くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恐怖分子」「ブラックハット」

kurawan2015-05-08

「恐怖分子」
都会の一角に散らばった様々な物語が、偶然の一瞬によって、見えないところでつながり、連鎖していく群像劇の傑作。監督はエドワード・ヤンである。

けだるいような都会の景色、銃声とパトカーの音が繰り返される。窓から覗くピストル、警察、カメラマンの青年と、その恋人、出世を望む医師と小説に息詰まった妻。

オープニングで一気に登場人物の断片がすべて描かれ、最初は、追いかける物語の中心を手探りで求める感じになる。

路上に倒れている男、警察に追われて、一組の男女が、窓から飛び降りる。最初に降りたのはハーフの少女シューアン、続いて相方の男が飛び降りるが、警察に捕まる。シューアンは降りたときに足を怪我して、びっこを引いて逃げるも、途中で気を失う。その姿を追いかけるカメラマンのシャオチェン。

ここに、上司の死で、出世が見えた医師リーチョンと小説家の妻イーフェンがいる。イーフェンには元恋人がいて、彼から、仕事に戻らないかと誘われている。夫婦の関係もさめたイーフェンとリーチョン。

イーフォンが一人でいるときに、一本の電話がかかる。それはシューアンが適当に選んでかけたいたずら電話だった。それがきっかけで、イーフォンは元彼の元にいく決心をする。そしてその電話のエピソードを元に実際の夫婦生活に脚色した小説を完成し、文学賞を手にするまでになる。

一方リーチョンは、課長に昇進すると部長からにおわされ、その気になって喜ぶが、妻は彼のもとを去る。それでも、希望を持っていたのだが、ある日病院に行くと、課長職は別の男になり、部長も居留守を使ってあおうとしない。

さらにシューアンは、男と美人局の仕事をして、夜の町で生きている。

どん底に落ちたリーチョンは、友人で刑事の男の家で、課長になったと嘘をついて酒を飲み、翌朝、ピストルを奪う。刑事は目が覚めると拳銃がないことに気がつく。画面は、部長を撃ち殺すリーチョン、妻とその元彼の寝室に飛び込むリーチョンを写すが、ふとフラッシュバックすると、銃声とともに死んだのはリーチョンだった。自殺。

その瞬間、元彼とベッドにいるイーフォンに何かの衝撃が走り、シューアンも警察に捕まる。何かの連鎖が不思議な悪夢につながるエンディングが秀逸で、少々、最初はとっつにくいが、その精微なストーリー構成とミステリアスな展開にうなってしまう。これはなかなかの逸品だった。


「ブラックハット」
お話がおもしろくないわけではないのですが、少々脚本が雑なことが気にかかる映画でした。監督はマイケル・マンです。

地球を宇宙からとらえる映像から映画が始まります。物語はネットを背景にしたハッカー犯罪の話なので、この仰々しい映像も納得。といっても、マイケル・マンはこの手の俯瞰映像からはいるのが好きですね。

いきなり、香港の原発のプログラムがハッカーに操作され、爆発を起こす。さらに、大豆相場が操作され、多額の資金がいずこかへ消える。

そこで、中国サイバー犯罪取締局はチェン大尉を選抜、FBIと連携して捜査を始めるが、ハッカーのプログラムの元を作ったのがチェンと元同室で、アメリカで服役しているハサウェイという天才ハッカーであることがわかり、彼を一時釈放して、この事件の対策に当たらせる。

結局、このハサウェイを演じたクリス・ヘムズワースのスター映画で、後半で、チェンをはじめ、周辺の味方が、かなり無理のある展開で死んでしまう。

結局、犯人の本当のねらいが、錫の相場操作という、つまるところ、金だったというクライマックスの展開が、かなり雑い。

そして、ハサウェイはチェンたちの敵討ちをして、チェンの妹と逃避行に出てエンディング。って、いったい、ここまでの展開はなんだった?という話である。

CGを駆使した映像なのだが、全体にスピード感がないのが、妙に間延びした結果になった。おもしろくないわけではないが、ストーリーに一貫性がないこと、人物描写が弱いことが、作品に厚みを添えなかったのが残念。マイケル・マンなら、もっと質の高い映画にできると思うが、今回はもったいない出来映えだった。