くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女囚と共に」「女であること」

kurawan2015-05-27

「女囚と共に」
女刑務所を舞台に、そこに収監された女囚たちの様々な人間模様を描く群像劇である。監督は久松静児

なんといってもすごいのが、そのキャストの豪華さである。主人公の保安課長が原節子だが、所長に田中絹代、女囚に浪速千栄子、久我美子岡田茉莉子香川京子などなど当時の第一線の女優が一堂に会している。その豪華さはまさにオールスターである。

物語は、次々と繰り返されるエピソードの連続だが、久松静児の演出は、それぞれをオーバーラップさせるように、見事な構成で紡いでいく。その卓越した手腕に頭が下がる。

けっして、当時の映画界では名作とかいうレベルではないが、クオリティの高さは今と比べものにならないほどに大人のレベルである。

しっかりとした演技と、安定した演出、カメラワークの確かさ、安心してみられる完成度に、やはり映画全盛期の息吹を感じてしまう作品でした。


「女であること」
川端康成の原作を川島雄三が監督をした一品で、川島雄三らしい驚くような映像と、カットバックのおもしろさ、軽妙なリズムを楽しむことができる映画でした。

一人の女性が自転車に乗り、颯爽と町の中を走り抜けていく。次々と彼女に声をかける男性を後目に、テンポよくワイプで画面が切り替わる。そして画面奥に走り抜けると、タイトル。そして、三輪明宏の歌声と映像をバックにクレジットが始まる。このなんとも突拍子もない導入に驚いていると、次のシーンがまたすごい。

弁護士佐山とその妻市子が預かる死刑囚の娘妙子が、縁側で鳥かごを見ている。空に突然ゼロ戦が飛んできて、あっという映像に驚いていると、市子が呼ぶ声。家の中に入る妙子。

度肝を抜くオープニングから、物語は、ふつうの展開になるのだから、もうまいってしまう。

この家庭に、佐山の親友の娘さかえがやってきて、物語が動き出す。

やたら、モダンで、騒がしい上に、小悪魔のようなキャラクターで、見る見る平穏な家庭をかき回していくのだ。手にいっぱい抱えた服を持って走り回ったり、佐山を誘惑したり、市子のかつての彼氏清野を見つけてはからかったり、妙子とその彼氏の存在にちょっかいを出したりと、大変である。

翻弄されていく佐山夫婦。いらつく佐山と市子が、会話の流れは途切れずに、居間、書斎、書棚など場面だけが変わるカットつなぎがまた斬新。さらに、原節子扮する市子と久我美子扮するさかえのキスシーンまで演出するのだから、川島雄三、やります。

結局、一騒動の末に、市子の妊娠、妙子の父の裁判の勝訴、清野のカナダ出発などで、すべてうまく収まり、さらにさかえも京都の父の家に向かって佐山家を去ることでエンディング。

川端康成の原作か川島雄三の演出か、とにかく一風変わった作品だが、個性爆発の一本だった。おもしろかった。