くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「新宿馬鹿物語」「パラレル・マザーズ」「ヒューマン・ボイス」

「新宿馬鹿物語」

可もなく不可もない、たわいない人情コメディで、新宿歌舞伎町のバーで繰り広げられるてんこ盛りのエピソードが芸達者な役者たちによって淡々と展開する様は実に面白い。監督は渡辺裕介、脚本は神代辰巳

 

第二次大戦開始間も無くの時代、主人公仙田の子供時代、モノクロスタンダードで、慕う姉のズロースを拝借して河原で戯れる姿から映画は始まる。姉に追い回され、母にお灸を据えられる。しかし、大人になっても姉は仙田にとってヒロインだった。場面が戦後に変わると一人のヤクザ者水田が邦子とすれ違う。背後から刑事がつけていて、邦子に指輪を捨てるように指示、直後逮捕される。邦子は指輪を捨てるが、間も無く雨が降って来る。水田は宝石泥棒、邦子はその運び屋だった。

 

新宿歌舞伎町でバールヰの雇われマスターとなった仙田は、朝、目が覚めて、雨宿りをしていたクラブ馬酔木の邦子と出会う。部屋に招いて、コーヒーを御馳走して雨が上がるまで一緒にいる。

 

邦子と仙田はそれから頻繁に出会うようになる。仙田は幼い頃からの癖で、トイレの中で姉と会話する習慣があった。仙田は邦子とどんどん親しくなり、やがて体を合わせる仲になる。そんな仙田の店では、バレリーナを目指していたホステスがピアニストの男と漫才師になりと言い出すし、ヤラセという噂のたったホステスが実は店のオーナー野本の母親で、六十を超えているのに若さが衰えないと相談されたりする。仙田は邦子を連れて田舎に帰り、姉に紹介しようするが、姉はヤクザ者と寂れた居酒屋をしていてショックを受ける。

 

そんな時、仙田が世話になったママの娘が内ゲバの抗争で逃げてバールヰに匿ってもらう。仙田は、かつて恩義を受けたメンバーを集めてその娘を匿ってやり、もう大丈夫かと、邦子と外に出たところを襲われ大怪我を負う。そしてしばらくして、出所してきた水田と一緒に邦子は仙田のマンショを訪れる。実は水田と邦子は夫婦だった。仙田はショックを隠して大見えを切って邦子らを追い返す。そして、いつもの毎日に戻った仙田が夜の新宿を歩く姿で映画は終わる。

 

たわいないながらも、層の厚い役者たちによるさまざまなエピソードに味があって、まさに黄金期の日本映画の底力を見せられる映画でした。

 

「パラレル・マザーズ

子供を取り違えた母親同士のドラマとスペイン内戦で曽祖父の遺体を発掘するという流れがどう結びつくのか、はっきり掴めない映画だった。予備知識なしで見たせいかもしれないが、内戦についての知識がないために、理解の範疇を超えている感じでした。要するに過去の汚点であるスペイン内戦問題を隠している国のあり方と子供の取り違いを隠すかどうかという話をオーバーラップさせたのだと思うが、それはどうなんだろうという感じです。ただ、いつものように、赤を基調にしたスタイリッシュな画面と美術は見ていて心地よい。監督はペドロ・アルモドバル

 

フォトグラファーのジャニスが、考古学者のアルトゥロの写真を撮っている場面から映画は始まる。二人は恋人同士だが、アルトゥロには妻がいた。アルトゥロにジャニスは曽祖父がスペイン内戦の折に強制拉致され殺戮された遺体を発掘することを依頼していたが、国の許可が降りていなかった。ジャニスとアルトゥロはこの日愛しあい、妊娠する。

 

陣痛が始まり、同室のアナと一緒に出産することになったジャニスは、女の子を出産する。当初出産に反対して、結局ジャニスはアルトゥロと別れシングルマザーとなっていた。ジャニスはセシリアを、アナはアニタを出産、それぞれ連絡しあって親しくなる。アルトゥロもセシリアを可愛らしく思い始め何度か会いにくるが、自分に似ていないという。その言葉が気になったジャニスはDNA検査をする。

 

その結果、ジャニスとセシリアに親子関係がないことがわかる。アナの子供と入れ替わったと推測したジャニスはアナとの連絡を断つが、しばらくして、カフェで働くアナと再会する。しかもアニタは突然死で亡くなっていた。ジャニスはアナをセシリアのベビーシッターとして雇うことにし、一緒に暮らし始める。やがて、アナとジャニスは愛し合うようになる。

 

そんな頃、アルトゥロから、曽祖父らの遺体発掘の許可が降りたと連絡が入る。ジャニスはアナに真実を話していない罪悪感が募り始める。アナと同居し始めた頃、アナのDNAを採取し、セシリアとの親子関係を調べて二人は親子だと確認していた。ジャニスはある夜、ついにアナに真実を話すが、アナは、そのことに憤り、セシリアを連れてジャニスの家を出て行ってしまう。

 

しばらくして、アナとジャニスの心が落ち着き、二人の関係は修復される。そして、ジャニス、アナ、アルトゥロは、ジャニスの曽祖父の遺体発掘に向かう。そして、穴に埋められたジャニスの先祖の人々の遺骨を発掘、ジャニスの親戚一同が、その穴に体を横たえ、殺戮された様子を映像として見せる場面で映画は終わる。

 

アナの娘アニタの父親のエピソードや、ジャニスとアルトゥロのエピソード、娘をとりちがえたエピソードからスペイン内戦の歴史などなどがうまくつながらなくて自分の知識不足が情けないと実感する映画だったが、一方で、ペドロ・アルモドバルのスタイリッシュな映像を楽しめる一本でした。

 

「ヒューマン・ボイス」

去った恋人を待つ三日間の物語を、女性の一人芝居で見せる短編映画ですが、舞台セットのような書き割りの室内と美しい画面が凝縮され、主演のティルダ・スウィントンの熱演に引き込まれる作品でした。監督はペドロ・アルモドバル

 

真っ赤なドレスを着た一人の女性が、倉庫でしょうか広い建物内を歩いている。カットが変わると黒い服になり。どうやら喪服のようでもある。そしてタイトル。

 

真っ青なスーツを着た女性がホームセンターにやってきて、斧とガソリンを購入する。傍にはダッシュという名の犬がいる。家に帰った女はベッドの上の黒いスーツを斧でめった裂きにするが、犬はそのスーツに愛着があるようである。どうやらこの女性の恋人の服らしく、犬は出ていった恋人を今も慕っている様子である。カメラが大きく俯瞰すると、女が歩き回っているのはスタジオ内に造られた部屋のセットらしく、パネルの骨組みが見え、天井は開いている。

 

女は三日前に出て行った恋人を待っていて、大量の薬を飲んでベッドに横たわる。そこへ電話がなる。最初気がつかず、慌ててスマホを開くと非通知でガッカリするが、間も無くまた電話がかかる。相手は出て行った恋人で、女は三日間何も食べていないのだなどという。ホセという人物に荷物を引き取りに向かわせると連絡して来ているようだが、女は電話だけで別れたくないと話す。しかし、相手の男は受け入れる様子もないようで、女は宥めようとするが相手の態度に変化がないのを察知し、部屋中にガソリンを撒き火をつけ、元恋人にベランダからこちらを見てほしいと電話で言ってスマホを捨てる。消防車がやってきて、入れ違いに女はスタジオを後にするが、犬のダッシュに、これからは私があなたの主人だと告げ、男を葬ったと呟く。こうして映画は終わる。

 

電話だけで延々と描く会話劇で、セットのような室内を縦横無尽に移動しながらひたすら元恋人とやり取りをするのはなかなか面白い。室内の調度品は流石に趣味の良いおしゃれなものが散りばめられ、30分作品ながら楽しめました。