くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「巴里のアメリカ人」「ジャーマン+雨」

「巴里のアメリカ人」

ほぼ四十年ぶりにスクリーンで見たが、この映画の価値は、今見てこそわかるものかもしれない。物語の組み立ての素晴らしさ。単純な恋愛ドラマなのに、忍び込ませたさりげないサスペンスがラストシーンまで観客を逃さないし、なんと言ってもすごいのはクライマックスの大群舞シーン、これこそハリウッドミュージカル、二度と作れない作品の一本だと思います。監督はヴィンセント・ミネリ

 

巴里の街、貧乏画家のジェリー、隣には音楽家志望のアダムが住んでいる。アダムには古い友達で歌手のアンリがいた。人物と街の紹介から映画は幕を開ける。アダムのところにアンリが現れ、近々結婚すると報告する。相手の名前はリズという可愛らしい女性だった。ジェリーはいつものように通りで絵を売っていると、一人の裕福な女性ミロが通りかかり、絵を買いたいという。そして、ジェリーの後見人としてバックアップしたいと言い出す。

 

ジェリーがミロと一緒に行ったジャズホールで、ジェリーは一人の可愛らしい女性リズを見かけて一目惚れしてしまう。そして強引にダンスに誘い、彼女の勤める店に押しかけて、積極的にアプローチし、やがてリズもジェリーに心を寄せるようになるが、過去の恩義もあるフィアンセのアンリのことを忘れることができず悩んでいた。

 

リズとジェリーの恋はどんどん燃え上がるが、アンリに、アメリカで歌ってみないかという大物プロデューサーの誘いがかかる。舞い上がったアンリはリズに結婚して一緒に行こうと誘う。リズはとうとうジェリーに全てを話し二人は別れる。自暴自棄になったジェリーは、自分に気があるミロを誘い、芸術学校のパーティへ連れていく。そこではしゃぐのだがアダムも誘われていた。さらにアンリとリズも来ていた。

 

テラスで、リズはジェリーに近々アメリカに行くことを告げ、最後の別れを言うが、その会話をアンリは陰で聞いていた。アンリとリズは車で去るが、リズの目には涙が浮かんでいた。そんなリズをアンリはじっと見つめる。ベランダから二人を見送るジェリーは、リズとの幸せな日々を空想する。ここからの大群舞シーンはおそらく映画史に残る名シーンでしょう。延々と背景や人物、衣装を変えながら踊りまくるジェリーとリズ。いつまで続くのかと思うほど延々と描かれるが、飽きない上にもっと見たいと引き込まれて行きます。しかしそんな夢も空想でしかなく現実に戻るジェリー。しかし、下を見ると、アンリに送られてリズが帰って来た。ジェリーは駆け降りてリズを抱きしめて映画は終わる。

 

アンリとリズ、ジェリーのことを唯一知っているアダムの存在が物語にさりげなくサスペンスフルな色付けをし、単純な恋愛ドラマをカラフルにする。さらに、終盤に向かうに連れてみるみる人間ドラマ性が強調されてくる演出が素晴らしい上にあの大群舞シーンなのだから、アカデミー賞を取らないのがおかしいくらいです。これこそ名作、もう堪能しました。

 

ジャーマン+雨

横浜聡子監督が、表舞台に出る前のまさにインディーズ的な作品ですが、そのバイタリティあふれる演出と、荒削りなほどの自由奔放な映像がとにかく面白い。

 

女子高生のマキたちの姿から、校庭にゴリラーマンが来ているという囃し立てる声で映画は幕を開ける。一人暮らしで、その顔立ちからゴリラーマンとあだ名されているよし子は植木屋でバイトしながらこの日も校庭に作業に来ていた。植木屋に入ったのは、ちょっとイケメンのドイツ人が働いているためだった。

 

よし子は、悪ガキ三人にリコーダーを教え、即興の作曲をしながら、将来歌手になることを夢見ている。容姿が可愛い親友のマキの写真を使ってオーディションに応募する。当然嘘がバレて落ちてしまうのだが。

 

よし子の父親は病院に入院しているが、よし子は父のことをダンゴムシだと嫌っている。マキや悪ガキらと見舞いに行った時に、よし子は点滴の針を抜いて帰ってくる。後でマキが見にいくとベッドが空になっていたので、よし子らは死のだと思ってしまう。

 

よし子の家はいまだに汲み取りで、小川という男が作業に来るが、小川は子供の体を触ったりするので、よし子らが脅して金を取ろうとする。よし子には祖母が残したお金があったが、悪ガキらに大判振る舞いをし、ドイツ人にも金をやり使い果たしてしまう。小川をゆすってもらっていた金も終わりにしてやり、よし子は小川が汲み取り作業をするマンホールに飛び込んで病院に担ぎ込まれる。意識のないよし子を見るマキたちの前に、突然死んだと思っていた父が這うようにやってきてよし子の手を握るとよし子の意識が戻る。こうして映画は終わっていく。

 

とにかく勢いでどんどん展開していく迫力満点の作品で、荒削りといえばそれまでだが、その荒っぽさこそ、若さだといえる作品でした。