くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「名も無い日」「Mr.ノーバディ」

「名も無い日」

なかなかいい映画でした。じわじわと伝わってくる人生のドラマが映像として美しく表現されているのがいいです。監督は日比遊一

 

名古屋の熱田神宮の祭りでしょうか、提灯を丸く飾った船が入江をゆく場面から映画は始まる。ニューヨークで写真家として仕事をしている達也が日本へ帰って来る。弟の章人が亡くなった、しかも孤独死で半年間見つからなかったということである。三男の隆史が出迎え、達也は故郷でのこれまでの人生を振り返り始める。その中で次第に見えてくる次男章人の人生、という流れで展開していきます。

 

達也は祖母が暮らす施設を訪れ、同級生が営む店に飲みにいき、親友八木の息子と語り合ったりする。隆史の結婚が決まった夜、達也、章人らと自宅で飲むひとときの思い出。章人は東大出でハーバードまで行ったインテリだった。父が癌で亡くなった時、すでにニューヨークに行っていた達也に、全て自分がしておくからという手紙なども出していた。達也は、26年前に死んだ同級生の母とも出会い、その墓参りなどもした。

 

音信が途絶え、警察に連絡して章人の家に入ったのは隆史夫婦だった。すでに腐乱していて、誰かも判断できず、DNA鑑定するしか無いということだった。まもなくして、章人であることが判明、簡単な葬儀を行う。

 

かつて、章人が一人で暮らす家に帰ってきたことがあった。しかし、家に中はゴミ屋敷のようになっていて、達也は掃除をしてきれいにするが、帰ってきた章人は自室にこもってしまう。掃除をしていて、章人が眼科にかかっていることを知り、病院で病状を聞くが手術を拒否されて、すでに手遅れだという。達也にニューヨークから仕事の催促が来て、部屋にこもっている章人に、自分は兄弟だと啖呵をきって出て行く。

 

結局、達也は章人の力になれなかったことが悔やまれ、罪の意識にカメラを構えるもシャッターを押すこともできない。そんな達也に隆史は兄弟だからと話す。達也が間も無くニューヨークに帰ることになり、隆史は海辺の突堤で別れを言う。そこはかつて章人が兄達也の自慢をいつもしていた場所だった。別れ際、隆史の妻真希は、達也に何やら耳打ちする。おそらく妊娠したことを知らせたのだろう。子供はまだかという達也の口癖に応えたのだ。

 

達也は、勇気を出して章人が死んだ家の中に再度入る。そこで、章人の死体があったところに影を見つけ、カメラを向けてシャッターを切る。そして、章人が最後に暮らした部屋の中をカメラに収め、家を後にする。突然、提灯が灯る。それは祭りの始まりを告げていた。こうして映画は終わっていきます。

 

さまざまな心理ドラマを、過去に関わったさりげない人たちとの接触を通じて、様々な方向から人生を語っていく筆致が実に上手いし、物語自体はそれほど複雑では無い上に、章人がなぜ死んだかという真相を具体的に説明するわけでもなく、包むところは行間を読むことに任せた演出も秀逸。しかも、映像表現としての絵作りもよくできているので、見ていて飽きさせない魅力もある。非常に良質な秀作だったと思います。

 

「Mr.ノーバディ」

爽快!痛快!スカッとしてしまうほど面白いアクション映画でした。宣伝フィルムから想像もつかない吹っ飛んだ展開にラストはもう拍手してしまいました。面白かった!監督はイリヤ・ナイシュラー。

 

一人の男が手錠をされて、二人の捜査官の前に座らされている。男はおもむろに缶詰を出し、懐から猫を出して餌を与える。捜査官が「何者?」と訪ねて映画は始まります。

 

月曜、火曜と曜日を細かく出しながら、一人の男ハッチがルーティーンに仕事に行き、ゴミ出しに遅れ、妻に愚痴を言われ、息子に疎まれる日々をスピーディに描く。会社でもいつもの仕事、家では普通の父親、ベッドでは妻は枕で境界を作って寝ている。そんなある夜、二人の強盗が家に忍び込む。ハッチはゴルフクラブを構えるが、飛び込んできた息子が一人の犯人を羽交い締めに、そこへもう一人が銃を向けるが、ハッチはゴルフクラブを振り下ろさず、息子に離してやれやれという。後でわかるが中には弾は入っていないことをハッチは見抜いていた。犯人はそのまま慌てて逃げていくが、不甲斐ない父親に息子はさらに軽蔑心を高める。息子には軍隊経験はあるが会計士だったと答える。ますます息子は父を軽蔑する。隣に住む男は父の遺産のスポーツカーを見せびらかし、ハッチの息子は羨ましがる。ハッチは会社では、この会社を買い取りたいと申し出ている。

 

幼い娘が、猫のブレスレットが無いと夕食の時に言い出し、先日の強盗が持って帰ったものと思ったハッチは突然家を出て、施設にいる老父の元を訪れる。そして、古いFBIの身分証を持って出て行く。二人の強盗のうち一人の刺青を見ていたハッチは犯人探しを始めた。そして、犯人の家にたどり着き、ブレスレットを返せというが無いという。痛い目に遭わそうと銃を向けたが赤ん坊の声が聞こえ、普通の夫婦だと思ったハッチはその場を後にする。

 

帰りのバスに乗っていたハッチは、突然、酔っ払いの集団がバスに乗ってくるのに遭遇する。ハッチは運転手を外に出し、バスを閉め切って、若者たちを相手に大暴れする。そして中の一人を瀕死の重傷にしてしまう。

 

カットが変わり、ユリアンというテロップで、一人のロシア人がクラブへやってきて舞台で好き放題に歌いまくり、仲間らしい男たちの前でサイコな振る舞いをする。彼はロシアンマフィアの基金を預かっていた。ハッチは会社のオフィスで何やらアンプのような機械で誰かと話していた。先日痛い目に合わせた一人の若者はロシアンマフィアのユリアンの息子テッドで、結局テッドは死んでしまい、ユリアンは報復を考えているらしいとのこと。

 

ユリアンは部下に、バスでの出来事の時に手に入れたハッチの交通パスから身元を探らせていた。しかし、政府の情報にアクセスしたものの名もない人物、ノーバディと結果がきて、目隠しだらけの資料が届く。それは逆に只者では無いということだった。

 

まもなくして、ハッチの家庭の夕食の団欒の時間に、大勢のロシアンマフィアが押しかけてくる。ハッチは素早く自宅の地下室に家族を避難させ、スイッチを押すとしっかりとしたドアが閉まる。そしてハッチはロシアンマフィアを迎え撃ち、全員を倒した上、隣のスポーツカーを拝借、そこへさらにロシアンマフィアが追ってきたので、カーチェイスの末、ユリアンの片腕も倒してしまう。その時、かつて自分が政府の汚れ仕事ばかりしていた時、命乞いをした一人の男を逃してやった。後でその男を調べてみると、暖かい普通の家庭を持っていて、それが羨ましく、自分も欲しくなって、政府の仕事を辞めたのだと告白したりする。

 

ハッチは家族を実家に避難させ、自分は隠していた金塊を持って会社を訪れ会社をその場で手に入れ、中で様々な武器や仕掛けを作る。一方、ハッチを倒せなかったユリアンの部下はハッチの父の施設にやってくる。ところが老父は突然ショットガンを出して返り討ちにする。彼もまたハッチ同様の仕事をしていたのだ。ハッチがやってきて、再発動だと衣装を着て颯爽と出て行く。会計士とは、三文字の組織の中では手のつけられない名のない人物という意味だった。

 

ハッチはユリアンの自宅を襲い、ユリアンのコレクションの名画を焼き、管理しているロシアンマフィアの基金である現金全てを灰にして、ユリアンのクラブへ乗り込む。そしてここで手を打つかどうかを迫るが、拒否したユリアンはハッチを追ってくる。ハッチは工場へ誘き寄せ最後の決戦をしようとするが、銃撃されてなかなか工場へ入れない。そこへ突然、ライフルを持った黒人が応援する。ハッチが会社で会話している無線の相手だった。さらに老父もマシンガンで応戦。こうして後はハッチ、仲間の黒人、老父対ユリアン達との大攻防戦が始まる。もう爽快そのもので、次々と仕掛けが爆発したりして敵を倒して行く。

 

そしてユリアンも倒して一件落着、老父たちは帰り、ハッチは家族を呼び戻し、三ヶ月後新居の内覧をするハッチ夫婦。突然ハッチに電話が入り何やら聞いて、その後、妻が地下室があるかと業者に念押し。カットが変わり、バンに乗る老父と黒人、後ろには大量の武器が載っていて映画は終わる。もう最高である。面白いという一言のみの爽快アクションでした。