くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イエスタデイ」「さらば青春の光」(デジタルリマスター版)

「イエスタデイ」

テンポの良い軽いタッチのコメディで、心地よい笑いと感動を作っていく展開なのですがあと一歩物足りなかったのは、モチーフになったビートルズが偉大すぎたか、ビートルズの小ネタを見抜ききれていなかったかもしれません。主人公ジャックの周りの空気読めないキャラクターたちのノリが後半に生きてこなかったのが残念ですが、楽しい映画でした。改めてビートルズの曲に魅了されてしまいました。監督はダニー・ボイル。脚本はリチャード・カーティス

 

売れないミュージシャンのジャックは、マネージャーで幼馴染のエリーのサポートもあり、今日もコンサートイベントに出かけた。しかし、未だ目が出ないジャックは、これ限りにするとエリーに告白しその日は別れる。

 

ところがその帰り、突然地球規模の大停電。そのタイミングでジャックは交通事故にあってしまう。目が覚めたのは病院のベッド、いつもと変わらないままに目が覚めたが、エリーたちと食事していて、たまたまギターで「イエスタデイ」を弾いてみんなに驚かれる。なんと、ジャックが目覚めた世界はビートルズの存在しないパラレルワールドだった。

 

ジャックは、最初は戸惑うが、やがてビートルズの曲で人気者になっていく。彼の両親や友人など、その場の空気を全く掴めない脇役の描写が面白いはずなのだが、どこか中途半端。リチャード・カーティスらしい、まどろこしい展開は例によってですが、もう一つスタイリッシュになっていかないのは、キャストの風貌ゆえでしょうか。

 

いずれにせよ、あれよあれよとジャックは有名人になり、アメリカにわたるにあたり、エリーと別れ別れになる。エリーはジャックに恋していて、ジャックもエリーに恋しているが、いかんせん幼馴染ゆえになかなか気がつかないもどかしい展開とジャックがどんどんヒット曲を出していく様が軽いテンポで進む。

 

そして初アルバム発表の場を、故郷ですることに決めたジャックだが、そこでもエリーに本心を告げられず、最後の最後に大物ミュージシャンエド・シーランに頼んで彼のコンサートでエリーに愛を告白するとともに、自分の曲の真相も観客に告白する。一方、ジャックの曲がビートルズの曲であることを知る二人が登場するが、この世にあの名曲を広めて欲しいと去る。彼らに託されたメモの場所に行くと78歳のジョン・レノンが、世界中を旅しているという設定で登場。

 

あとは、ハッピーエンドのジャックとエリーは子供ができて、ジャックは生徒たちの前でビートルズの「オブラディ、オブラダ」を熱唱している場面でエンディング。多分、ビートルズのオタクたちが見たら、もっとこの映画の小ネタを見つけて、もっと感動したのでしょうが、流石に私のひと世代前なので、ちょっと見つけていないところも多々あったと思います。

 

映像としては、細かいカットとテンポ良い展開、抜群の選曲センスで、素敵な映画になってたと思います。

 

さらば青春の光

ザ・フーがプロデュースし、彼らの音楽に乗せて展開する青春映画の名作。全編に流れる楽曲のリズムに映像が乗っていく流れにだんだん引き込まれて行きます。監督はフランク・ロッダム。

 

舞台は1960年代のイギリス、飾り付けたスクーターに乗り、街を滑走する若者たちをモッズと呼んだ。主人公のジミーはそんなモッズで、彼の憧れはモッズのリーダー的な存在エースだった。ジミーは一人の少女ステフに恋心を持っていたが、彼女にはピートという恋人がいた。

 

モッズには敵対する、ロッカーズという集団があった。ロッカーズはリーゼントに革ジャンで、バイクを乗り回す集団だった。事あるごとに二つの集団は諍いを起こすが、それは行き場のない若者たちのはけ口でもあった。

 

物語は、ジミーの姿を中心に、当時の若者の社会からの疎外感や行き場のない刹那的な生き様をドラッグを交えながら描いていく。

 

ある時、ブライトンでのモッズたちの集会で、ロッカーズと大規模な衝突が発生し、せっかくステフといい仲になったジミーはそこで警察に逮捕されてしまう。そして釈放されてくると、ステフは別の彼氏ができ、両親からは勘当され、やけになって仕事を辞めるが、バイクも事故にあって大破してしまう。

 

行き場もなくなったジミーは、たまたまホテルのボーイをしているエースを見つけてしまう。憧れのエースの普通の姿に落胆し、エースのバイクを盗んで走り去る。そして、崖からバイクを落としてしまう。

 

映画はここで終わります。どうにも行き場もなく、思うように物事も進まず、行き場を失ったジミーの姿は当時の若者たちの行動の代弁者となって、なんとも言えない青春ドラマに仕上がっています。世界が、世界大戦から立ち直ったものの、その復興の中に潜む矛盾と陰りに未来への希望が不透明になった社会でもがく青年たちのドラマとして、今見直しても見事な青春映像に仕上がっていました。名作とはこういうものかもしれません。