦争中、民家に軍人がやって来て略雑して去って行く。そして現代。

ローラースケートを履いた少女達が道行く人たちからものを奪っては仲間に手渡して行く。武器商人のアパート管理人と骸骨集めの趣味の人類学者の二人が物語の中心のようで、彼らの周りに覗きが趣味の警察署長や次々家を建てるホームレス、女性をナンパする若者が登場しては絡んでくる。

一癖も二癖もある人々や塀が突然ドアに変わるシュールな場面、何か意味があるのか連なって横断歩道を渡る犬、歩く人に足を突き出して転ばせる若者など、何か風刺じみたカットもふんだんに登場。
結局よくわからないままに人類学者と管理人がワインを飲んでエンディング。

ある意味癖になる作風でもありますが、結局一貫した物語をつかめないままに終わってしまった。まぁ、面白かったですがね。