くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイル殺人事件」(ケネス・プラナー監督版)

ナイル殺人事件

久しぶりにミステリー大作というのを堪能しました。面白かった。前半三分の一の観光映画のような出だしから中盤の愛憎劇と殺人事件、そして終盤、一気に謎が解決する三段仕立ての構成もわかりやすいし、娯楽映画として完成されています。ドローンを使った壮大なエジプトの景色も豪快だし、いかにもな贅沢な映像が大作らしさを漂わせて、これこそエンタメ映画と満足させてくれた。犯人は前作の記憶を頭のどこかから思い出して、最初の辺りでわかってしまいましたが、それでも面白かった。監督はケネス・プラナー

 

1914年ベルギー、イゼール橋、塹壕を縫うようにカメラが進むと、これから敵に突入すると言う命令が大尉に届く。突入のタイミングをポワロ中尉が進言し、味方の損害を最小限に作戦が成功するが、敵の罠によって大尉は死んでしまう。病棟で、愛するカトリーヌの見舞いを受けたポワロだが、頬に大怪我を負っていて、カトリーヌの勧めで髭を生やすことになる。ここまでがモノクロームである。そして時は1937年へ移る。

 

大富豪リネットのパーティ、ポワロはサロメのブルースを聞いている。そこへジャクリーンという女性がフィアンセのサイモンと現れ、ジャクリーンは友人のリネットをサイモンに紹介するが、すぐに二人が意気投合したことに気がついてしまう。そして六ヶ月後、エジプトのスフィンクスの前でポワロがティーを楽しんでいると、友人のブークが凧を上げているのに出くわし、懐かしい再会をする。

 

やがて、リネットの新婚旅行のパーティに招かれたポワロだが、リネットの結婚相手はサイモンだった。そこへ、リネットを責めるかのようにジャクリーンが登場、その場は険悪なムードになる。何かにつけて付け回して来るジャクリーンにリネットは恐怖さえ覚え、ポワロに助けを求めるが、事件になっていないとポワロは相手にせず、その代わり、ジャクリーンにさりげなく説得をする。

 

リネットの提案もあり、友人だけを乗せて一艘の船を借りナイル川クルーズに出ることになる。そして、ラムセス二世の神殿に立ち寄るが、そこで、サイモンとリネットの上に石が落ちてきて、危うく命を落としそうになる。そこへあとからジャクリーンも乗り込んでくる。ひと時の新婚旅行楽しむサイモンとリネットだが、ジャクリーンが乗り込んできたので、二人は船を降りることを決める。

 

ところがその夜、サイモンはジャクリーンを非難し、逆上したジャクリーンは持っていた銃でサイモンの足を撃ってしまう。大騒ぎする船内の乗客たちだが、ジャクリーンの銃がいつの間にか消えていた。ブークはサロメの妹ロザリーと恋仲だったが、ブークの母は反対でロザリーの人柄をポワロに見極めてもらうために呼んでいた。

 

一夜が明け、リネットの付き人ルイーズが部屋に入るとなんとリネットはベッドでこめかみを撃たれ死んでいた。早速ポワロは捜査を開始する。リネットの資産管理人のアンドリューやリネットをかつて愛していたドクターなど船内の客全てが犯人になる可能性があった。そんな中、犯人を見たかもしれないとポワロに告白したルイーズがメスで殺されてしまう。ドクターに嫌疑がかかるが、アリバイがあった。ポワロはサイモンを立会人にしてブークを問い詰めていた。

 

リネットのネックレスが消えていてその犯人はブークではないかと怪しんだのだ。そして問い詰める内、ブークはルイーズを殺した犯人を目撃したかの供述へ進む。ところが突然、銃声がしてブークは殺されてしまう。ポワロは必死で追うが犯人を逃してしまう。そしてついに、全ての真実が分かったポワロは、船室に全員を集め、銃を構えて、真犯人を明かす。

 

真犯人はサイモン、そしてジャクリーンだった。サイモンはリネットと結婚したもののそれは財産目当てで、今もジャクリーンを愛していた。ジャクリーンとの狂言でジャクリーンに撃たれたふりをしたサイモンはジャクリーンの銃でリネットを撃つ。そに直後、ブークがリネットの部屋に入り、ネックレスを盗む。ネックレスがあればロザリーとの仲を母に許してもらえると思ったためだが、それがバレそうになって母に宝石箱に隠す。さらに、ルイーズにサイモンが見られ、ルイーズに脅されたサイモンは、ドクターのメスでジャクリーンにルイーズを殺させるが、その現場をブークに見られてしまった。そこで、サイモンはジャクリーンにブークを殺すように指示する。

 

最初の狂言で自分への疑いの目を背けていたサイモンだが、全ての真実をポワロに暴かれてしまう。ジャクリーンは自身の銃をポワロに向けるが、乗客の銃がジャクリーンに向けられる。ジャクリーンはサイモンを抱きしめ、サイモンの背中から銃を放ち二人とも銃弾につら抜かれて絶命する。半年後、ロンドンでサロメの舞台を見るポワロの姿があった。ポワロの口元に髭はなかった。こうして映画は終わる。

 

非常にわかりやすい脚本に整理されていて、娯楽大作として本当に楽しめる作品になっていました。小難しい解釈の必要のない本来の映画が果たす役割をきっちり果たしたエンターテイメントでした。確かに、人間ドラマの部分やポワロに過去からの苦悩など、描ききれない弱さも見られますが、それはさておいても、娯楽としての映画の本当の姿は仕上がっていると思います。