くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「To Leslie トゥ・レスリー」「告白、あるいは完璧な弁護」

「To Leslie トゥ・レスリー

いい映画でした。アル中になった一人の女性の再生の物語と言えばそれまでですが、周囲の脇役の配置のうまさ、小さなセリフや主人公との絡みがラストで見事に生きてくる脚本の緻密さに頭が下がります。レスリーを演じたアンドレア・ライズボローの名演技の迫力も素晴らしいけれど、周囲を取り囲む登場人物が、しみじみするほどに人間味に溢れている演出が映画を大人の仕上がりにしています。なかなかの秀作でした。監督はマイケル・モリス

 

テキサス州のシングルマザーレスリーがロトで19万ドルという大金を当てて大喜びする場面から映画は幕を開ける。そして6年、さびれたベッドの上で膝を抱えるレスリー、彼女はこの6年で大金を全てアルコールに使ってしまいすっかりアル中になっている。このアパートも支払いが滞り、この朝追い出されてしまう。

 

たった一つのトランクを持って行った先は、息子のジェームズのアパートだった。彼は友人と一緒に暮らしていた。レスリーは、アルコールはやめると言いながらも、ジェームズが仕事に出たら家を物色して金を見つけてはバーに入り浸る。さらにジェームズの友人の部屋に入って金を盗んだことで、ジェームズにも追い出されることになる。

 

ジェームズの窮状を聞いたレスリーの幼馴染のダッチとナンシーがひとまず引き取るが、結局、ダッチが頼んだ仕事もせず、酒を飲み歩くだけなのに嫌気がさしたナンシーは彼女を追い出す。行き場もなく、トランク一つで街外れのモーテルの敷地で眠ってしまう。朝、モーテルの管理人スウィーニーに見つけられるが、トランクを忘れたままそそくさと逃げていくレスリーだった。

 

しばらくして、戻ってきたレスリーにスウィーニーは、モーテルの掃除の仕事を与える。スウィーニーはロイヤルという黒人と一緒に仕事をしていた。元々ロイヤルの父のモーテルだったが、その父が亡くなり、売りに出そうというところでスウィーニーが引き取ったのだ。ロイヤルはこの街の人間でレスリーのことも知っていたが、付き合う友達のグループが違っていた。

 

レスリーは結局前借りの給料で毎晩バーに通うが、店ではナンシーらに冷たくあしらわれたりする。ある夜、ジェームズが幼い頃に名前を掘った公園の木を見つけ、レスリーはやり直す決心をする。そして必死でアルコールを断とうと努力して、その様子にスウィーニーも協力する。ロイヤルは若き日、LSDにハマったために突然裸になって走り回ったり遠吠えする癖があるとスウィーニーはレスリーに話したりする。

 

レスリーは、アルコールを断ち、モーテルの仕事を真面目にこなし始め、スウィーニーに街の戸外パーティに誘われて行くが、そこではかつての仲間のピートやナンシーにからかわれる。帰ってきたレスリーにスウィーニーは、レスリーがロトに当たった時のビデオをみつけてきてみせるが、レスリーはそんなスウィーニーに悪態をついて出て行ってしまう。

 

一人バーに行ったレスリーは酒を頼むが、結局、口をつけず、声をかけてきた男と何気ない会話を交わす。出て行ったレスリーをスウィーニーは探していた。レスリーはモーテルの敷地内にあるさびれたアイスクリーム屋に隠れていたが、夜中、ロイヤルが裸で走り回る姿を見つける。

 

翌朝、レスリーはスウィーニーに頼んで、アイスクリーム屋を自分の食堂にしてみたいと頼む。そして10ヶ月後、レスリーの店は開店するが客は誰も来ない。ナンシーらの仕業だろうと諦めかけた頃、ナンシーが現れる。そして、ロトに当たった時、レスリーが壊れていくのを止めようと思えば止められたのに一緒になって楽しんでいた自分たちを許して欲しいと謝る。そして、みんな家族同様だったのだから落ちぶれても街を出て行かずにいて欲しかったという。そして、13歳のジェームズを残して出て行ったことだけは許せないとキッパリと言って、料理を二つ注文する。そして間も無く店に来たのはジェームズだった。

 

レスリーはジェームズと抱き合い、それを店の外からナンシーがじっと見つめる。レスリーの頬には涙が流れていた。こうして映画は終わっていきます。

 

テキサス州の閉鎖的な田舎町を舞台にした、一見、冷たい町民たちや幼馴染と主人公の物語であるかに見えるのですが、根底に人間味あふれる暖かさがちゃんと存在していたという終盤の展開が素晴らしく、本当の友情というのを大人の視点でしっかり描き切ったストーリーに胸が熱くなりました。良かった。

 

「告白、あるいは完璧な弁護」

目先の思いつきだけでこね回して作った感満載のこれみよがしのサスペンスで、面白いというより、めんどくさくなる。結局、どんでん返しの連続に、とうとう、ネタが見えてしまった凡作だった。韓国映画の質が上がり始めてきたのに、こんな適当な映画作ってたらあかんなあという一本だった。監督はユン・ジョンソク。

 

IT企業の社長ユ・ミンホは、不倫相手のキム・セヒを殺害した疑いで第一容疑者となる。ミンホは犯行を否定し、敏腕弁護士ヤン・シネを雇い真相究明に乗り出す。ミンホには会長の娘との婚約が整った矢先の不倫問題で、その隠蔽の必要にも迫られていた。物語はこうして幕を開けます。

 

ヤン弁護士はミンホが措定した別荘に招かれ、今後の裁判での戦いの準備をするべく問診を始めます。ミンホは、セヒに呼び出されてとあるホテルに行ったが、実はセヒも呼び出されたのだという。しかも金を要求してきたのはミンホだけだった。ところが、突然パトカーがやってきたので二人は部屋を出ようとするが、ミンホは何者かに殴られて気絶、目を覚ましたらセヒが死んでいて、警察が踏み込んできて逮捕されたのだという。

 

ミンホは事件前日にセヒと密会していて、その帰り、車で鹿を避けた際に対向してきた車とぶつかりそうになり事故を起こした。対向してきた車は道路脇に突っ込んで運転手の若者は死んでいたが、警察に連絡すると密会がバレるので、セヒの提案で隠蔽することにし、ミンホはその場を去る。

 

ところが、セヒが若者の車を隠そうとしたが動かない、困っているところへ通りかかった男は車の整備士で、近くに家があり、そこで装置を使えばすぐ治ると言われて牽引してもらったのだという。ところがその整備士ハンは、車の若者の父親だった。そそくさとその家を後にしたセヒだが、真相を知ったその父親ハンが自分たちを襲ったのではないかとミンホは説明する。

 

一見辻褄が合ったが、どこかおかしい。ヤン弁護士は、実はミンホが若者の死体隠蔽に関わったのではないか、そして、セヒを殺したのはやはりミンホであれば辻褄が合うと責める。そして、若者の死体をどこに隠したのかと問い詰める。ミンホは湖に沈めたとその湖を示す。この展開の中、ハンの妻が実はミンホらが行ったホテルのフロント係で、彼女が警察を呼んだのではないかなどの推測も交錯するくだりがあるが、結局、それも推測だった。

 

そして、ミンホの正式な弁護人として契約したヤン弁護士だが、実は、ヤン弁護士は偽物で、本物のヤン弁護士に相談に行った経緯が描かれる。偽物のヤンは若者の母親で、死んだ息子の遺体のありかがわかればいいのだと考え計画したのだ。しかし、ミンホは、死んだと思った若者は急に息を吹き返したのでトドメを刺して本当に殺したと自白する。

 

契約書のサインからヤン弁護士を偽者だと見破ったミンホは、偽物のヤン弁護士を気を失わせて銃を自分に突きつける形にして警察を呼び、ミンホは自分が被害者であるかに見せかけようとした。ここまできたら、もうめちゃくちゃである。別荘の外では、ハンがミンホらのやり取りを録音していたが、結局、偽のヤン弁護士とハンは警察に捕まる。駆けつけた本物のヤン弁護士は、偽物から、遺体の場所がわかったと告げる。最初からヤン弁護士はハン夫婦の味方になっていた?どういう流れ?

 

銃で軽く撃たれたミンホは救急車で別荘を後にしたが、途中で、ハンの息子の遺体を発見する現場に遭遇し、その場で手錠を受けて映画は終わる。もう呆れてしまうラストシーンです。

 

まあ、メチャクチャに捏ねまわしたストーリーで、面白くするつもりが煩雑にしただけのサスペンスという感じだった。、目先の思いつきを繰り返した出来の悪いB級サスペンスという映画でした。