くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「声優夫婦の甘くない生活」「ハッピー・オールド・イヤー」「また、あなたとブッククラブで」

「声優夫婦の甘くない生活」

予想に反してなかなかの佳作でした。最近のイスラエル映画は侮れません。それほど長くない物語の中に洒落た展開が散りばめられています。ある意味素敵な映画という一本でした。監督はエフゲニー・ルーマン

 

1980年代、ソ連からの海外移住が自由になった時代、ユダヤ人夫婦のヴィクトルとラヤはイスラエルにやってくるところから映画は始まる。二人はソ連では有名な声優で数々の外国映画の吹き替えで有名だった。しかしイスラエルではその需要がなく、ラヤは夫に内緒でテレフォンセックスの仕事につく。最初は躊躇っていたが、次第に固定客も着くようになる。

 

一方ヴィクトルもビラ張りの仕事につくが、ある時、違法なレンタルビデオ店に立ち入ったことから、映画を盗撮して違法ビデオをつくる吹き替えの仕事に着く。しかし、盗撮現場を抑えられ逮捕される。しかし、映画館主がヴィクトルのことを知っていて、一緒に仕事をしようと持ちかけてくる。ヴィクトルは映画館主の依頼ではなくフェリーニの新作を上映したいと持ちかける。

 

そんな時、たまたま新聞広告でテレフォンセックスの広告でヴィクトルが電話するとなんとでたのはラヤだった。仕事から帰ったラヤをヴィクトルは責める。ラヤは出ていき職場の上司の部屋に住むことになるが、ヴィクトルから、フェリーニの吹き替えをしようと持ちかけられたものの断っていた。

 

ラヤは彼女を贔屓にしてくる客の一人にデートに誘われていた。彼女は真実を告げられず、待ち合わせ場所で待つ男性を上のレストランから見下ろしていた。そこへ待ちくたびれてトイレを借りに来たその男性と遭遇。彼とは話をして盛り上がる。その後、ラナはその男性に職場まで送ってもらい、去り際に自分が待っていた女性だと告白する。

 

ラナが出ていって一人になったヴィクトルは、この日フェリーニの新作の吹き替えが終わり上映されようとしていた。上映室から客席を見るが客は半分くらいしか入っていない。そこへ突然イラクからミサイル攻撃があったと警報がなり、かねてから配布されていたマスクを被ろうとするが、ラナが出ていく時に置いていったのを思い出し、ラナの元へマスクを持って走る。しかしラナは職場に居ず、映画に行ったらしいことを知る。なんとラナはヴィクトルが企画したフェリーニの映画を見に来ていたのだ。

 

こうしてなんとなく二人はよりを戻す。ヴィクトルはラナが兼ねてから希望していた海辺の街に住もうと提案する。そして引っ越しの日、ヴィクトルが部屋でスイッチを入れたり切ったりして映画は終わる。なんとも洒落たラストである。

 

一見、下手なヒューマンドラマのようですが、非常に作り込まれた脚本と、さりげなくテンポの良い演出が見事にコラボして完成されていて、見ていて心地よくなってくる上に甘酸っぱいラブストーリーも見え隠れする。なかなかの佳作でした。

 

「ハッピー・オールド・イヤー」

物を捨てたり返したりすることを通じて描くちょっと不思議なラブストーリーという感じで楽しめました。監督はナワポン・タムロンラタナリット。

 

自宅を大幅に改装するため友人のピンクに頼む主人公ジーンのショットから映画は始まる。余計な感情をいれずにどんどんゴミ袋に入れていくジーンだが、かつてピンクに作ってもらったCDを捨てるところをピンクにさりげなく非難される。

 

全てをごみ収集に出したジーンだがピンクの言葉が気になり急遽ゴミを取り戻し、元の持ち主に返すことにする。借りていた品や、修理を頼まれていた物を返しながら、かつての恋人エマにあづかった写真を送付して返すが、受取拒否で戻って来る。仕方なく、ジーンが直接持参し、エマの今の恋人ミーと出会う。

 

物語はエマと再会したことで、かつて何も言わず別れたことを謝り、さまざまな思い出を回想し、一方でジーンの家族を捨てた父が弾いていたピアノを処分することで母と言い争いをしたりする。

 

結局エマはシンガポールへ去り、ジーンは母を騙してピアノも処分、全て片付いてピンクにあとは任せるところで映画は終わる。ジーンの顔のアップで映画は暗転するが、思い出の数々の物を通じて展開する物語というちょっとオリジナリティある作品で、その意味面白く見ることができました。

 

「また、あなたとブッククラブで」

今やお爺ちゃんお婆ちゃんになったかつて一世を風靡した名優たちが集って描く物語ですが、一見、歳をとってもまだまだ夢を捨ててはダメ的な話ですが、セリフを喋ればSEXばかりで、欲求不満のおばさま映画にしか見えない。しかもきっかけになる「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は最初だけで消えてしまう。もっと洒落た映画にできるだろうにと思える映画でした。監督はビル・ホールダーマン。

 

今や、様々な分野で成功し、安穏とした生活を送るダイアン、ビビアン、キャロル、シャロンは、読書会と称して様々な本を読みながら話をする会をしていた。今回選んだのは過激な性表現で話題の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」。最初は躊躇うも、次第にのめり込んで行く四人。やがてそれぞれにお相手が見つかり、久しぶりの恋の予感に戸惑いながらも次第にときめき始めていく。

 

あざとい演出と展開が少々鼻につくのですが、これだけの名優が揃うと、それなりに無難にこなしていくから見事。嫌味になる寸前になんとかハッピーエンドへ流れていく。これだけの役者揃えたのだからもっとしっかりした脚本を準備すれば素晴らしいものになりそうですが、普通の映画に仕上がっていました。