くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・コントラクター」「千夜、一夜」

「ザ・コントラクター」

なんとも単純明快なアクション映画だった。なんの捻りも工夫もなく、原因が分かればそれに対処していくだけのストレートな展開はある意味心地よい。B級アクションはこれでいいのではと思います。そんな一本だった。監督はタリク・サレ。

 

主人公ジェームスは、膝の故障で特殊部隊を解任され自宅で過ごしていたが、新しい指揮官に呼ばれて空軍基地へ出向く。しかし、そこで正式に除隊となってしまう。家族を養うために、友人のマイクの紹介で民間の軍事会社に雇われることになり、リーダーのラスティの指示により、生物兵器を開発したテロ組織からデータを盗むためにベルリンに飛ぶ。ところが任務にどこか不自然を感じたジェームスがその処理に手間取っていると何者かに警察を手配され、罠に嵌められたことを知る。

 

負傷したマイクを連れてジェームスは窮地を脱出、膝の故障でマイクに同行できなくなったジェームスはマイクが戻ってくることを信じて、マイクを送り出す。なんとか体調が回復したジェームスがマイクから指示されていたホテルで逃走用の一式を身につけるが、マイクが現れない。不審に思ったジェームスがラスティに連絡を取るとマイクは死んだという。ラスティから指示された救出場所に向かったジェームスに、何者かから銃撃を受ける。

 

なんとか敵を倒したが、ラスティに裏切られた形になったと告白した一人の敵から、万一の時の脱出方法を教えてもらい、ジェームスは瀕死のままその隠れ家へ連れて行ってもらう。ここは大丈夫だとそこの主人は言ったが、そこへもラスティの部下が迫り、家ごと爆破して脱出したジェームスは、アメリカへ戻ってくる。そんな簡単に?と思いながらも、なんとも単純な展開である。

 

アメリカに戻りマイクの家に行くとなんとマイクは生きていた。ジェームスはマイクの後をつけるが、マイクに気づかれ、マイクにこのままでは家族も危ないと言われ二人でラスティを倒すことにする。そんなに簡単なんや。そしてラスティのアジトにやってくるが銃撃戦の中マイクは撃たれて死んでしまう。ラスティを倒したジェームスは晴れて自宅に戻ってくる。息子の名前を呼ぶジェームスのカットで映画は終わる。

 

あれよあれよと単純に展開し、そこに複雑な裏付けも、映像的な工夫もないシンプルの塊のような単純な映画でしたが、軽く見るには最適の娯楽映画だった。

 

「千夜、一夜」

これはなかなかの秀作、全体に淡々と流れるストーリーながら、それぞれの登場人物の味が描き分けられている上に、物語の骨子である、待つ、というテーマがぶれずにラストまで流れていく。もちろん演者に芸達者を揃えたということが功を奏しているかもしれませんが、それでも、これだけの物語をここまで描き切った演出力は評価できると思います。難を言うと、もう少し所々にキレがあれば傑作になったかもしれません。監督は久保田直。

 

漁師の春男が漁をしている場面からカットが変わると浜辺を歩いている登美子の姿。浜辺にはさまざまなゴミが流れ着いている。登美子が水産加工場でイカの調理をしていると春男がやってきて登美子になにやら魚を置いて帰る。春男は登美子に世帯を持ちたいと言っていた。登美子の夫は三十年前に失踪したままで、失踪当時はビラを配ったりしながら情報を集めたりしていた。場所は佐渡島、拉致されたかもしれないという特別失踪などの手続きもある。登美子は春男の申し出になんの返事もしていなかった。

 

そんな時、二年前に夫が失踪したという奈美という女性が現れる。登美子は当時の状況などを奈美から聞き、特別失踪にあたるかの調査を始める。二人で歩く場面を延々と長回しで見せるシーンが実に良い。奈美の夫は教師をしていて、ある朝、ふらっと出て行ったきりなのだという。奈美は三十年も夫を待っている登美子の事をある意味尊敬するものの一方では自分にそこまでできるのかという疑問もあった。奈美が勤める病院では奈美のことを思っている若者もいた。そんな若者に奈美は次第に心が揺らぎ始めていた。

 

登美子も、次第に忘れていく夫の面影に戸惑いを覚える一方、春男が真摯に登美子に心を寄せてくることに揺れる思いもあった。周囲の応援が重なり、登美子はつい春男にきつい言葉を投げ、春男は一人で船に乗り沖に出て行き行方不明になってしまう。そんな頃、登美子の母が亡くなる。続いて、登美子の夫の母も亡くなり、新潟の本土へ向かうが、その帰り、奈美の夫らしい洋司の姿を見かけ声をかける。

 

洋司はあの朝突然失踪し、海洋調査の船に乗ったりしていた。登美子と話した後、洋司は登美子と佐渡島へ渡り、奈美の家に向かう。一方、奈美は洋司のものを全て処分し、慕ってくれる若者と一緒に暮らし始めていた。そこへ洋司が現れ、奈美は激怒する。夜、一人過ごす登美子のところに洋司が現れる。深夜ベッドで夫に独り言を呟く登美子を見た洋司は思わず抱き締める。翌朝、洋司は登美子の家を出て行く。

 

登美子がいつものように海産物加工場で仕事をしていると、春男が見つかったという知らせが入る。登美子は春男の母の元へ走り、知らせる。しばらくして加工場へあっけらかんとした春男が現れるが、登美子は春男を殴る。海までかけて行く登美子を追って春男も海に入る。そして一緒に暮らそうと叫ぶが、登美子は、誰も帰ってこない、これまでもこれからも同じままだと言って彼方に走り去って映画は終わる。

 

流石に隙のない作品で、平坦なストーリーながら、充実した展開となっている。待つというテーマに絞ったなかなりハイレベルの作品ですが、これだけの役者を揃えた意気込みの感じられる仕上がりになっています。クオリティの高いいい映画です。あとは好きか嫌いかということでしょう。