くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「かそけきサンカヨウ」「マイ・ダディ」「大魔神逆襲」「大魔神怒る」

「かそけきサンカヨウ

見終わってため息が出ます。そんなどこか素敵な青春の、人生のほんのひとときの物語、そのさりげない瑞々しさに心が洗われるような感じがしました。いい映画ですね。それ以上の言葉が見当たりません。監督は今泉力哉

 

いつもいる溜まり場の喫茶店に、幼馴染の中学生陽、陸らが集まっている。陽が食事の用意があるからと先に帰る。陽は作曲をする直と二人暮らしだった。母の佐千代は画家だが陽が幼い頃に家を出ていた。この日直は陽に恋人ができたと告白する。そして陽は新しい母美子とその連れ子のひなたと会う。ひなたはまだ幼い子供だった。

 

美術部の陽と陸はいつも二人でデッサンなどをしていた。やがて高校へ進む。ある日陸は陽らに自分の心臓には生まれながらの病気があり、それでバスケットボールを諦め美術部に入ったと告白する。そして夏休みに手術が予定されていた。陽は陸に一緒に行きたいところがあると誘う。初めてのデートだった。

 

陽と陸が行ったところは、三輪佐千代という女流作家のギャラリーだった。そこで陽は佐千代と会うがすぐに飛び出してしまう。佐千代は陽の産みの母だった。

 

陽が帰ってくると、ひなたが陽が大事にしていた佐千代の絵の本を破いたのを見て、陽は思わず声を荒げてしまう。部屋で泣いている陽に直は佐千代との経緯を初めて話す。陽、直、美子、ひなたはなるべくしていい関係になり、陽も美子を母と呼ぶようになっていく。一方陸の手術も成功するが、陸は自分には何もないのではと悩み始める。そんな時、陽は陸に好きだと告白する。しかし陸はうまく返事ができなかった。

 

複雑な思いの陽だが、陸もまた悩んでいた。そして友達に相談し、陸の母とも話をする。陸の父は仕事で世界を飛び回り家にいなかった。それでも陸に母は寂しいわけではないと答える。陸は美術部からも遠ざかっていたが、ある時、公園で胸を押さえて蹲ったところに美子か通りかかる。以前、陽の家に行った時ひなたとも仲良くなっていた陸は、近日予定している陽の誕生パーティに来てほしいと話す。

 

学校で美術部に置いてる道具を持ち帰ろうとした日、靴箱に手紙を見つける。それは陽からの誕生パーティの招待の手紙だった。そして陽の誕生パーティの日、不安でソワソワする陽の前に陸が現れる。陸は陽に自分が描いた陽の絵を渡す。陽は陸を自分の部屋に連れて行き、その絵を貼る。そして、いつかサンカヨウの花を見に行こうと陸は陽に話す。サンカヨウは陽の実母佐千代が好んだ画材だった。こうして映画は終わって行きます。

 

さりげないお話なのですが、どこかしんみりと胸に迫ってくるものがあります。そのさりげない切なさに、いい映画だったなあとついため息が出てしまいました。これが今泉力哉監督作品の魅力ですね。

 

「マイ・ダディ」

テレビドラマレベルの脚本と凡庸な演出で、まあまあのドラマに仕上がった並レベルの映画でした。構成の面白さをもっと利用して工夫すれば傑作にもなり得たかもしれませんが、登場人物の心理描写が全くできていないので、こちらに伝わってくるものがなく、薄っぺらい作品になった感じでした。監督は金井純一。

 

一人の男一男のアップ、彼はガソリンスタンドでバイトをしている。実は牧師である。一人の女子高生ひかりのアップ、友達とボウリングを楽しんでいる。今日はクリスマスイブで、慌てて帰るひかり。彼女は父一男の手伝いで教会でオルガンを引いていた。ミサが終わり見送った一男は、ひかりが倒れているのを見つける。

 

ここにヒロという路上ミュージシャンがいる。彼を見つめる江津子。帰る途中、教会の明かりを見つめる江津子。ライブの後部屋でSEXをする二人、外に救急車の音が鳴る。ヒロは、自分は種無しで子供ができないと江津子に告白する。江津子はヒロのためにビラまきをしたりして応援する。

 

一男は、医師からひかりは白血病だと告知される。化学療法で治療をする一方、万一のために骨髄移植に備えて血液検査をするが、一男とひかりに親子関係がないことがわかる。やがて、ひかりは退院するがすっきりしないものが一男に残る。

 

ある日、江津子が帰ってくると、ヒロが別の女とベッドにいた。江津子はその場でその家を飛び出すが行き場もなく、教会に身を寄せる。そこで江津子は若き日の一男と出会い、間も無く結婚する。そして生まれたのがひかりだった。

 

幼稚園に行くようになったひかりが江津子と歩いていて、ヒロと出会う。しかもヒロには女の子がいた。子供ができないと聞いていた江津子は、思わず問い詰めるがはぐらかされる。その瞬間、江津子は大変なことに気がつく。ひかりはヒロと江津子の子供だということだった。ショックの中、一男からの電話に受け答えしていて交通事故で死んでしまう。

 

ひかりは順調に学校へ行き、恋も知るが、突然倒れる。再発したひかりは入院、医師は骨髄移植しかないと説明する。一男は興信所で実父を探してもらい、必死で懇願し、骨髄提供に同意をもらう。真実を薄々知るひかりは、一旦は手術を拒むが、一男の姿を見て、移植に同意する。こうして晴れて快復したひかりは一男とイースターのミサをする。こうして映画は終わって行きます。

 

なんとも、薄っぺらいドラマで、過去と現代を交互に交錯させた物語構成は面白いのですが、ドラマに深みがなく、通りいっぺんの展開で終始していくのは残念。演出でカバーすべきところだったのかもしれませんが、監督にその力量はありませんでしたね。

 

大魔神逆襲」

とにかく特撮シーンだけは圧巻。シリーズ三本目となり、さすがに脚本は弱い。前半はひたすら退屈と言えなくもないがクライマックスを見るだけで十分値打ちのある作品です。監督は森一生

 

山奥で何やら巨大な砦を作っている悪徳大名。その労役に無理矢理駆り出された木こりたちを助けようと村から子供達が魔神が住む森を抜ける。森を抜ける場面が物語のほとんどで、やがて雪が降り、限界が来た一人の少年は身を捧げて魔神を呼ぶ。

 

埴輪のような魔神は怒りの荒神と変わり、地獄谷の砦を破壊するべく大暴れしてクライマックスを迎える。特撮シーンはまさに圧巻で、逃げ惑う人々の彼方から迫る魔神の迫力たるや、これぞ大映特撮の極みである。

 

大魔神怒る」

唯一スクリーンで見てなかった作品。なるほどスペクタクルシーンは三本のうちでダントツの仕上がりと物語も面白い。クライマックスの湖が割れるシーンや炎が燃え上がる場面など特撮技術の粋を凝らした見事な映像が展開、さらに構図も決まっていて、もう圧巻でした。監督は三隅研次

 

湖を挟んで栄える二つの国の利権を奪おうと攻め行ってくる悪徳大名が非道の限りを尽くす。湖の中央には守り神の彫像が据え付けられているが、悪徳大名はその彫像も破壊してしまう。例によって、儚い姫が命をかけて神様に祈ると湖の底から巨大な魔神が現れ悪党大名を退治して大団円。最後に姫の涙を見て魔神は元の姿になり消えていく。細かいシーンの数々が丁寧に演出されていて見応え十分な映画でした。