くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ベルファスト71」「ぼくらの家路」「ザ・ヴァンパイア残酷

kurawan2015-09-22

ベルファスト71」
緊張感はあるけれども、全体が平坦で、これという盛り上がりもないアクション映画でした。

いや、解説に書かれているほどなアクション映画というより、アイルランドIRAとイギリス人との確執を背景に、プロテスタント系とカトリック系の対立を軸に描いたドラマという感じの方が強い。監督はヤン・ドマンジュ。

映画は、主人公ゲイリーがボクシングをしているシーンから始まる。軍隊に属する彼は、アイルランド北部のベルファストで、警察隊が地元の住民を捜索するのに援護して欲しいと依頼され出かける。

新前で判断力の弱い隊長の指示通り、ほとんどの重装備をせずに、入ったが、住民の敵対心が強く、暴動に近い状態に陥る。その中で、銃を奪われたゲイリーはその犯人を追いかけるうちに、部隊に置いていかれる。当然、彼を目の敵にする急進派のグループから追い詰められていくが、味方だと称する少年に助けられたりする。

しかし、急進派に対抗するために作った爆弾が、誤って爆発し、少年は死んでしまう。その時の傷で瀕死の状態になったゲイリーだが、今度は別の市民に助けられ、一方、軍隊側も捜索隊がやってくる。

結局彼は助けられるのだが、彼を殺してしまおうとする若者たちとの時間を争うサスペンスなクライマックスのはずが、いまひとつ、垢抜けていかない。

全体が暗いのと、ストーリーが平坦なのと、背景がイマイチはっきり見えないために、妙にメッセージが表に出てくるラストシーンとなる。

面白くないとはいえないが、手を叩いて面白かった娯楽映画でもない一本でした。


「ぼくらの家路」
ベルリン映画祭正式出品作品という話題の一本。監督はエドワード・ベルガーという人である。

とにかく、つかみどころがない作品で、決して駄作ではないのですが、出てくる人物どれもが、どう考えてもおかしい。
ストーリーは、男好きの母親から疎まれ、半分捨てられた感じの兄弟。一旦、一人は施設に、一人は母親の元に残るものの、母は自分に預けられた弟を友人に預けて、また男のもとへ。

たまたま施設でトラブルを起こし、母のもとに戻った兄ジャックは、弟マヌエルを連れて母親を探しに行くのが本編となる。

盗みをし、放置された車で寝泊まりしたりして、母が戻ってくるのを待つ。いつもメモを入れておく下駄箱に、戻っている旨を知らせながら、3日が経った夜、母が戻っているのがわかり、母のもとへ。

しかし、ジャックが残した母へのメッセージを母が見ている様子がないことから、見切りをつけ、弟マヌエルを連れて、母を残して二人だけで施設へ戻ってエンディング。

なるほどそういう映画かと思わせる一本。

映画は、ジャックとマヌエルがベッドで寝ているシーンから始まる。次のカットで、テキパキと朝食の準備をするジャック。どうやら母親は男遊びをしている様子。父は出て行ったのだろう。

そんな冒頭から、ジャックは、母が連れ込んだ男に反抗的に接し、母は、子供が可愛いという描写が頻繁に出るが、本当は男狂いである。

男と寝ているベッドに平気で入るジャック、真っ裸で子供にパンを与える母、誰もが異常である。

結果、なるべくして迎えるエンディングなのだ。クオリティは高いのはカメラワークや、シーンの捉え方、人物描写など認めるけれども、それ以上でもない映画だった気がします。感情移入も感動も、心が動揺する部分が全くない映画でした。


「ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女」
お世辞にも面白いといえない。ヴァンパイア映画が大好きなので期待してみたのですが、必要以上のスタイリッシュさと、妙にセンスのよくない音楽の融合、ストーリーテリングの弱さゆえに、しんどくてしんどくて、ストーリーに放り込めない。いや、ストーリーがあったのかさえ定かではない映画でした。監督はアナ・リリ・アミリプールという人。

サングラスをかけた青年が、猫を抱き上げるところから映画が幕を開ける。モノクロームで統一された陰影美しい映像なのですが、背後に流れるのは、ちょっとマカロニウエスタン風のテンポの曲。曲が流れるたびに映像のリズムが途切れる。つまり映像と音楽が一体になっていない感じなのです。

この青年、借金をしているらしく、いかにも悪者風の男に無理やり車を取られる。ところがこの悪者、娼婦を蔑んだ行動をとった後、ベールをかぶった一人の女につきまとわれ家に連れ帰る。このベールの女こそヴァンパイアで、この悪者は襲われる。

夜の闇にまぎれ、ちらほらと登場人物の周りに現れるこのヴァンパイア。少年には「いい子でいなさい」と諭し、娼婦には悪者から奪った宝石を与える。道端のホームレスを襲い、主人公の青年となにやら恋に落ち、青年の父で、ヤク中の厄介者を襲う。

最後は、この青年とヴァンパイアが車で去って行ってエンディング。

モノクロームのスタイリッシュを狙った映像、スローモーションを見せたり、レコードやカセットテープから流れる、ちょっとテンポが違う音楽。どれもチグハグで、それがこの作品の個性なのか、私に理解できない感性なのか、どうも眠くて眠くて仕方なかった。

芸術でもなくホラーにしては中途半端で、不可思議な空気だけが漂う映画でした。