くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「チャンス」「犯罪河岸」

「チャンス」

数十年ぶりの再見。ほとんど展開は覚えていなかったが、淡々と進むファンタジーは流石に名作ですね。全盛期に近いピーター・セラーズが素晴らしい。監督はハル・アシュビー

 

主人公チャンスがテレビを見ている。そこへメイドのルイスがやってきて、主人が死んだという。それでも、表情も変えない。果たして彼は何者か?後日やってきたのは、弁護士で、この屋敷は閉鎖するから出ていけというし、ルイスも出て行ってしまう。

 

一人街に出たチャンスは、ショーウィンドウのテレビを見ていて車と接触する。車に乗っていたのは大富豪で大統領とも友人の夫を持つイブだった。あれよあれよとイブの屋敷に住むことになったチャンスは、訪ねてきた大統領に庭の話をしていいように解釈され感銘を受けられる。

 

こうして、ストレートに思いつくままに語るチャンスは一躍世間で有名になってしまう。しかし、その素性は何の資料もなく困惑する大統領達。

 

すっかり彼に惚れ込んだイブの夫は自分が余命いくばくもないことを悟り、愛するイブをチャンスに任せる決意をし、思い残すこともなく死を迎え入れる。

 

葬儀の場で、チャンスはいつの間にか消え、一人池の上を歩いて行って映画が終わる。果たしてチャンスは何者だったのかはわからないまま映画が終わるが、表情をほとんど変えないピーター・セラーズの演技が素晴らしい。不思議なファンタジーですが、作品全体の空気感に気持ちが安らぐ、そんな作品でした。

 

「犯罪河岸」

監督はアンリ・ジョルジュ・クルーゾー。さすがに映画づくりを心得た監督らしい無駄のない、そして絵作りで畳み掛ける傑作でした。

 

歌手のジェニーが歌っている。彼女の膝に手を乗せて調子よく歌う老人に嫉妬する男は夫のモーリスである。ジェニーはそんな夫が疎ましいが愛している。

 

そんな彼女に、女好きの映画会社の社長ブリニョンが、映画出演の話を持ってくる。大反対するモーリスだが、ジェニーは祖母の病院に行くと嘘をついてブリニョンのところへ向かう。怪しいと思ったモーリスは、待ち合わせ場所をたまたま見つけそこへ駆けつける。ところがそこにはジェニーはいなくてブリニョンの死体があった。

 

てっきり、ジェニーが殺したと思うモーリス。実はジェニーはブリニョンに襲われとっさにワインの瓶で殴ったのだ。そのことを友達に告白するのだが、一方のモーリスは妻が捕まらないように奔走し始める。そんな行動が逆に警察が怪しむことになり、執拗に警部がモーリスの前に立ちはだかる。

 

次第にモーリスに犯人の嫌疑がかかり始め、警部はさらに手厳しく追い詰めていくが、さらにモーリス本人を追い詰めていく。そして、とうとう収監される。そして、そこで自殺未遂をするモーリス。それを聞いたジェニーは、ブリニョンのところへ行ったことを告白しに警察へ行く。一方、別件で捕まっていた一人の男に目星をつけていた警部が、最後の追い込みをかけ、ブリニョン殺しを白状させる。

 

そしてモーリスとジェニは晴れて自宅に戻る。さりげない警部のワンシーンが微笑ましいエンディングとなり映画が終わる。この辺りが実にうまい。自殺を知ったジェニーの友達がすっと立つ背後の窓に見える雪のシーンなども絵作りの上手さを見せつけてくれます。

 

なかなかの一品、こういうクオリティの高い映画らしい映画を見ると、つくづくセンスのあるなしが作品を決めるなと思います。