くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「骨」「博士と狂人」

「骨」

しんどかった。暗い画面と、人間関係の描写や台詞がない上に、男か女か区別がつかない役者の容貌に、前半は全然物語が掴めなたった。終盤でなんとなく見えてきたものの、よくわからないままに終わってしまった。監督はペドロ・コスタ

 

一人の女?が階段を降りてくるカットからタイトルへ。そしてティナという少女に赤ん坊がいて、父親と思われる男性に押し付けるかのような展開へ。そして父親らしい男は赤ん坊を抱いて街頭で物乞いをする。一人の看護婦エドアルダと知り合い、パンとミルクを与えられる。父親はパンを食べながら、赤ん坊に口移しでミルクらしいものを与えるが、突然病院のカットへ。どうやらミルクが古かったのか。

 

ティナの隣人クロチルドは家政婦をしている。たまたま、クロチルドの体調が悪く、代わりにティナが家政婦としてエドアルダの家に行く。しかしガスをつけて眠ってしまい、エドアルダに助けられる。その上、ティナの夫に会ってしまう。

 

いずれにせよよくわからない展開が暗い画面で続いて行く。スラム街に住む人々の厳しい生活の姿を圧倒的なリアリティで描いて行くのですが、結局なんの出口も見えないままに映画は終わるので、ただしんどいだけの印象でした。

 

「博士と狂人」

もっと地味な映画かと思っていましたが、なかなかどうして、サスペンスフルな前半、奥の深い人間ドラマになる中盤、そして、手際良すぎる気持ちするけれど心地よい終盤としっかりできた良質の作品でした。発行まで70年を費やしたというオックスフォード英語大辞典誕生秘話。監督はファラド・サフィニア

 

学士号も持たず貧しい家で育ったが、独学でさまざまな言語に秀でた知識を身につけたマレーは、オックスフォード大学が企画する英語辞典の編纂を任されることになる。彼を推挙したのはオックスフォード大学の理事の一人フレディだった。マレーは、膨大な資料を集めるために出版されているすべての本に、ボランティアでの協力を求める文書を挟み込む。

 

ここに、従軍時代に行った所業に罪悪感を持ち、幻覚で自分を襲う何者かに怯える外科医のマイナーは、この日、一人の男をその幻覚と勘違いし撃ち殺してしまう。そして彼は、精神異常として刑事病院へ収監される。たまたま看守の一人が大怪我を負うことになり、危うく一命を失うところをマイナーに助けられる。看守長のマンシーの信頼を得て、日々の生活を優遇されるようになる。そんなある時、クリスマスプレゼントに貰った本に挟まれていた、辞典ボランティアの紙に触発され、千枚に及ぶメモをマレーに送る。

 

一部の言葉に出口が見つからず途方に暮れていたマレーはマイナーからのメモでようやく編纂が前に進む。ボランティアに参加するようになり、幻覚を見なくなって行くマイナー博士は、兼ねてから殺害した男の妻メレット夫人に金銭的な援助を申し出ていて、メレット夫人から頑なに断られていたが、マイナーからの熱意にマイナーの元を訪れ、援助に同意する。

 

こうして、マイナーは次第に快復していく一方、マレーの辞典編纂もどんどん前に進み、やがて第一巻が完成する。マイナーとメレット夫人との交流も進み、次第に二人の間に愛が芽生えてくる。そしてメレット夫人は子供たちを連れてマイナーのもとを訪れるが、長女はマイナーの頬を殴る。かすかにメレット夫人に愛を感じ始めていたマイナーは再び罪悪に苛まれ、幻覚を見、自らを傷つける。そして、病院長から、症状の悪化による新しい治療を受けることになる。それは拷問に近いものだった。

 

マイナーからのメモが滞り、面会に行っても会えなくなるマレーは、マンシーの計らいで強引にマイナーに遭うが、そこには廃人のようになったマイナーがいた。マレーはなんとか彼を救い出すべく画策し始める。そしてメレット夫人に合わせることに成功し、意識を取り戻したマイナーを、再度聴聞会にかけて釈放することを考える。そこに尽力したのは、マレーの支持者でもあるフレディだった。

 

しかし、聴聞会での判事たちの判定は厳しく、釈放は困難であった。それでも諦めないマレーにフレディは強硬な手段を提案する。それは時の内務大臣ウィンストン・チャーチルに直談判することだった。そして強引に面会したマレーにチャーチルは国外追放による釈放という指示を出す。

 

こうしてマイナーは母国アメリカへの追放により釈放されることになり、マレーは引き続き辞書の編纂を進めることになって映画は終わる。終盤、若干雑な脚本になっていますが、しっかりと描かれた人間ドラマで見応えがありました。