くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「RED/レッド」「完全なる報復」

RED

「RED/レッド」
痛快なアクションエンターテインメント。もちろんB級映画ではあるけれども、スカっとする連続で飽きさせない展開は見応え十分でした。しかも、ほのかなラブストーリーや人間ドラマさえ挿入するという念の入れようはまさにアメリカ映画華やかなりし頃のB級アクションを彷彿とさせます。難をいえば、もう少しそれぞれの登場人物に個性を与えてほしかったといえばいえなくもありません。

ただ、モーゼス(ブルース・ウィリス)たちを追いつめていく若きCIA職員クーパーさえもが心憎いほどに魅力があるし、モーゼスの相手役のヒロインサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)がなんとも演技が見事で素敵にチャーミングなのがこの映画をさらなる娯楽作品に仕上げたのではないでしょうかね。

もちろん、あり得ない話と言い切ればそれまでかもしれませんが、導入部、曲のリズムに合わせてカメラがゆっくりと回転したり、ブルース・ウィリスを真正面からとらえる安定したカメラショットからいきなり親友してきた暗殺集団を見事なアクションで倒してしまう出だしは見事。

そして一気に本編へ入っていくと、後はあれよあれよとストーリーが展開する。モーゼスの元に次々と集まる奇妙な元同僚、さらにはかつての敵方のご同業にブライアン・コックスなどが寄り集まってくるとまさに豪華キャストがなんとも楽しいし、さらには敵の黒幕さえもおじいさんになったリチャード・ドレイファス、その上CIAの金庫番にはなんと90歳を越えたアーネスト・ボーグナインなんてなんとも小粋で豪華絢爛ですね。そして、どこが見所と呼べないほどに、ほど良いアクションやお遊びがふんだんに取り入れられた脚本の楽しさが最高のエンターテインメントです。

ただ、これもしつこいほどの難をいえば、グアテマラの政治的な事件が物語の結末というのがなんともリアルすぎていけませんね。まぁ、でもここまで娯楽に徹して成功しているなら目をつぶってもいいですね。本当に楽しかった。


完全なる報復
こちらはうってかわってぐいぐいと引き込んでくれるクライムサスペンス。すでに見た方の感想では残酷すぎるというのがあったが、そういうシーンは出だしの四分の一にある猟奇的な復讐シーンのみで、後は主人公クライドの計画的かつ頭脳的な復讐劇がサスペンスタッチと謎解きまで交えたおもしろさでぐいぐいと見せてくれる。

映画が始まると、主人公がなにやらメカニックなものを作っている。そして娘は母親に文字入りのアクセサリーを作っている。そこへチャイム。予想通り2人の悪漢が突然入ってきて、夫を縛り妻と子供を殺す。

しかし、裁判はクライドについた検事ニックの司法取引でエイムスは死刑になるももう一人のダービーは軽い刑になる。当然、ここにクライドのなんともいえないわだかまりが写される。そして10年の時がたつ。

死刑を待っていた犯人の一人エイムスが死刑執行されるが、安らかに死を迎えるはずがなんらかの原因でもがき苦しんで悶絶死する。続いて釈放されていたもう一人の犯人ダービーが拉致され、猟奇的な手段でバラバラ死体で殺戮される。それぞれがクライマックスに持っていってもいいほどのシーンが惜しげもなく冒頭に展開していくので、次はどうなるのかと物語に引き込まれていく。

事件を不審に思ったニックたちが追求していくと、犯人はクライドで、あっさりと逮捕されてしまう。そして、監獄でニックたちと取引を始める。ここからがこのクライドの実に巧妙に仕掛けられた計画的な復讐劇なのです。
最初は自白をする代わりにマットレスを要求したりするが、次第にエスカレート。次々とかつての事件に関わった司法関係の人間がテクニカルな手段で殺されていく様はこの映画の見所です。しかもシェラドンは監獄の中。その上、司法関係の人間が死んでいく手段が実に見事に仕組まれた結果に寄るもので、どれをとってもラストシーンにしても良いほどに周到なのがなんともみごとである。

つぎは?つぎは?と主人公が仕掛けた罠を追っていく展開が実にミステリアスでサスペンスフルなのです。
そして、謎を追ううちに、実はこのクライドという人間は政府の裏組織の人物でメカニカルな手段で殺戮を行うプロであることが明らかになる。そうなると、さらにストーリー展開に奥の深い面白味がでてきて決して飽きさせないのです。

しかしながら、この映画の欠点はジェイミー・フォックス扮するニック達司法関係者への復讐劇ではあるのだが、なんともニックが善人すぎて、次第に悪いのはクライドのほうであるかのように見えてくる点である。
導入部で妻と幼い子供を殺され、悲劇の主人公であるはずが、狂気的な殺人者にしか見えなくなってくるのはちょっといたたまれないところもないではないのです。

ラストは、独房から隠れ家に通じる通路を発見したニックたちがクライドが市長舎の中に仕掛けた爆弾を独房へ移動しておき、それを知らないクライドが爆弾のスイッチである携帯を発信したとたんクライドが炎に包まれる。ここまで周到すぎるほど頭脳的なクライドが難なく隠れ家から独房への通路を発見されるというのもちょっと安易かもしれませんが、それに続いて、自分の爆弾で死ぬことを覚悟したクライドが娘にもらったネーム入りのブレスレットを握りしめる感傷的なシーンを行かせるように前後の演出を工夫すればもう少し奥の深いエンディングになっていたかもしれません
結局、正義はニックで悪がクライドであるかのようにニックが爆破された監獄をバックに出てくるシーンから、娘の演奏シーンを妻とじっと見るショットへの意図も分かるのですが、この辺がちょっとはがゆいです。

でも非常におもしろいサスペンス映画でした。