くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「17歳の瞳に映る世界」「ファイナル・プラン」「少年の君」

「17歳の瞳に映る世界」

これは相当にクオリティの高い作品でした。これだけシンプルな物語をここまで書き込んだ脚本と演出力に拍手したい。ただ、お話は暗い。それでも食い入るほどに引き込まれる。一見男性をただ性欲だけを求めるような存在に描いているにも関わらず嫌悪感が生まれないし、主人公の少女が見つめる世の中がまざまざとこちらに伝わってくる。ほとんど室内と夜の景色を中心にした舞台設定も上手い。見事でした。監督はエリザ・ヒットマン

 

高校の文化祭でしょうか、舞台上に次々と歌を披露する青年たちが登場、最後にオータムという女性がギターの弾き語りを始めるが、一人の男子が、「メス犬」と罵声を浴びせる。ステージを終えたオータムは家族と食事をしているが、父親は母に言われて無理やり褒めるだけで、なんとも殺伐とした家族である。

 

オータムはスーパーのレジのバイトをしているが、気分が悪くなる。妊娠を疑う彼女は病院へ行き、そこで十周目だと診断される。自分で中絶しようとネット情報を試すがうまくいかない。そんな彼女の異変に気がついたのは同じバイト先のいとこスカイラーだった。オータムの住むペンシルバニア州では未成年の中絶に親の同意がいるがニューヨークではいらないことを知り、二人はニューヨークへの長距離バスに乗り込む。バスに中で一人の若者と出会うがさりげなくかわし、二人はニューヨークへ降り立つ。しかし、最初に診察を受けたところで既に十八週だから別の施設でないとダメだと言われる。

 

一夜を過ごし、次の施設に行き手続きを進めるが、二日かかるという。しかも予約金を払ったためお金が厳しくなる。苛立つオータムを前にスカイラーはバスで知り合った青年を呼び出し、お金を借りることに。青年にキスをさせているスカイラーにオータムはさりげなく手を握る。このシーンがなんとも痛々しいほどに切ない。そして無事、手術を終えたオータムは、スカイラーとペンシルバニアへ向かうバスに乗り込んで映画は終わる。

 

物語自体は実にシンプルなのだが、細かい様々なシーンが実に丁寧に伏線を貼られているし、手を抜かない脚本と演出に、最後まで緊張感が途切れなかった。相当クオリティの高い作品だったと思います。。

 

「ファイナル・プラン」

雑というか荒っぽい脚本ですが、B級作品と割り切ればそれなりに面白いアクション映画でした。監督はマーク・ウィリアムズ

 

一人の男が金庫を破っている。手慣れた仕草で次々と金を強奪して行き、「速攻強盗」と異名を持つ犯罪が繰り返されるというニュースが溢れる。カットが変わり、主人公カーターが貸し倉庫を借りに来る。そこの受付が不在なのでふざけていると入ってきた受付嬢アニーと出会い、会話を交わして一年後から本編へ。

 

アニーを本気で愛したカーターは、これまでの罪を償い、アニーと真っ当な生活をするべく自主を決心し、ホテルの一室からFBIへ電話入れる。出たのはベイカー捜査官。次々と悪戯電話ばかりで、てっきりこれも悪戯だと判断するが一応捜査官を生かせると返事をする。ところが二日経ってもやってこないのに苛立ったカーターは再度電話を入れる。その直後ホールとニーヴンという捜査官がやってくる。証拠を確認するためカーターが提案したのは倉庫に隠した現金だった。

 

半信半疑で倉庫に行ったニーヴンたちだがそこで現金の箱を発見、ところがニーヴンはその金を横取りすることを思いつき、ホールも巻き込んで、CIAが借りている部屋へ金を持ち込み、再度カーターの部屋へ行く。ただ、金を積み込んでいる場にアニーがやってきて一言二言話をする。ニーヴンたちはカーターを亡き者にするべく銃を向けるが、そこへベイカー捜査官がやってくる。部屋に入り、状況を察知したベイカー捜査官をニーヴンは撃ち殺してしまう。カーターはその場を脱出するが、ニーヴンたちは、証拠隠滅にためアニーを襲う。

 

カーターはすんでのところで瀕死のアニーを助け出し病院へ行く。一方ベイカー捜査官の友人のマイヤーズ捜査官もカーターを追っていたが、カーターに反撃を受け、その場でカーターから真相を話され逃亡される。カーターはニーヴンたちに復讐するべく準備をする一方、ホールの家に行き協力を求める。ホールは罪の意識に苛まれていた。一方、ニーヴンがアニーを狙っていると知ったカーターは病院からアニーを連れ出し、ニーヴンを懲らしめるべくカーターはニーヴンの元へ。アニーはマイヤーズに連絡を取る。

 

ニーヴンが金の隠し場所に行ったところへカーターとホールが突入するが、ニーヴンはホールを殺して金を持って逃走。カーターはニーヴンの自宅に爆弾を仕掛け、わざとニーヴンを逃して爆破、乗った車にも爆弾を仕掛けたと連絡して、ニーヴンを動けなくする。一方アニーは、マイヤーズをカーターのもう一つの貸し倉庫へ案内した。そこには、ニーヴンらが見つけた金の残りが隠してあった。真相が判明してニーヴンは逮捕され、カーターも再度マイヤーズに自主して、アニーは待っているということで大団円。

 

細かいところはまあいいかという感じですっ飛ばしていく荒っぽい脚本ですが、まあB級レベルのアクションと割り切ってみるには十分楽しめました。

 

「少年の君」

映画自体は非常にしっかりした作品で、決してクオリティは低くないのですが、結局中国のプロパガンダ映画で締め括らざるをえなかった感じです。監督や作者が描こうとした本筋と中国政府からのメッセージとがお互いにぶつかり合ってしまってチグハグな仕上がりになりました。さらに、どの場面にも力が入りすぎたために、全体にリズムが作り出せなくなったのもちょっと勿体無い。いい映画なのに、ラストの無理矢理感はいただけません。監督はデレク・ツァン。

 

今や学校の教師をしているチェンが授業をしている場面から映画は始まる。過去形で、かつて遊び場だった、というフレーズをを繰り返す。カットが変わり、2011年、統一大学入試まで60日というテロップととある高校、主人公チェンと女子高生フーはこの日給食の登板で牛乳のケースを持っている。フーが勝手に栓を開け飲んでしまう。

 

教室で、誰かがベランダから飛び降りたと騒ぐ。落ちたのはフーであった。チェンはフーの死体の上着をかけてやるが、それをきっかけに、今までフーがいじめられていたのがチェンに向かうようになる。椅子にインクを流され、帰り道いじめっ子のリーダーユアらに絡まれる。家に帰れば、母親が詐欺まがいの化粧品の販売をしているので借金取りがやってくる。ちょと古臭い設定である。

 

そんな時、学校の帰り道、チェンは一人の青年が大勢にリンチにあっている場面に出くわす。チェンは、通報しようとするがチンピラに捕まり、その青年に無理矢理キスをさせられる。しかしその青年が反撃し、チンピラは逃げていく。青年の名はシャオペイと言った。携帯を壊されたチェンは、シャオペイに修理をしてもらう。

 

チェンは家に帰ると借金取りが来るので、シャオペイの家に泊めてもらったりして過ごすが、フーの自殺の調査に来た担当刑事にユアらのことを告げ口したため、ユアらは停学になる。ある帰り道、ユアらはチェンを襲うが、なんとか逃げおおせたチェンはシャオペイに、ボディーガードを依頼する。シャオペイはユアを脅す一方でチェンの後ろから影のようについていくようになる。

 

ところが、ある時、公園で婦女暴行事件が起こり、チンピラ仲間ともどもシャオペイも警察に拉致される。その夜、チェンはユアらに再度襲われ、髪の毛を切られ、裸の動画まで撮られてしまう。釈放されたシャオペイはチェンの姿を見て、二人とも坊主頭になる。

 

受験が迫ったチェンは、最後の追い込みをかけやがて試験当日になる。そんな時、一人の少女の他殺死体が発見される。それはユアだった。チェンがいじめられていたことを知る担当刑事は一日目の試験が終わったチェンを参考人として呼ぶ。しかし、とりあえず釈放し尾行をつけるが、チェンは突然シャオペイに拉致される。そして、自分を単独犯人にすればいいと、チェンを襲った風に見せかけ、担当刑事らに捕まる。

 

やがて試験が終わるが、どこかしっくりこない担当刑事らは、チェンも取り調べをする。ひたすら自分がやったというシャオペイと、シャオペイなど知らないというチェンに、とうとうシャオペイ単独という結論にすることになる。

 

しかし、チェンは悩んでいた。あの日ユアと会い、ユアから警察には言わないでと先日のチェンへの暴行事件について頼まれ、切れたチェンはユアを階段から突き落とし殺したのだ。

 

試験の発表の日、チェンは見事合格。そこへ担当刑事がお祝いを言うついでに、シャオペイのことを再度話にくる。そしてチェンはシャオペイのところへ面会に行く。チェンには覚悟があった。お互い微笑みかける二人のカットから二人とも護送車で送られるシーンへ。チェンは自分の犯行を自供したが、いじめが原因だったことと未成年ということで刑も軽く、一方シャオペイも減刑された。

 

冒頭の場面に移り、チェンが授業を終えると一人の女子生徒が俯き加減なので一緒に帰ることに。後ろから成人になったシャオペイが歩いていて映画は終わっていく。ここはいいのですが。

 

で、終わりかと思えば、中国のいじめ対策政策が順調に進んでいると延々とエンドクレジットにテロップが流れ本当に終わります。結局、プロパガンダ映画でした。こう言うメッセージを入れないと自由に映画は作れなくなっているのでしょうか。作品自体はなかなかの仕上がりで、監督の才能も窺えるのに、もったいない限りの一本でした。