くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ソングバード」「愛する人に伝える言葉」

「ソングバード」

ウイルスのなんたるかとか、感染力のなんたるかは完全に無視して、アメリカ映画らしい適当感満載の、しかもツッコミどころ満載の映画でした。お世辞にも面白いとは言えないB級感のてんこ盛りには参ってしまいますが、逆に言えば肩が凝らない凡作でした。監督はアダム・メイソン。

 

致死率が5割近い脅威のウイルスが蔓延しているロサンゼルス。感染者はQゾーンと呼ばれる地区に隔離され、空気感染のために外出も禁止、唯一、免疫力のある人は手に黄色のブレスレットを配布され昼の外出ができた。主人公ニコは免疫力があるためにレスターが運営する宅配の仕事をしている。ニコには、ドア越しにしか会えない恋人のサラがいた。

 

ここに違法に免疫者を示すブレスレットを販売しているウィリアムとパイパーという夫婦がいて、彼らには免疫のない娘がいた。ウィリアムはなにやら音楽プロデューサーらしく、ミュージシャンを目指すメイと不倫をしているがそれは立場を利用してのセクハラだった。そんなメイは、配信でファンになっていてレスター宅配でドローンによる配達員の追跡などを受け持っているドーザーと知り合う。

 

ある時、サラの祖母が発病、感染者は自動的に衛生局に通報されるシステムで、衛生局のハーランドらがサラの家に向かう。サラがQゾーンに隔離されるのを阻止すべく、ニコはウィリアムの家に押しかけ、違法ブレスレットを手に入れようとするがパイパーに嘘の情報を渡され、ハーランドの待ち伏せにあってしまう。なんとか脱出したニコは強引にパイパーの元へ再度向かう。え?という感じです。

 

一方パイパーは夫ウィリアムの浮気を責め夫をを追い出してしまう。ウィリアムはメイの元へ向かおうとするが、かねてからウィリアムを遠ざけようとしていたメイはドーザーに助けを求める。ドーザーはドローンでメイのところにきたウィリアムを撃ち殺してしまう。

 

ニコはパイパーに同情されてブレスレットをもらう。それなら最初に与えてやれよという感じであるが、サラの元に急ぐニコ。サラの家にはハーランドらのチームが向かっていた。って、なんかこの時だけ衛生局はえらく鈍い動きである。そしてサラは衛生局の車に拉致される。その車をドーザーがドローンで追い、ブレスレットを持ったニコが追う。そしてQゾーンの入り口でサラの腕にブレスレットをつけてやり、免疫者として収容を免れハッピーエンド。というか、サラは免疫者だったのだが、なぜ今までわからなかったの?という感じです。

 

免疫者でも他人に感染させる可能性あるのだからマスクしないとあかんのと違うの?とか、感染したサラの祖母は普通にマスクもせずサラに話しかけるし、そもそも、ロサンゼルス以外の世界はどうなってるの?とか、パイパーの娘に話はどうしたの?とか、いろんなところが矛盾だらけですが、さすがにマイケル・ベイ制作だけあって、ややこしいリアリティはそっちのけで娯楽エッセンスだけでGoをしている感じです。とはいえ映画自体のストーリー展開は全然面白くないし、細かいカットで緊迫感を出しているようで全然出ていない適当な演出。まあ、凡作エンタメの極みという映画でした。

 

愛する人に伝える言葉」

なんとも芸のない脚本と演出、しかも、クリスタル演じるカトリーヌ・ドヌーヴは、それほど精細がないし、彼女でなくても良かったのではと思えるようなストーリー展開。さらに、セシル・ドゥ・フランスの演じる女医の存在も果たしてなんの意味がと思えるエピソードになって物語を膨らませているように見えない。ドクター・エデの医療方針の映画的な作品にしか見えなかった。唯一、ラストシーンのカメラ演出だけが映画的だったかと思える映画でした。監督はエマニュエル・ベルコ。

 

ドクター・エデが医療従事者を集めてのミーティングをしている場面から映画は始まる。亡くなった患者に接する心の問題を素直な意見の交換で話し合う場面。カットが変わり、膵臓がんのステージ4で、もはや手遅れとなっているバンジャマンがドクター・エデの前で診察を受けている。傍に母クリスタルが入ってくる。エデとバンジャマンとのやりとり、余命を告げるかどうか、緩和治療をするかどうかなどを話し合っている。

 

バンジャマンは演劇学校の教師で、時折、その授業シーンが挿入され、そこに別れの稽古などを交えている。バンジャマンには別れた妻とまだ認知していないらしい息子がいる。息子とエデが話をする場面などが描かれる。映画は、エデの治療とバンジャマンの闘病する姿、母クリスタルの苦悩などを淡々と描いていくが、これという工夫のある映像は見られない。

 

夏に始まった物語は秋、冬、春と続いていく。バンジャマンは次第に弱ってきて、授業もできなくなる。一方息子はなかなか父の病室に入れない。クリスタルもどう対処して良いかわからないままにうろうろするばかり。唯一エデが真摯にバンジャマンに向き合い、傍の女医ユージェニーがいつの間にかバンジャマンと心を通わせている。しかもキスシーンまであるのだが、心理描写ができていないのでかなり唐突に近い。

 

やがて、バンジャマンの最後の時が迫る。傍に、この病院で常駐しているのかギターを弾く男性がバンジャマンが好きだったという曲を弾き始める。クリスタルがほんの少し洗面所へたつが、戻りかけるとギターの音が止み、病室に入るとバンジャマンは亡くなっている。傍に息子が立っていてクリスタルは息子の手を握る。姪の結婚式で車を飛ばしていたエデの元にバンジャマンがなくなったという知らせが来て映画は終わる。

 

カトリーヌ・ドヌーヴセシル・ドゥ・フランスは客寄せだけに配役したのではないかという感じで、映画は至って平凡な作品でした。