くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「夏への扉 キミのいる未来へ」

夏への扉 キミにいる未来へ」

今まで映像化されていなかったのが不思議な、あまりにも有名なロバート・A・ハインラインの名作SFの映画化。不安だらけで見にきた。結果は、原作がいかに素晴らしいのかを再確認することになる程、忠実に、悪く言えば無難に、それでも見事に映像として仕上げていたと思います。物語の展開も原作を知っているとは言え面白かったし、ラストシーンも胸が熱くなりました。不安だった猫の扱いもちゃんと物語に彩りを添えていたと思います。監督は三木孝浩。

 

波打ち際、一人の少女が立っていてタイトル、そしてある研究所で一人研究をする主人公高倉宗一郎の姿となる。彼の両親は幼い頃相次いで亡くなり、亡き父の親友松下に引き取られて育った。松下には璃子という娘がいて宗一郎と璃子は兄妹のように育つ。しかし松下夫婦が事故で急死、璃子は叔父である松下和人の元で高校生となる。一方宗一郎は松下の跡を継いで和人と共同経営者の立場となる。ここまでを一気に映像で見せて物語は本編へ。

 

宗一郎は、ヒューマノイドの開発とほぼ永久に電源を供給できるプラズマ蓄電池の開発の大詰めとなっていた。そんな宗一郎を璃子は密かに慕っていたが、いかんせんまだ高校生、宗一郎は女性として璃子を見れない一方、和人の秘書でもある白石鈴という恋人がいた。この日、晩の食事を作るという璃子のとこへ白石が現れる。璃子はさりげなく帰るが、白石は以前から宗一郎から会社の株の半分を譲渡してもらうという話があった。それは結婚に絡めてのことでもあった。

 

ところが後日、宗一郎が会社に行くと和人が突然取締役会を開くといい、その場で、宗一郎が開発したロボットの権利をマネックスという会社に譲渡して傘下に入る案を提案する。そして、白石も先日宗一郎から株式を譲られていたことから決定権を持つことになり、しかも和人に賛成をする。

 

裏切られたと考えた宗一郎は、自分の研究所へ急ぐが、時すでに遅く、全ての資料は持ち去られていた。落胆する宗一郎だが、先日見つけたコールドスリープの案内を見つけ、30年後までコールドスリープする事を決意し、手持ちの株を璃子に将来譲るという契約と、30年のコールドスリープ契約をする。ところが、自暴自棄でアルコールが入っていた宗一郎は、その日コールドスリープに入れず翌日に持ち越すことになる。少し冷静になった宗一郎は、マスコミを使って今回の事を公にし和人の会社の信用を失墜させるという考えを思いつき、和人の家にやって来る。

 

その少し前、たまたま和人の家に戻ってきた璃子は和人と白石が、今回の計画の今後を話しているのを聞き、慌てて宗一郎の研究所へ向かう。璃子に話を聞かれた和人は璃子を追う。そこへ宗一郎がやってきて白石に詰め寄るが、白石は和人が普段使っていた糖尿病のインシュリン注射を宗一郎に打ち、気を失わせる。宗一郎の持っていた鞄を開けるとピートが入っていて、白石はピートに引っかかれる。さらに宗一郎が乗ってきたトラックは何者かが運転して去っていく。

 

一方、宗一郎の研究所に着いた璃子の前にトラックが止まり、中から誰かが出て来る。そんな頃、宗一郎は白石が以前勤めていたマネックス系列のコールドスリープ会社の施設で無理やりコールドスリープさせられてしまう。

 

そして時は30年後、2025年、コールドスリープの会社アラジンで目覚めた宗一郎は、璃子に渡したはずの株券の行方などを追うために施設を抜け出そうとするが、そこへ、ヒューマノイドのピートが現れる。それは宗一郎が開発したロボットの発展型だった。

 

宗一郎は、コールドスリープの間何度も連絡があった住所へ行ってみると、そこには落ちぶれた白石の姿があった。あれから和人は病気で亡くなり、会社は吸収され、マネックス経理不正で倒産したのだという。さらに璃子も宗一郎の研究所の爆発事故で死んだと知らされる。

 

宗一郎は璃子に渡すはずだった株券の行方を探し、坪井強太という経営者にたどり着く。彼は子供の頃、宗一郎に実家の食堂で会ったと言う。そして宗一郎は遠井教授という人に会いに行ったと言う。しかも、株券は佐藤太郎という弁理士が管理し、佐藤には佐藤璃子という娘もいることがわかる。

 

遠井教授は空間移動の研究の第一人者だったが、30年前、研究費を横領して大学を追い出されたのだと言う。しかし、遠井教授は、空間移動の研究からある装置を完成させていた。宗一郎は今の遠井教授を見つけ会いに行くが、なんとそこにはタイムマシンがあった。そして、かつて宗一郎から譲られた巨額の研究費もあり、遠井教授はその研究費を持って宗一郎に30年前に行くように言う。そしてタイムマシンが起動、ヒューマノイドのピートも飛び込んで二人は30年前に遡る。

 

宗一郎は佐藤太郎の元を訪ね、遠井教授に資金を託し、ヒューマノイドとプラズマ蓄電池の設計図を完成し、白石に眠らされた日の和人の家で猫のピートを助け、和人に奪われるはずだった当時の研究資料を奪還、宗一郎の研究所にきた璃子を佐藤太郎の養女として預け、璃子を育ててもらう代わりに、佐藤太郎にヒューマノイドとプラズマ蓄電池を製造する会社の社長となってもらう。佐藤は会社名をアラジンとすることに決める。

 

そして宗一郎は、再度コールドスリープには入り30年が経つ。目覚めるとそこに佐藤太郎からの手紙があり、璃子は大学で研究者となり立派になった旨が書かれていた。そして最後に、璃子は20年前にコールドスリープに入ったと書かれていた。宗一郎は璃子が目覚める場へ駆けつけ二人のは手をとって映画は終わっていく。

 

原作を読んだのは少し前なのですが、物語の展開はほとんど今回の映画の流れと同じだったと思います。無難に映画化したと言われればそれまでですが、原作の味を損なうことなく映画として完成していたと思うし、原作の持つ詩的な部分を担うピートという猫の存在もちゃんと描けていたと思う。若干、脚本に穴はあるものの、ラストの畳み掛けも上手いし、素直に感動してしまいました。