くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」「赤いカリーナ」

kurawan2017-06-15

22年目の告白 私が殺人犯です
原案の韓国映画「殺人の告白」は韓国映画らしい幼稚さはあったものの突っ走るようなストーリー展開で一気にラストまで走り抜けるバイタリティのある作品でした。今回、日本映画になって、クオリティは抜群にアップした上に、緻密で二転三転のサスペンスの面白さを前面に出して、しかも芸達者を配置したしっかりしたドラマ作りが功を奏して、見事な映画に生まれ変わったという感じです。監督は入江悠です。

阪神淡路大震災のニュース映像から映画が始まる。時を同じくして、東京で連続絞殺事件が起こる。画面は過去の物語やニュース映像の時はパナビジョンサイズになり、本編ではフルスクリーンの横長の画面にするというこだわりで展開していく。

絞殺事件は犯人の目星がつかないままに時効を迎えようとしていた。事件を当時担当していた牧村刑事は今日も一人のチンピラを追いかけていたが、本部からの呼び出しで戻ってくる。そこではあ、刑事たちがテレビを見ていた。22年前の殺人事件の犯人が今から記者会見をするというのである。そして、その手記が出版されたのだ。

みるみる世間の話題をさらっていく犯人の曾根崎。彼の手口は、近親者の目の前で絞殺し、目撃者を決して殺さないというものだったため、その目撃者たちが名乗り出た曾根崎の命を狙ってくる。しかし牧村はそれを執拗なまでに阻止する
やがて見えてくる真実。映画はどんどん表向きのサスペンスから深みへと沈んでいく。韓国版と根本的に違う部分がこの深淵に落ちていくような脚色のうまさである。

オリジナル版を知っているので、大体の展開は読めているものの、見えてくる深淵とさりげない伏線がどんどん映画を面白くしていく。

五人目の被害者が牧村であったのだが、先に牧村の部屋に踏み込んだ先輩刑事が殉職したことで、曾根崎は連続殺人をやめたのだという理由づけもしっかりしている。

そして、テレビの生出演を望む曾根崎に、人気ニュースキャスター仙堂が名乗りを上げてくる。そして、緊張感が走るテレビ放映が行われるが、そこに、新たな真犯人が名乗りを上げてくる。

牧村、曾根崎を同時に出演させることを条件にやってきた覆面の真犯人。彼は牧村の妹里香を殺害する映像を持参し自分こそ真犯人だと証明する。その姿に思わず曾根崎が襲いかかる。なんと曾根崎は実は牧村の妹の婚約者小野寺拓己が顔を変えた姿だった。

拓己は里香がいなくなったことで牧村の目の前で自殺を図り飛び降りるが命が助かり、牧村とともに真犯人を追い詰める決意をしていたのである。

ところが真犯人と名乗り出てきたのも実はネットで頼まれただけの偽物とわかる。一瞬白紙に戻ったかと思われたが、この放送で、曾根崎は真犯人の糸口を掴んでしまった。

実は真犯人は、当時、戦場で拉致されたものの奇跡的に日本にもどり、絞殺事件の記事で有名になった新聞記者で今回のキャスター仙堂だったのである。

そして、仙道が別荘で密着取材を受けている現場に曾根崎が登場、船頭に襲いかかる。しかし、里香が殺されたのは時効廃止が決定される法案が適用される深夜明けであることがわかり、牧村は仙堂を逮捕することを曾根崎に訴え、仙堂は逮捕され、心神喪失ということで病院におくられる。

旅立つ曾根崎を見送る牧村。暗転、エンドクレジット。
しかし、船頭を病院で一人の男が襲いかかる。冒頭のチンピラで、実は絞殺事件で殺された女性の息子だった。そしてエンドクレジット。

なるほど最後の最後までしっかり作られている。
ここまで念入りに仕上げられると、拍手せざるを得ない。映像演出も見事にできているし、大きく大胆なカメラワークも見事。なかなかの傑作サスペンスに仕上がっていたと思います。
面白かった。


「赤いカリーナ」
物語が今ひとつわかりづらいのと、向かうべき方向が見えなくて、ちょっとしんどかった。カメラもじっと据えてるのと長回しに意味が見えない。ロシア映画として珍しいから見に行ったが、まぁ、普通の映画だった。監督はワシーリ・シュクシンという人。

主人公のエゴールが5年の刑期を終えて刑務所を出てくるところから映画が始まる。彼は田舎に戻り、落ち着いた生活をしようとするが、地元の人々の態度は冷たく、彼に手を貸してくれたのは、獄中で文通をしていた女性のリューバだった。

しかし、彼の周りに近づいてくるのは、かつての仲間たちで、なんとか決別しようとするエゴールの姿と、彼に寄り添うリューバの物語が淡々と描かれていく。

結局、最後はエゴールは仲間に殺されてしまってエンディングになる。
たわいのない物語だが、見終わって思い返せばそれなりの出来栄えになっていた気もする。
ただ、しんどかったことは確かな一本でした。