くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ベルファスト」「猫は逃げた」

ベルファスト

いい映画ですね。北アイルランドの厳しい歴史の1ページなのに、心に染みる家族の物語、人と人のつながりの物語が胸に迫ってきます。モノクロームの力強い映像が素晴らしい作品でした。監督のケネス・ブラナーの自伝的な作品です。

 

カラー映像で現代のベルファストの街が俯瞰で捉えられ、やがてカメラは切り取ったようにモノクロームに変わって1969年8月15日とテロップが出る。ゴミ箱の蓋で騎士ごっこをして走り回る主人公の少年バディは、この日も街の人たちと気さくに話しかけながら駆け回っている。ところが、どこからともなく暴徒のような集団が現れる。慌てて家に逃げ込む住民たち。襲ってきたのはプロテスタント武装集団で、カトリック住民を攻撃するためにチンピラを中心に集まってきたのだ。

 

次々と家が壊され、人々は逃げ惑う。暴徒が引き上げた後の瓦礫の中で、街の人々はバリケードを作り街を守る体制を整える。警察は当てにならず、軍隊の導入で戦車がやってくる。物々しい雰囲気の中、バディの父でロンドンへ出稼ぎに行っていた父が帰ってくる。母は暖かく迎えるものの、緊迫した状況で夫が留守であることが不安でたまらない。バディは近くに住むじいちゃんやばあちゃんと笑い合って過ごしていてこの街が大好きだった。映画はバディの過ごす日常を父がロンドンから帰るエピソードを時の流れとして繰り返しながらつづっていきます。

 

まもなくして、じいちゃんが入院することになる。一方、暴徒を取りまとめるチンピラのビリーは何かにつけバディの父を目の敵にしていた。バディは学校でも成績優秀で、同じクラスのキャサリンのことが好きだった。バディの父にはロンドンで正社員で働かないかと誘われていて、母や家族に相談するが、バディはこの町を出たくないと泣き喚く。悩むなか三ヶ月が経つ。

 

バディをいつもそそのかす不良少女のモイラは、ビリーらがドラッグストアを襲うのに乗じて、盗みに入ろうとバディを誘う。そして、バディは訳もわからず洗剤を盗んで帰ってくる。怒った母は、ドラッグストアへ返しに行かせるがそこでビリーに会い、ビリーは軍隊に捕まらないようにバディと母を人質にしてしまう。そこへ父が現れ、レンガを投げつけてバディらを助ける。

 

ドラッグストアの事件でこの街に嫌気が刺した母は、ロンドンへ家族で移る決心をする。時を同じくしてじいちゃんが死んでしまう。葬儀で送り出した後、荷物をまとめてロンドンへ向かうバスに乗るバディたちをばあちゃんが見送るカットで映画は終わる。

 

淡々と流れるベルファストに住む一家族の物語なのですが、月面着陸や、当時の映画を挿入しながら時代を描写していく展開が実に上手い。ラストのばあちゃんのクローズアップが映画を引き締めて終わるエンディングも見事。静かな作品ながら非常に良質な映画でした。

 

「猫は逃げた」

この映画好きです。とっても洒落れた恋愛コメディという空気感、猫を巧みに潤滑油に使ったストーリー演出がとにかく微笑ましい。クライマックスの四人の延々としたワンシーンワンカット長回しが絶品。とっても気持ちのいい映画でした。監督は今泉力哉

 

漫画家の亜子が離婚届にサインしている場面から映画は幕を開ける。傍にいる夫の広重は、飼い猫のカンタをどっちが引き取るかで意見を言い、亜子と言い合いになっていると、カンタは離婚届の上でおしっこをしてしまい大騒ぎになって物語は始まる。

 

雑誌編集部に勤める広重は、同僚でカメラマンの真実子と不倫関係にある。一方亜子は編集担当の松山と不倫関係にあった。お互い好き同士で関係を繰り返している場面が続く。かつて広重と亜子が付き合っていた頃、カラオケに来た二人は亜子が生理が遅れているという言葉に広重は引いたように外へタバコを吸いに出た。そこで捨て猫を拾う。困った広重は亜子に電話し、二人はこの猫をきっかけに結婚する。カンタには近所のお婆さんが飼っているミミという彼女もいた。

 

ある時、いつものように自宅でいちゃついていた亜子と松山だが、亜子がふと猫のカンタがいないことに気がつく。一方の広重はノーパン映画をとった監督のインタビューの後、いつものように真実子をホテルに誘おうとして、今日は従姉妹が来てるからと断られたところへ亜子からカンタがいなくなったと連絡をもらう。広重と亜子は必死で探すも見つからず、張り紙をする。

 

カットが変わると、真実子は、いつまでも広重が離婚してくれないことに嫌気がさして、亜子と松山の不倫現場の写真を撮ろうと広重の家の前でカメラを構えていた。そこへ、カンタが家を出てくる。真実子はカンタを誘拐し連れ帰ろうとするが、たまたま松山の帰り道に出会う。そして、松山を共犯に引き込み、カンタは真実子の家で飼うようになる。カンタがいなくなれば広重夫婦もあっさり離婚してくれると考えたのだ。そして離婚後亜子にカンタを返す段取りだった。

 

ある時、ノーパン映画をとった監督の不倫現場を押さえようと広重と真実子はホテルで張っていた。そこへ、松山から少し帰りが遅れるのでカンタに餌をやって欲しいと連絡がはいる。松山は亜子とベッドにいたが、どうも最近しっくり行かなかった。真美子は適当な理由で広重を残してその場を離れ、家に一時帰ると言う。ところが、広重は真実子のカメラバッグに猫の毛を見つけてしまう。

 

真実子が部屋に戻りカンタに餌をやっていると、おかしいと思った広重がやってくる。タマだと言い張る真実子を問い詰める広重だが、カンタはまたどこかへ行ってしまう。

 

広重の家で、真実子、松山、亜子らを交えて四人でことの経緯を話し、結局、広重と亜子は離婚するのかどうか、広重は本気で真実子を思っているのか、亜子は本気で松山を思っているのかと言う錯綜したコミカルな言い争いが始まる。このクライマックスが実に楽しい。そして、行き詰まったところへ猫の鳴き声、カンタが戻ってきた。そしてカンタを挟んで亜子と広重の微笑ましい姿を真実子と松山は目にする。

 

時が移り、ナレーションの中、カンタはまもなくして腎不全となり、広重と亜子が二人で看病せざるを得なくなるが、二ヶ月ほどで亡くなってしまう。しかし、カンタの彼女ミミのお腹には赤ちゃんがいて四匹の子猫が生まれる。子猫は広重、亜子、松山、真実子に引き取られ、松山と真実子は付き合うようになったことが知らされ四人で河原で写真を取って映画は終わって行く。

 

良いなあ、本当に微笑ましいほどに癒される映画です。やはり今泉力哉監督、映画作りのセンスは抜群だと思います。良い映画を見ました。。