くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「CLOSEクロース」「雨にぬれた舗道」「マッド・ハイジ」

「CLOSE クロース」

素晴らしい映画だった。シンプルなストーリーなのですが、主人公レオの表情だけを追いかけていく演出と、手持ちカメラを交えた素晴らしいカメラワークで描いていく映像のリズムにどんどん惹かれていきます。まだまだ幼い二人の少年の繊細すぎる感情表現の危うさが、なんとも言えないほど、自分たち大人の汚れた視線を嘲笑っているかにさえ見えてしまう。花の油を取る農場なのでしょうか、美しい映像も見事で、久しぶりに驚くほどクオリティの高い映画を見た感じです。監督はルーカス・ドン

 

レオとレミが、廃墟のようなところで木の刀で遊んでいる場面、そして赤い花が咲き乱れる農場、幼馴染で親友のレオとレミがかけてくる場面から映画は幕を開ける。レオは頻繁にレミの家に泊まって一緒にベッドで過ごしている。幼い頃からの習慣で両親も当然のような毎日である。

 

二人は今年から一年生で一緒のクラスで学校に通い始める。並んで自転車で走り学校へ行く二人の場面が瑞々しい。ところがあまりに親しくしている二人にクラスの女生徒が付き合ってるの?とからかったりするが、レオはただの友達だと答える。しかし、変にみられることに何気なく気にし始めるレオは、何かにつけて近づいてくるレミから離れる仕草をする。

 

レオは地元にアイスホッケーチームに入る。男らしさをアピールしているかのようである。一方レミはオーボエ奏者で、発表会などでソロで吹いたりする。そんなレミを羨望の目で見るレオ。ある日、いつものようにレミのベッドで寝ていたレオは、夜中にベッドを抜けて床に寝る。それに気がついたレミはレオの横に移って、朝目が覚めるのだが、それを見たレオが怒る。レオがアイスホッケーの練習しているところへきたレミは、自分も入ろうかというがレオは返事をしない。

 

ある時、レミを置いてレオが一人で学校に行き、レミはそれを責めて、とうとう大喧嘩になってしまう。校外学習の日、バスの中で点呼を取るがレミの返事がなかった。そのまま校外学習を終えて帰りのバスの中で、保護者が迎えにきていること、一緒に体育館に集まるようにという先生の声を聞いたレオは不安を覚えバスから降りられない。乗ってきたレオの母にレオが問い詰め、レミがもうこの世にいないと知らされる。自殺か事故か明らかな描写はないがおそらく自殺だったのだろう。

 

レオはがむしゃらに農場の手伝いをしたり、アイスホッケーの練習をしたりして気持ちを紛らす。クラスメートの男子の家に泊まりに行ったりするが気持ちは晴れない。自分を責める日々を悶々と過ごすレオの姿をひたすらその表情の変化で捉えていくカメラが見事。レミの母がレオを家に招くが、結局、レオは何も話せず帰ってくる。

 

一年が過ぎる頃、レオはアイスホッケーの試合で手を骨折してしまう。たまらなくなったレオは、レミの母が勤める産科の病院にバスでやってくる。

 

レミの母はレオを車に乗せて送るが、車内でレオはレミが死んだのは自分のせいだからと告白する。レミの母はレオに降りるように促す。レオは泣きながら森に走り去るが、後をレミの母がおってくる。レオは木切れを拾い、レミの母の前に立つが、レミの母はそんなレオを優しく抱きしめる。骨折も治り、ギブスを外されたレオの姿、そして赤い花の咲き乱れる農場を走りながら、まるでレミがついてきているかの如く振り返るレオのカットで映画は終わる。

 

絵作りのうまさ、カメラワークのテンポの見事さ、表情の変化だけを捉えたストーリー展開の演出の巧みさに頭が下がります。素晴らしい出来栄えの一本でした。

 

「雨にぬれた舗道」

面白かった。一見、なんのことはない物語なのに、どんどんサスペンスが膨らんできて、いつに間にか異常な世界に引き込まれた末に、ゾクっと思わせて締めくくる。さりげない雨の音、時計のおと、フッと浮かぶ笑み、鏡、裸体を隠す布などなどの小道具やきめ細かな演出が光る。職人芸と言えばそれまでですが、映画は映像で見せる、を徹底した見事なサスペンスホラーでした。監督はロバート・アルトマン

 

一人の上品な雰囲気の女性フランシスが公園を歩いている。自宅アパートに帰ると友人たちを招いての食事が始まる。窓の外はいつの間にか雨で、公園のベンチに一人の青年が震えて座っている。妙に気になるフランシス。食事はさりげなく終わり、友人たちはそれぞれ帰っていく。外の青年が気になったフランシスは雨の中、声をかけて自宅に招いてやる。食事を与え、風呂に入れてやる。一言も喋らない青年にレコードをかけてやったりし、青年も楽しそうに踊って見せたりする。ベッドも与えてやり、一夜が終わる。

 

翌日、フランシスは朝食を与えた後、買い物に外出、青年に服を揃えてやる。夜、フランシスは青年の部屋の鍵をかける。青年は窓から外に出て非常階段を降り自宅に戻る。いかにも大家族という室内をカメラは下から順に窓を通して捉えていく。食べものなどを手にした青年は家族に頼まれた服を姉が恋人と過ごしている桟橋の一室に届ける。そこで青年は初めて口を効く。青年はおかしな女の部屋に招かれた経緯を姉のニナに話す。

 

青年はフランシスのアパートに戻り、窓から中に入る。フランシスが外出した間一人過ごしていたが、窓の外に姉が現れ、勝手に室内に入り、風呂に入ったりして好き放題する。フランシスは買い物の途中で、10年来彼女にいいよっているチャールズに会い、夜まで付き合わされた挙句、自宅までついて来られる。フランシスはチャールズを部屋に入れたものに巧みに追い返し、青年の部屋に行く。

 

翌日、フランシスは避妊具をつけてもらいに産婦人科に行き、帰ってくる。青年に抱いてもらおうと青年に部屋に入るが、ベッドの中は人形だった。絶叫するフランシス。その頃、青年は外で飲んでいた。深夜ベッドに帰ると、人形は綺麗に並べられていた。翌朝、目が覚めると、いつものようにフランシスが朝食を持ってくる。青年が食事をしていると、何やら叩く音がする。気がつくと、ドアも窓も釘で打ち付けられ、出られなくなっていた。

 

フランシスは夜の街に出かけ、娼婦を探す。そして一人の女シルビアを買って連れ帰り、青年に与えて部屋の鍵を閉める。中でいちゃつく声を聞いていたフランシスは、突然青年の部屋に飛び込みベッドに覆い被さる。青年はその場を逃れるが、気がつくとフランシスはシルビアに馬乗りになり、毛布が剥がされるとシルビアの胸に包丁が突き刺さっていた。青年は廊下に逃げるがどこへも出られない。フランシスがやってきて、さっきの女は追い返したと言って青年に頬擦りして映画は終わる。

 

孤独な女の悲しい話かと始まるが、いつの間にかサスペンスに変わり、いつに間にかホラーテイストで幕を閉じる。二転三転していく不気味なストーリー展開が実に面白い作品で、映画作りのなんたるかを見せつけられる一本でした。

 

「マッド・ハイジ」

エロ、グロ、ナンセンス、ブラックユーモア満載のなんの変哲もないくだらないC級ホラー作品。どこかでみたような映画のパロディと、スイスを皮肉ったストーリー、キレも何もないチープなアクションシーンとこれ見よがしなCG映像を駆使したレトロ感あふれる映像、しかも品のないグロシーンの連続と惨殺シーンの連続。これこそ、Z級エンタメの極みでした。監督はヨハネス・ハートマン。

 

マイリという悪徳政治家がスイスで幅をきかせて、力をつけていく様の解説映像から映画は幕を開ける。マイリのチーズがスイスを席巻し、やがて財力を背景に政治のトップへ躍り出てきて20年後、スイスではマイリズチーズ以外は違法チーズで食べることができなくなっている。しかも、乳糖拒否症という人間まで生まれ、チーズを食べられなくなった人々は逮捕されていた。マイリは大統領となってやりたい放題をしていた。

 

アルプスの山の中、ハイジと黒人の恋人ペーターがこの日もSEX三昧だったが、ペーターはアルプスのチーズ=違法チーズを密売していた。ハイジの祖父アルムおんじは愛犬ヨーゼフと暮らしていたが、ハイジがペーターと付き合うことに反対していた。ある時、街にデートに行ったハイジとペーターだが、実は違法チーズの販売をしているペーターはマイリの部下クノール司令官に目をつけられていて、この日ペーターは逮捕された挙句、見せしめに公衆の前で処刑される。その場にいたハイジもクノールに追われ、アルムのところに逃げ帰ったが、追ってきたクノールによって、アルムの小屋は大爆発してしまう。

 

捉えられたハイジはロッテンマイヤーが所長を務める城に拉致されるが、そこへいく護送車の中でクララと出会う。ロッテンマイヤーの城で拷問やいじめをき繰り返されたハイジだが、懲罰牢に繋がれた際に、チャンスを見てロッテンマイヤーを殺し脱出する。ところがクノールに追い詰められ滝の中に飛び込む。

 

ハイジは奇跡的に助かり、森の奥の教会にたどり着く。そこで何やら妙な老婦人に復讐のための格闘技を伝授され、マッドハイジとなってクノールたちのところに戻ってくる。クノールの部下を惨殺したが、クノールの秘密兵器の鎧武者が現れ、ハイジは再び拉致され、闘技場の戦士として繋がれる。そこにはチーズ漬けにされたクララもいた。

 

闘技場でハイジは対戦相手と戦うが、最後にクノールの鎧武者が現れ苦戦する。そこへ、生きていたアルムと仲間が殺到して、クノールはそこで殺される。ハイジたちはマイリが計画していたウルトラスイスというチーズの工場に向かう。そのチーズは食べるとゾンビのような化け物戦士になるものだった。フランスからのチーズ使節団にそれを食べさせたマイリはゾンビ戦士をハイジたちに向かわせる。ウルトラチーズの工場では、母乳を使ってチーズを作っていた。ハイジたちはゾンビ戦士を倒し、マイリを惨殺するがその際アルムは重傷を負って動けなくなる。

 

アルムは工場爆破のスイッチを自ら押すと言ってハイジたちを逃す。ハイジたちは無事脱出、背後で工場が大爆発する。ウルトラスイスを作ったマッドサイエンティストが逃げようとするのを、サイドカーにクララを乗せたハイジが立ち塞がり、サイエンティストを殺して、続きは「ハイジアンドクララ」で会いましょうといって映画は終わる。

 

「ダイヤルMを回せ」のような電話が出てきたり、東洋カンフー映画のような修行シーンが出てきたり、スイスの時計を皮肉ったり、スイスアーミーナイフまで出てきたり、パロディだらけではあるが、全体のテイストはグロ映画である。悪趣味といえばそれまでだが、まあ馬鹿馬鹿しい一本という感じの映画でした。