くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アデルの恋の物語」

アデルの恋の物語

四十年ぶりくらいの再見でしたが、部分部分覚えている場面も多々ありました。イザベル・アジャーニの圧倒的な鬼気迫る演技に引き込まれる映画で、ひたむきというか偏執的な一人の主人公アデルの恋の物語に、異常さより純粋すぎる何かが見えた気がしました。監督はフランソワ・トリュフォー

 

北米アリファックスの港に一人の女性アベルが船で到着するところから映画は始まる。実は彼女はフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの次女で、かつての恋人で今もなお恋焦がれるピンソン中尉を追って両親に嘘をついてやってきたのだ。彼女はサンダース夫人の下宿に逗留し、ピンソン中尉に恋焦がれている旨の手紙を託すが、ピンソンの反応は冷たかった。ピンソンにとってアデルは女遊びのうちの一人だったのだ。アデルはピンソンへの愛を繰り返す一方、両親には金の無心とピンソンとの恋が順調であるという嘘の内容を送っていた。

 

切羽詰まってきたアデルは、父ヴィクトルから結婚の承諾書を得たことを利用して、ピンソンと結婚したと嘘の連絡をする。ヴィクトルは早速新聞の掲示板にその旨の記事を載せるが、間も無くピンソンによって拒否される。次第に常軌を逸していくアデルは、たまたま見かけた催眠術のショーで、その催眠術師を利用しようとさえ考える。さらに、ピンソンが婚約をした判事の娘との結婚さえも妨害行為を行う。そんな頃、母が亡くなる。さらに、アデルの行動に恐れさえ抱いたピンソンだが、バルバドスへの転任が決まる。

 

サンダース夫人の下宿を出て、簡易宿泊所で寝泊まりし、ボロボロになったアデルはさらにピンソンを追って来るが、黒人街で倒れてしまう。黒人の夫人に助けられたものの彼女の精神は完全に崩壊していた。ピンソンは今では大尉となっていたが、アデルを街で見かけたという噂でアデルに会いにいく。しかし、道ですれ違ってもピンソンのことに気がつかないアデルに出会ってしまう。アデルを助けた黒人の夫人はヴィクトルに手紙を書き、今はパリに戻ったヴィクトルの元に連れ帰ってあげると連絡をする。

 

アデルはその後精神病院に入り四十年を過ごす。やがてヴィクトルは亡くなり、盛大な国葬が行われたという映像から、アデルが第一次大戦の最中にひっそり亡くなったというテロップで映画は終わる。

 

緩急をつけた映像と編集、イザベル・アジャーニの熱演、テンポの良いストーリー展開、トリュフォー作品の中ではハイレベルな一本、やはり良い映画でした。