くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イン・ザ・ハイツ」

「イン・ザ・ハイツ」

二時間半ほどあるのに全然退屈しない。全編リオのカーニバル的にエネルギッシュな歌と踊りで突っ走るミュージカルで、個人的に好きな群衆ダンスが散りばめられた構成が本当にワクワクするし、歌声は透き通るほどに心地よいし、女優さんのプロポーションは抜群でドキドキするし、本当に楽しめました。今時なCGを使ったのか壁の上での踊りのシーンも面白い。物語の骨子が移民の話ということで日本人には一番苦手な部分ですが、彼らの苦難や人間ドラマもしっかり伝わってきて、本当に良かったです。監督はジョン・M・チュウ

 

ドミニカ共和国の海岸、海の家のような店先で主人公ウスナビが子供達に、アメリカにいた頃の話をする場面から映画は始まる。場所はニューヨーク、ワシントンハイツという取り残された街。祖国を離れた人たちが暮らす街で、それも今や少しずつ街を出る人が増えて寂しくなりつつある。住んでいる人たちは主にラテン系の人たちで、歌もダンスシーンも群衆ミュージカルの様相です。

 

コンビニを従兄弟のソニーと経営するウスナビは、やさしい老婦人でナンバーくじをいつも買いに来るアブエラらと楽しい日々。そこへ、大学に行っていたニーナが帰ってくる。間も無く訪れる大停電の三日前である。ニーナは街の人々の希望を乗せて大学へ行ったが、差別扱いされ、嫌気がさして戻ってきたのだ。父は金を工面し、タクシー会社をする自分の店も半分売ってニーナの授業料を納めていた。また、ダニエラの美容院で働き、夢はファッションデザイナーのバネッサもこの町で暮らしていた。かねてからウスナビは想いを寄せているが不器用で気持ちが伝えられない。そんなウスナビのためにソニーはバネッサをパーティに誘ってやる。

 

タクシー会社に勤めるのはニーナの彼氏のベニーだが、ニーナの父がタクシー会社も売却しニーナの授業料に充てる決心をしたことで、戸惑ってしまう。ダニエラの美容院は近々転居が決まっていて、バネッサは自分で夢を叶えるために部屋を探すが、保証人がいないからと手に入れられない。そんな時、ウスナビの店で売ったナンバーくじが当たっていることがわかるが、誰の元に当たりくじがいったか結局わからなかった。映画は、大停電までの三日間に、登場人物のドラマを順番に描いていく。ニーナは父の気持ちをよそに大学に戻らないつもりだった。

 

やがて、ウスナビとバネッサのパーティデートの日。バネッサは、次々とダンスをするが、何かにつけウスナビとすれ違うのにどこか寂しいものを覚えていた。そんな時、突然大停電が起こる。ウスナビはバネッサを探すが見つからず、いつもいくアブエラの家に行く。そこにニーナやベニーらも来ていた。電気が止まり蒸し暑くなる中、ベッドに入ったアブエラは夢を見る。若き日、ニューヨークにやってきて様々なことをし、耐えることと信仰だけを頼りに生きてきたが、そろそろ疲れたとママに声をかけて、やがてそのまま永遠に眠りにつく。この場面は本当に涙が止まらなかった。外では、花火をあげて暗闇を少しでも照らそうとしていた。街の人たちはアブエラの死を悲しむ。

 

数日しても停電は解消しない。次第に沈み込む街。やがてダニエラが旅立つ日が来る。たまたまゴミ箱でバネッサの不動産契約書が保証人がいなくて無効になったのを見つけたウスナビはダニエラに保証人を頼んでやる。若き日、夢を持って大学まで行ったダニエラだが、中途で断念した過去があり、今も移民の人権活動の運動をしていた。そんな彼女を知ったニーナはもう一度大学に戻る決心をし、一度は断った父の援助を受けることにする。

 

ウスナビはかねてから故郷ドミニカへ戻ることを考えていてその日も迫っていた。ところが、荷物をまとめていて、ふと一枚のナンバーくじを見つける。それはアブエラが彼にプレゼントしたものだった。しかも、それは当たりくじだった。ウスナビは、その金でソニーを援助する決心をする。そんなウスナビのところにバネッサが現れる。ファッションデザイナーの道を進もうとしたが、どうもアイデアが見えてこないのだという。

 

その夜、たまたまスプレーアートをしているピートのそばを通ったバネッサはピートが捨てている養生布を見てアイデアを思いつく。やがてウスナビの旅立ちの日、バネッサはウスナビを自分の店に呼ぶ。そこには、一晩で仕上げた見事な服があり、傍にはドミニカの海岸の絵を描いたピートとソニーがいた。ウスナビはドミニカに戻ることをやめる決心をする。一方、ニーナはベニーと愛を確かめ合って、再び大学へ旅立っていく。ニーナとベニーが踊るビルの壁のシーンが面白い。

 

子供達の前で話すウスナビの冒頭の場面は、実はピートが書いた海岸の絵で、バネッサもいた。子供たちのうちの一人はウスナビとバネッサの子供なのだ。子供達が街に出て踊り出す。希望の未来を予感させて映画は終わるが、やはり移民の問題はいまだに根強いことはしっかり伝わってくる。でも、楽しいミュージカルでした。