くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「坊っちゃん」(丸山誠治監督版)「死亡の塔」(日本初公開復元版)

坊っちゃん

ものすごく良かった。名作です。芸達者を脇役に配置したというのもありますが、キャラクタが際立っているし、今となっては二度と写せない懐かしい松山の風景や建物が見事に取り入れられ、しかもカメラ演出が見事で、映像のテンポが抜群に素晴らしく、原作の軽妙なリズムが映画に昇華されている。細かい小道具の使い方、さりげない笑いのシーンなど原作の味を余すとこころなく描ききった演出も楽しい。本当に良い映画でした。監督は丸山誠治

 

主人公坊っちゃんが、東京の縁日で鯉釣りをしている場面から映画が幕を開ける。婆やのお清のところへ持って行き、これから松山に旅立つ話へと流れていく。可愛がっていた坊っちゃんが旅立つのを見送るお清の姿にまず心温まる。名優浦辺粂子である。

 

やがて松山の中学に着いた坊っちゃんは、学校へ行く途中、留年を繰り返している学生やマドンナと呼ばれている美しい女性と出会う。そして赴任地へ行き、古賀先生、堀田先生、教頭などと出会い、それぞれにあだ名をつけて物語は本編へ。

 

何かにつけ教頭=赤シャツに目をつけられながら、自分のやりたいこと言いたいことを好き放題に行動していく坊っちゃんの姿、山嵐=堀田先生、などとのコミカルな友情の交流、おとなしい古賀先生との関り、赤シャツの家での踊り狂う坊っちゃんのユーモア、そして下宿を移って、隣に見える美しいマドンナとのささやかな恋、やがて、祭りの夜、学生たちの喧嘩に加わった坊っちゃん山嵐が教頭の思う壺で新聞社に叩かれようとするのを、不良生徒に助けられて大反撃の末、転校させられて東京へ戻る場面で映画は終わる。旅立つ日、赤シャツには気をつけろという電報をマドンナに打った坊っちゃんが、その返事をもらうくだりはとっても良い。

 

映画全体に文芸色豊かな絵作りを徹底しているにも関わらず、コミカルで軽妙な夏目漱石の世界観が見事に作り上げられていて、隅々まで役者層の厚かった当時の日本映画産業の奥の深さを感じさせられます。岡田茉莉子のマドンナが抜群に可愛らしく美しい。素晴らしい名作の一本でした。

 

「死亡の塔」

ブルース・リーが亡くなった後、遺作となった「死亡遊戯」と同時期に企画されていたもので、撮影された場面と、過去の写真や葬儀のシーンまで付け加えてとりあえず完成させたいわゆるカルト作品です。公開当時、あえて見なかった一本ですが、ブルース・リー50年の企画の中で、これを機に見ました。まあ、アクションシーンをふんだんに取り入れ、どこかSFチックなクライマックスを用意したエンタメ映画で、前半にこそブルース・リーは出ていますが、ラストは別の人物の敵討という形式になっていて、苦しい中の作品仕上げという感じでした。監督はウー・シーユエン。

 

ビリー=ブルース・リーが友人チン・クーが戦う姿を眺めている場面から映画は幕を開ける。ビリーには出来の悪い弟ボビーがいて、師匠の元を訪れて、ボビーに説教するようにと師匠に言われる。そんな頃、チン・クーが日本で死んだというニュースが入る。葬儀に向かったビリーとボビーだが、チン・クーの遺体が何者かのヘリに略奪されてしまい、そのヘリに追い縋ったビリーは放たれた矢に刺されて死んでしまう。

 

兄ビリーの仇を討つためにボビーは、ルイスという男の元へ行く。そこで片腕の男を見かける。片腕の男はルイスの宮殿のそばにある寺の僧侶だったのだという。ボビーはそこで謎の人物に襲われたりする。さらにルイスも何者かに殺される。ボビーは片腕の男が怪しいと考え、その男がいた寺に向かう。そこには地下に向かって死亡の塔というものが建設されているのだという。

 

ボビーはそこで片腕の男を発見し、彼を倒し、地下にある死亡の塔を下る。そこで様々な敵を倒した末たどり着いたチン・クーの棺が回転すると、なんとチン・クーは生きていた。カンフーだけでは食べられないので麻薬密売に手を染めてここまでのしあがったのだという。ボビーは兄の仇を討つためにチン・クーと戦い勝利して映画は終わる。

 

コミカルなシーンも散りばめ、遊び心満載に作った作品ですが、やはりビリー=ブルース・リーがいなくなる後半三分の一は退屈だった。いかに彼がカリスマだったかを改めて感じた映画でした。