「蜘蛛の巣を払う女」
ミレニアムシリーズ第4作目。これは相当に面白かった。スピーディな演出と、ハッキングを手際よく処理したテンポの良さ、あきさせなく次々とスピーディに展開するストーリー、謎が謎を呼んでいく構成。絶品の娯楽映画でした。監督はフェデ・アルバレス。
リスベットの幼き日、妹のカミラとチェスをしている場面から映画が始まる。父が二人を呼ぶが、いかがわしいことをしようとしているのが見えていて、リスベットは、逃げ出し、かなり下の雪の中に飛び降りて逃げる。一人残されるカミラ。
時が経つ。一軒のセレブの屋敷、DVの夫が妻に暴力を振るっている。そこに何者かが現れ夫を宙吊りにし、口座の金をかつて虐待した女二人と妻に送金させ去っていく。悪を正す女として有名になっているリスベットの今の姿だった。
そんな彼女に新しいハッキングの仕事が来る。アメリカで開発された、世界中の核兵器を統括できるプログラムを開発したバルデルが、自分のプログラムを政府の管理下にされたとして、盗むよう依頼があったのだ。
早速ハッキングのテクニックを駆使し、リスベットは盗むのだが、別の組織がリスベットが盗むのを待っていた。そしてリスベットを襲い、プログラムを奪う。奪った組織はカミラという女が率いるスパイダースという組織で、実は、リスベットらの父は裏社会の大物で父の跡を継いだカミラがスパイダースと名乗っていたのだ。
リスベットは、このプログラムを奪還しようと、ミカエルに助けを求め、敵のアジトへ向かう。しかし、バルデル教授も殺され、プログラムを開く暗号を知るバルデルの息子が拉致されてしまう。そして、カミラらが向かった先はかつての家だった。
リスベットは、ミカエルや仲間と、かつての屋敷に向かい最後の決戦となる。次々とピンチになっては、そのピンチをくぐり抜けてさらに次の展開へ進むスピード感あふれる演出の面白さでクライマックスまでほとんど息つく暇もない。また、ミカエルに再会する場面は向かい合ったビルのエレベーターであったり、警察を巻くために、凍った湖の氷の上をバイクで疾走したりと、北欧の空気感や映画的な空間を多用した演出も見事。
一人、プログラムを持って逃げたカミラを追ってリスベットが対峙するが、カミラは負傷していて自ら崖下に身を投げる。アメリカからプログラムを取り戻しに来た男がパソコンを開くと、ファイルは全て消去されてしまう。
ストーリーがよく整理されているので、次々と展開が変わっても、また人物関係が説明されても全然混乱しない。娯楽映画としては一級品に近い仕上がりになっていますが、もう一歩カミラの悪人ぶりが際立てば傑作に仕上がったろうと思います。でもかなり面白かったです。
「大時計」
シリアスな殺人事件の話なのにコミカルな展開であれよあれよと綴っていく様は、なかなかの一品。監督はジョン・ファロー。
ある出版社、一人の男が脱出しようとしているが、できないというひとり語りから映画が始まる。典型的なフィルムノワールである。
出版社の生え抜き社員ジョージは、社長のジャニスからこき使われ、新婚旅行さえもできないままになっている。やっと、家族と旅行をしようとチケットを買ったのに、うまく丸め込まれそうになるジョージ。しかも仕事を拒んだら首だという強権を出す。そんなジョージに一人の女ポーリーンが近づく。実は彼女はジャニスの愛人だった。
バーで酒を飲んだポーリーンとジョージだが、酔っ払ったジョージはポーリーンの部屋で眠ってしまう。そこへ、ジャニスがやってきたのでジョージは慌てて逃げ出す。
ジャニスはポーリーンとの別れ話で口喧嘩になり誤って殺してしまう。ジャニスの殺しをなんとか隠蔽しようと局長のスティーブを呼び、一案を思いつく。
ジャニスがやってきた時、慌てて出て行った男を犯人にしてしまおうというのだ。そして、犯人探しをしてスクープを物にしてきたジョージに依頼、犯人探しを始めるジャニス。ところが、殺人の日にポーリーンと一緒にいた男を見たという骨董屋が、たまたま出版社でその男つまりジョージを見たとジャニスに言ったため、会社内を捜索する命令を出すジャニス。
ジョージは真犯人探しをしに、脱出することができなくなり、右往左往しながらも、ポーリーンに貸したハンカチをスティーブの机で発見、彼を犯人に指摘すれば、真犯人がわかると判断する。そして警部の前で問い詰めたところ、ジャニスは、スティーブに、身代わりに犯人になってくれというようなそぶりをしたのでスティーブは、真犯人はジャニスだと告白する。
ジャニスは、スティーブを銃で撃って逃げるが、ショージが途中で止めていたエレベーターのドアから中に入り、落下して死んでしまう。
クライマックスは、かなりのシリアスだが、途中の捜索劇はかなりコミカルな装いになっている。楽しめるサスペンスという典型的な映画だった。
「Tメン」
奥の深い構図と手前のシーンを重ねた画面など、絵作りが抜群に素晴らしい上に、ドキュメンタリータッチのリアリティ溢れるストーリー展開が絶品のサスペンス映画の傑作でした。監督はアンソニー・マン。
偽札などの摘発をする財務省の捜査官Tメンの活躍を描く。
アル・カポネ以来の脱税、偽札組織が蔓延してきているという状況に中で、財務省は二人の潜入捜査官を黒幕らしい組織に送り込む。物語は次第に組織のボスに近づいていく過程を迫真の展開で見せていく。
手前に会話する人物を配置し、画面中央の奥に向かって映像を組み込んだ構図や、大胆に配置した建物、乗り物など、スタンダード画面とは思えない様式にこだわった絵が素晴らしい。
実話を基にしているので、クライマックス、捜査官の一人は死んでしまうが、犯人逮捕に迫る財務官たちのドラマは、フィクションを彷彿とさせるものがあります。傑作といってもいい一本でした。